ヤンキーやギャルに憧れていた話

そう、突然思い出した。わたしは中学校のころ、ヤンキーに憧れていたんだ。

今日久しぶりに「聲の形」を金曜ロードショーで見て、学生の頃の友達の顔が浮かんだりしながら、過去について思いを巡らせていた。今日はそんな学生時代に思ったことを勝手に回想していく。

そんなわたしがどういうタイプの人間だったかと言えば、中学生によくいる二つ結びに前髪パッツンで、性格は一見明るそうだが人見知りゆえのとっつきにくさがあって、女子特有のグチグチした感じが苦手で、がっちりグループにはおらずふわふわしていて、部活に入ってなかったからそこでも特に友達はいなくてカーストにも属してなくて、男の子と話すのもあまり得意じゃなくて、割と成績は良いからそれがさらに人を遠ざけてるような... 自分ではそういうタイプだったと思っている。そんな、割と真面目と思われがちなわたしは学校にあまりこない金髪の女の子にすごく興味があった。学校にはほとんど来ない。来ても11時くらいにダルそうにしながら。腕からインナーを出したセーラー服、死ぬほど短く切ったスカート、紺のソックス、かかとを潰したローファー、茶色の皮のスクールバックで。まゆげはうっすくて、目はつけまカラコンばちばち。全て校則違反。それでもあえて制服を着てくるあたりの反抗心が全面に見える。超攻撃的である。大体彼らは4人ほどの大御所隊で大声で話しながらチャリでやってくるため、音が聞こえると学人主任の男の先生がどこからともなく出てきて、迎え撃つかのように校門で準備をする。見事に鉢合わせた彼らはそこからなにやら言い合いをしたのち、決まってどこかに強引に連れてかれる。わたしたちはそのやりとりを授業中にも関わらず、先生の話も聞かないでみんなで見ていた。何が起こったのか最初のうちはよくわからなかったけれど、そのうち慣れてきて、またか、とみんなも興味をなくしていった。わたしはというと逆に回を重ねることにより楽しみになってきて、ワクワクしていた。極めて真面目に承認を得ようとしていた人間にとって、あのやり方はかなり衝撃的で新鮮だった。そこに嫌悪感は無かった。いじめられたわけでも無く、彼女たちの眼中にわたしはいなかったから。ただ、恐怖感はあった。それは彼女というより、一緒に連れてくるバックのヤンキー軍団の圧に対して、だったと思う。みんな揃いに揃って金髪や茶髪で、女の子はロング、男の子はワックスでゴリゴリに立てている。そして驚くことにこの人たちはこの学校の人間ではない。ものすごい結束力である。この集団の女の子は先生にやられると学校で堂々とケータイを使ってこの他校の男の子たちに助けを求め、そこに駆けつけた男の子は先生に悪態をつきながらも女の子を連れて去っていった。え、超かっけーじゃん(バカ脳)。それがもちろん良くないことだと分かってはいた。けれど自分のやりたいことを自分の責任で獲得する強さを持ち得てなかったわたしからすれば、本当に重要な局面でちゃんと自分の本心に忠実で守りたいものを守れるのはめちゃくちゃかっこよかった。それだけじゃない、その女の子たちはいつもギャルっぽいメイクをして威圧的で好戦的な格好と態度をしていた。地元愛や仲間意識が強い。それがたとえかりそめの姿だとしても、超内気で特別属す場所もない転勤族のわたしは守られながら堂々と渡り歩いているのがかっこいいと感じたのだ。

このように思っていたので、休み時間に教室にいたときに、数回声をかけた覚えがある。好奇心と興味と羨望の眼差しだった。たしか、バックにつけている大きなキーホルダーをどこで買ったのかを聞いたんだと思う。ちょっとびっくりしたような顔を一瞬したけれど、すんなり答えてくれた。なんと答えたのかは覚えていない。けれど、そんなことは大して重要ではない。彼女たちからすれば目の敵にしてそうなわたしのことを、特に無視も罵倒もせず普通に話してくれたのだ。それがすごく嬉しかった。たしかにいろいろあるのかもしれないけれど、内側はとても繊細ないい子だと思った。仲の良い友達もいて派手で可愛くて強くて、わたしの持ってないものをたくさん持ってる彼女たちに憧れた。

いまのわたしはどうだろうか。恐らく、そのときから根本は変わっていない。若干、野蛮なものに憧れている性質を残しているのだろうか。いや、むしろ年々強くなってる気さえする。もしかして厨二病をやり切ってないのだろうか。それはイタい。だが結局長いものに巻かれる人間としては、自分に忠実で正直な人間はいつになってもヒーローだ。いま、当時ヤンキーになりたいと言ったときに全力で非難してきた人間の顔を思い起こしながらこれを書いている。きっとこれはそのときに言えなかった反論の寄せ集めかもしれない。完全な自己満だ。でもきっとこんなことを言いながら、今のものを捨ててまで、なる覚悟はない。そんな自分を自覚しながらも、このどうしようもないモヤモヤを誰かに共感してほしくて書き起こしているのだ。きっとみんなあるでしょう、自分の中の捨てられない弱さ。


“強いものに憧れて。“

どうも〜