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「母ちゃん、ぼくは自殺をしようと思った」と息子に言われた日

息子は、今月で11歳になる。

次の4月から小学校6年生になる息子。

小学校1年生のとき、「自閉症スペクトラム障害」でADHD傾向が強い、LD(学習障害)、アスペルガー症候群と診断された。

家から近い私が卒業した小学校に通っていたものの、通常級では折り合いがつかず、本人が望んで市内の特別支援学級に転籍した。

本人は言う。

「あのまま通常級に通っていたら、ぼくは今生きていないかもしれない」


そんな彼だが、まだまだ幼い男児だと思っていると、急に大人と錯覚するくらいに饒舌になって、マンツーマンで演説を繰り広げる。


それはまるで海外でいう「TED」のように、ジェスチャーを加え、オーバーリアクションかつ情熱的に。


晩ごはんを食べ終わってゆっくりしていたある日、彼は涙を流しながらこう切り出した。


「母ちゃん、ぼくは自殺しようと思った」


唖然とした。

表情にはなるべく出さないようにしたけれど、正直、頭の中はパニックだった。


それもそのはず……そんなセンセーショナルな言葉を10歳の息子から言われるなんて思ってもみなかった。

こんな自分が嫌いになる

彼がなぜそんなことを言い出したのか、とてつもなく気になった。

無論、気にならない親はいないだろう。


だからこそ、焦らずに1つずつ聞いていくことにした。

特につっこみも入れずに、ただひたすらにうんうんと。


彼は言った。


「2019年になって、お正月から家族で過ごせてとっても楽しくて……なのに、どこかでぼくの心の中は闇に包まれていてとっても苦しかった。人がイヤがることをしたのに、お正月を楽しんでいる自分にイライラした」


なぜそんな風に思うのか……ただそれだけをまず問うた。


すると、


「2017年頃のぼくは、イラッとすれば友達を殴っていたし、蹴っていたし、先生にもイヤなことをたくさん言った。それに、お友達のおもちゃを壊してもキチンと謝ることもできなかった。それがずーっと心に引っかかっていて、楽しいことをしていれば忘れると思っていたんだ。けど、全然消えなかった。どんどん闇は深くなって、罪悪感で心がいっぱいになった。」


と涙ながらに話す。

小学校2年生当時の息子は、相当荒れていたと今でも思う。

思うようにいかなくて、友達とぶつかり合えばすぐに口よりも手が出てしまい、我が家にはすぐに相手の親御さんに謝罪に行けるように日持ちのする菓子折りの在庫を置いていたくらいだ。


そんなことはどうでもいい。


なぜ今それを話しているかがとても気になって、問うてみた。

「悪いことをしたら必ず自分に返ってくる」と言った息子

悪いことをしても、お友達にすぐ謝れなかった……

お母さんに叱られるのが怖くてずっと隠していた……


でも2年経って、今10歳のぼくはとっても後悔している


隠し事はよくない

人を傷つけることはよくない


なぜかっていうと、そうすることでずっとモヤモヤが心の中に残って、楽しいことも全力で楽しめなかった

お母さんにバレて叱られるんじゃないか、捨てられるんじゃないかって


ぼくはあの頃、間違った道のほうを選んでしまった


お友達や他の大人の人に悪いことをしてもきちんと謝らずにお母さんにも黙ってた

ぼくはそれを間違った道だと思う


今思う正しいと思う道は、悪いことをしてしまったとき、すぐに相手に謝ってお母さんにもきちんと報告することだなって

その前に、まず人を傷つけることをしないということが当たり前なんだけど


ぼくはその間違った道を2年間歩いてきたことで、とっても苦しい思いをした


これが後悔っていうやつだと思う


お母さんはいつも言うよね?

自分が正しいと思う道を歩むことが大切だけど、後悔だけはしないようにって


でもね、ぼくは間違った道を選んだことで後悔をした

そしてわかったことがある


そうやって悪いことをしてしまったら、そのときは隠せてもあとから必ず自分に返ってくるということ


だから今ぼくはこうして苦しんでいる

苦しくて苦しくて、そして自分がなんでそんな道を選んだかということが悔しくて悔しくて自殺しようとも考えた


ぼくはなんてバカなんだって


お母さんがいつも仕事で頑張っているのに、ぼくが悪いことをしたら負担をかける

もちろん相手のお友達やお友達のお母さんにも負担をかける


ぼくは負担をかけたくない


悪いことをしたら必ず自分のところに返ってくるってことがすごくわかったから、今日、今、この瞬間から自分の体に、心に刻んで前に進もうと思うんだよ


と、彼はTEDのようなオーバーリアクションで身振り手振りを交え、涙を流しながら私の前でこれからの決意とともに大演説を繰り広げた。

私から息子へ伝えたこと

一連の話を滞りなく聞いたそのあと、こう伝えた。


2年前のあなたも全力で、今も全力。2年前には考えることができなかったことも今では考えることができる。たくさんのお友達に迷惑もかけたし、自分も後悔したけれどそれで得られたことがたくさんあったから勉強になったね。あとは何より、死を持って償うことはお母さんは違うと思うし、人の命も自分の命ももっともっと大切に考えてほしい。


そう伝えたとき、息子は、


ちゃんとぼくの話を聞いてくれてありがとう。ぼくはお母さんにとっても大切にされているなって思った。だから、自分が大切にされたいなら、まずは人のことも大切にしなきゃなって思った。


そうして彼は落ち着きを取り戻しました。

子どもは知らないうちにたくさんのことを考えている

こうして彼の心のうちを話してもらったとき感じたことは、子どもは我々が想像する以上にものごとを考えているし、体も心も成長しているということ。

10歳にして、こんなにも語彙があるのかということにも驚いたし、とにもかくにも驚きしかない。

語彙が少ないのは私のほう……笑


センセーショナルな言葉をたくさん聞いた日だったけれど、これも彼の成長なのだろうなと思い、きちんと受け止めようと思う。


今これらのことに気づいて、これからの彼の人生に「人」というかけがえのない財産がたくさん増えていきますように。


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