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とろ日記(こういう日に限って①)

 
 こういう日に限って。


電車が遅れる。
鼻毛が気になる。
化粧が落ちる。
汗が吹き出して止まらない。



なぜだ。なぜなんだ人生。




 雷が鳴り、雨が降り出した。
乗った電車は「沿線火災のため運転を見合わせる」と、数駅目で停車した。

なんで今!と思う。

そりゃ、火災は大変だ。誰かが怪我をし、家が全焼してしまうかもしれないんだから。個人の予定を先に憂うなんて、わたしはひどいのかもしれない。そう思っても、予定時間に間に合うか心配になってくる。



 わたしは、はじめて参加するイベントに行こうとしていた。現実で「書く友」を見つけるため。もしくは「書いている人」に会うため、参加を決めたものだ。




その日は直前まで、ひとつ前の電車に乗ろうかと迷っていた。ま〜そんなに早く行かなくてもいいか、と見送った結果がこう。早く乗ればよかった〜の気持ちが出てくる。なんでこういう日に。なんで乗る電車が。




17時37分。まだ動かぬ電車。
本来なら、到着駅に着いている時刻を過ぎていた。
ゆっくりと夜ごはんを食べようと思っていたけれど、できるかな。
イベントにも間に合うか少し気になるけれど、遅れる電話をするにはまだ早い。
目をつぶってやり過ごそうとするが、こういうときに限って…、という考えがまた浮かんできたから、目を開けた。


スマホをいじる人。外に出て電話をしている人。電車を降りて戻ってこない人。お菓子を出すお母さんとそれを食べる男の子。窓の外は空色に夏雲が白く映え、緑緑色した木々の葉が揺れていた。


「運転を再開いたします」のアナウンス。安全確認がとれたという。火災も鎮火してくれ。被害は最小にしてくれ。無事に駅に着いてくれ。無事に終わってくれ。いろいろ思った。


到着。イベント開始まで時間がある。よかった。軽くお腹にいれよう。いつも寄るパン屋で食べていこう。今月の新商品をチェック済みだったので、駅に着いてパン屋へ直行した。


お店に入ると、パンが少ない。時間が遅かったためか、メインのパンが売り切れている。今月の新商品もない。売っているパンを端から1つずつ見ていくと、チュロスがあった。これにしよう。あとはコールスローサラダ。ルイボスティー。このくらいでいいか。この時間は広々とした飲食スペースは使えなく、店内のエリア(10席ほど)しか使えないらしい。ああ、そうなんだ。と少し落胆しながら、顔に出さないようにする。

端の席に座り、日傘をかける場所に苦戦する。傘ってすーぐカタン、と倒れてくる。テーブルになんとかひっ掛け、コールスローから食べ始める。完食後、チュロス。チョコ味だ。白砂糖がまぶしてある。ガリ。少しだけ硬かった。砂糖がついているのに、あっためるわけないか。手についた砂糖は1mmくらいの半透明の粒で、溶けない氷の粒みたいだ。あっためるわけない。一人でそう納得し、食べ進める。


開始時刻の30分前になり、何時に店を出ようか悩む。こういうとき、早く行き過ぎるのも遅く行きすぎるのもイヤだ。トイレに行って、気持ちを整えてから向かおう。わたしは強張った顔をしながら、パン屋を出た。




もしサポートいただけたら、部屋の中でものすごく喜びます。やったーって声に出します。電車賃かおやつ代にさせていただきます。