シュロップシャーブルー

チーズと一緒に前進しそれを楽しもう!

18年ぶりに「チーズはどこへ消えた?」を読みました。その最後に書いてあるのがこの言葉。そしてこれが私の今年の目標です。

この本を最初に読んだのは2001年。当時からチーズ好きな私は、黄色いチーズが描かれたかわいい表紙を見て即買いしたものの、大好きなチーズのことが書かれているわけじゃなく、なんとなく腹落ちせぬまま本棚に置いたままでした。

2001年の年間ベストセラー1位を獲得して以来、日本では400万部に売れている本。大谷翔平選手の「愛読書」としてまた本屋に並ぶようになっていて、久しぶりに読んでみようと手に取りました。

18年前とは違って、なんだかとっても腹落ち。30代40代と試行錯誤して進んできた時にぶつかった迷いがたくさん書かれていたのです。18年前の31歳の私にとってはひっかからなかった理由も分かりました。変化対応がますます必然となっている今、この本に書いてあることは18年前よりも説得力があります。

「チーズ」とは、私たちが人生で求めるもの、つまり、仕事、家族、財産、健康、精神的な安定・・・・・・等々の象徴。そして、登場人物である2匹のねずみと2人の小人が住んでいるのが「迷路」は、チーズを追い求める場所。つまり、会社、地域社会、家庭・・・・・・等々の象徴です。

ネズミ2匹は、本能で次のチャンスをどんどん掴んでいく。ネズミより頭がいいはずの小人のホーとヘムは、考えすぎてネズミに先にいかれてしまう。小人のホーは考え方を変え、変化の波にうまく乗ろうとする。でも、小人のヘムは変化を恐れ、変化を認めず、逆らってしまう。物語はホーが自分が学んだことを壁に書き付けて終わります。ヘムも自分と一緒に前に進んでくれるといいなあ、と思いながら。

1.変化は起きる 
 ーチーズは常に持っていかれ、消えるー
2.変化を予期せよ 
 -チーズが消えることに備えよー
3.変化を探知せよ 
 -つねにチーズの匂いをかいでいれば古くなったのに気付くー
4.変化にすばやく適応せよ
 -古いチーズを早く諦めればそれだけ早く新しいチーズを楽しめるー
5.変わろう
 -チーズと一緒に前進しようー
6.変化を楽しもう!
 -冒険を十分に味わい、新しいチーズの味を楽しもう!-
7.進んですばやく変わり、再びそれを楽しもう
 -チーズは常にもっていかれるー

ここでちょっと、自分の仕事の10年を振り返ります。
私は10年前、社会人15年目でずっとやりたかったワインの仕事に巡りあいました。日本のぶどうから造られる「日本ワイン」のマーケティング活動を行う仕事でした。会社の部署だけでなくワインが生まれる土地の皆さん、ワインを愛するプロフェッショナルの方々ともつながり、たくさんの同志ができ、毎日が充実していました。でも、これからというところで全く畑違いの部署に異動辞令が出て、私は担当をはずれることになりました。

その当時の私にとって、チーズは「日本ワイン」でした。それが急に目の前からなくなり、呆然としてしまいました。新しい仕事は、東南アジア向けの「烏龍茶」の新商品開発を行う部署。私は新しいチーズが「烏龍茶」と勘違いし、あまりの知見のなさに右往左往。知識や経験のない私のミッションは、そのチームの実務者やプロフェッショナルが前に進めるようサポートすること。つまり、私の新しいチーズは「一緒に働く人たちの支援」だったのに。結局、新しい仕事の波に乗れず、わずか1年で部署を出ることになるという挫折を味わいます。でも、この本を読んで、そうなった理由が改めてわかりました。

その後、食品営業の現場を担う会社で研修や人材育成の仕事を担当することになり、「研修に参加する社員や一緒に仕事をするメンバーの成長」が私のチーズになりました。いつの間にかこの仕事が楽しくて仕方なくなっていて、気がつくと、古いチーズのことは忘れかけていました。それは新しいチーズを見つけることができたからです。なぜ見つけることができたのか。それは、現場を支える人たちのプロ魂、人材育成の道を究めた講師や営業たたき上げの上司たちのブレない軸と強い信念。そして世代を超えた同志たち。新しいチーズを見つけるための道先案内人にたくさん出会えたからでした。

昨年秋から、7年ぶりにワインの仕事に戻りましたが、まだ私のチーズは明確には定められていません。それは「日本ワイン」だけでもなく「成長支援」だけでもない。仕事だけではなく、仕事以外でのコミュニティでも新しいチーズを見つけたい、なんて欲も出てきて。いずれにしても、「新しいチーズと一緒に前進し楽しむこと」を今年の目標にしたいと思います。

最後に、冒頭の写真の説明を。イギリスの「シュロップシャーブルー」という1981年に誕生したばかりの、まさに「新しいチーズ」です。
チーズはそもそも紀元前から食べられてきました。フランスで一番生産量の多いコンテは1000年以上前から造られているし、比較的新しいチーズとして有名なカマンベールでも1790年頃から造られていることを考えると、まだ38歳と若手なチーズです。チーズは黄色が普通ですが、このチーズは鮮やかなオレンジ色をしていますが、それは売場に並んだ時の目立ち方、食欲をそそる色合いを狙ってのことでしょう。この色の正体は天然色素アナトー(ベニノキから抽出)。ミモレットの色もこれと同じです。

世界3大ブルーチーズで同郷の「スティルトン」に比べると食べやすくて、ほっくりかつねっとりしていて、やめられない味わい。見た目もフォトジェニックだし、ブルーチーズが苦手な方にも、オススメのチーズです。ワインにはもちろん、日本酒、焼酎とも相性バッチリ。今年最初の乾杯は、目標祈願も兼ねてこの新しいチーズと共に!



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