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読書ログ『娘と話す世界の貧困と格差ってなに?』

読むのにかかった日数:5日
終始娘と父の会話形式で進みます。話し言葉がメインになりますが、会話形式の書籍にありがちな冗長な箇所がなく技術書のように知識が詰め込まれている印象。


「娘と話す」とか「13歳のための」とか、枕詞をつけることで大人にも読みやすくした書籍をここのところよく見かけるなぁと思います。
事実読書の習慣がついて間もない人や、これから本をちゃんと読んでいかないとなぁと考えている人にはこのような本から手を伸ばしていくのが良いのでしょうね。
こちらの本も「娘と話す」のタイトル通り、終始娘に対して父が貧困と格差について語りかけるように進んでいました。
娘の年齢に合わせた説明となっているため専門用語が出てこない。読んでいてわからないと感じる部分は「娘」がきちんと質問してくれるのでするすると読み進められます。
「わからないところを外部資料で調べなくてもこの一冊で完結する」ところが、このような書籍のいいところかもしれませんね。
私も読書の習慣がほとんどなかったので、この本のような枕詞のついた書籍を読み進めながら習慣をつけていきました。結構おススメのやり方です。

お話のメインは主に南北問題です。
父に1週間のアフリカ旅行へ連れて行ってもらった「娘」が、日本など北半球の先進国と南半球に位置する国々との格差に疑問を持ち、その仕組みを父に解説してもらう、という内容。
貿易、戦争、税金、気候など、様々な歴史や状況が絡まり合って現代の格差が発生していることが読み進めるうちにわかってきます。
「社会で大きな格差が生まれると、自分が社会の一員であるという意識が薄れる。その分断を解消するために税金を使うことが必要」という一文は、税金の在り方についてもやもやと理解していたことを言語化してもらった気分になりました。
確かに政治が貴族や政治家一家など、生まれながらに恵まれた人たちのみが参加しコントロールするものであれば、人々の国への帰属意識は薄れていくでしょう。
「私は関係がないから」という感情は、あまりにもその世界と自分との格差が大きいと感じたときに生まれるものなのかもしれません。

かつて英国では「人頭税」という全国民に対し同額の税金をかけたことがありますが、これは歴史上でも類を見ない悪政とされました。
富裕層から見た20万と貧困層から見た20万は同額でも、その価値が大きく異なります。全国民に一律の税金をかけたことで、格差はますます広がり、1988年に開始されたこの制度は国民の暴動により停止されました。
これは前述した「格差の分断を解消する税金の使い方」ではなかったということなのでしょう。

日本ではかつて農地改革によって格差を解消し、貧困を脱出することが可能となりました。
幾つかの例から「格差を解消するための税の使い方」と、「そうでない税の使い方」があることを知り、貧困の脱出に不可欠な要素を学ぶことが出来ました。
格差が起きている背景を幾つかの切り口から説明してくれるので、南北の格差がぼんやりしたものから徐々に輪郭をもって理解できるのが心地よかったです。

「なんとなく知っているけれど理解しておきたい」というものは世の中にたくさんあるなぁと感じます。
このような内容は一朝一夕では身につかないので、比較的イージーで読みやすい書籍から学んでいくことで少しずつ自分の血肉にしていくしかないのかなと思います。
そんな絶賛教養深め中の私ですが、オススメの読み方は地球儀を回しながら本を読み進めることです。
国の位置関係や距離感、地理からわかる何となくの気候を想像しながら読むと結構頭に入ります。


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