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【パリ1日1話】17 ロックダウンは怖くない

フランスの外出禁止が2週間延長され、最低でも4月15日までになった。

前話にも書いた通り、わが家では平和な毎日を送っている。朝起きて、ごはんを食べて、仕事して、散歩に行って、お昼ごはんたべて、おやつを食べて、夕方にちょっとヨガをして、ビール飲んで、夕ごはんを食べて、寝る。

タイトルにもある通り、少なくともいま自分が、2週間のロックダウンの中に暮らした限りは、ロックダウン自体に恐怖を覚える必要はないことを、このnoteで訴えたい。ロックダウンは怖くない。ぜんぜん怖くない。

都市封鎖なんて言われるとドキッとするし、映画やアニメに出てくるような荒廃してからっ風の吹く都会を想像させるが、実際には都市は生きている。パリでは薬局やスーパー、食料品店など以外は閉まっていて静かだが、人びとはただ家の中にいて、再び都市が動き出すのを待っている。

フランスと日本の状況は、特に経済的な補償の面で違うので、生活費の面に関しては言及しない。フランスの人びとに関しても、自分の状況以外にはよくわからない。だけど、少なくともいま身の回りには食料品は豊富にあるから、生きていける。きっと日本もそうだ。日本の超優秀な流通システムをもってして、食物が人びとの手元に届かないことはないと思う。食べられさえすれば、生きられる。落胆の必要はない。

街がロックダウンになるときに思い出したのは、スウェーデンやノルウェーの友達が冬について話していたこと。寒さが苦手なわたしは、スカンジナビアの長く暗い冬は耐えられないだろう、というと「だから家を好きなインテリアで揃えて、やさしい光のライトにこだわって、思いっきり好きな空間にするんだよ。けっこうみんなお金かけるね」「ボードゲームとか、編み物とか、家の中でしかできない楽しいことがあるじゃない」と。

家の中でしかできないこと! 仕事以外の本を読む、むかしの映画を観る、考えていることを商売抜きに文章化する(文章で稼いでいるわたしには、けっこう難しいことだ)。なんでもできる。料理人の夫は、仕事ではない趣味の料理を楽しんでいる。おかげで、わが家は毎日がレストランのよう。

インターネットのある時代、家の中にいたって、世界を広げるのは、とてもとてもかんたんなことだ。やりたかった中国語も、やりかけてやめてたスペイン語も、ちょっとやっちゃおうかな、なんて。美術史の勉強もしてみたり。なにより、夫と一緒にランニングしたり、お菓子作ったりできるのがうれしい。いま、わたしはすごく楽しい。

とはいえ、フランスの新コロナ感染に関する状況は、ますます厳しいものになっている。3月28日の発表で、死者は2314人。毎日、数百人単位で死者は増えている。病院もパンク状態だという。

わたしも夫も発症していないが、もし発症して重症になったなら、生きていられないかもしれない。先日は健康そのものだった16歳の女の子が亡くなった。確率の問題はあるものの、この病気は人を選ばないようだ。いまや、死はいつもそばにある。

とにかく、いまは生きる。できるだけ人が死なないように。自分にできることとは? 嘘のようだが、外に出ないことしかない。戦争のような状況の中、戦い続ける医療従事者に心から感謝をしながら。

まさに渦中にいるフランスより。とにかく外に出ないように、と言いたい。子供が出たがるんだよね、家狭いし息苦しいし、家族と一緒にいると気が滅入るから。いやいや、死ぬのとどっちがいいんですか?という感じだ、フランスからみると。自分も感染してるかもしれない、まわりのひとはみんな感染してるかもしれない。その上で行動をする。自分は自分で守る。

うちの場合、外出は1日1回。ウォーキングと買い物をかねて1時間(パリでは外出は居住地から1km以内、1日1時間以内と決まっているので)。購入する商品とドアの開閉以外、物に触らない。外では人と1m以上の間隔をあける。戻ったら上着は玄関に置く。すぐに手洗いうがい、からの全身シャワー。食べ物はできるだけ加熱する。マスクもアルコール除菌ジェルもない中の、自分なりの防御法。

数週間前まで、関係ないことだと思ってた。美術館も映画館も閉まってさみしいな、なんて思ってた。でも、いまは、とにかく生きたい。生きてないと、なにもできないんだから。

いますぐ、みなさん、気持ちを切り替えて構えてほしい。奇跡が起きない限り、大変な状況はやってくるから。

だけど、いつも笑顔を忘れないで。恐れることは、なにも生み出さない。明るい気持ちをキープして、自分が好きなことをやってください。家族みんなで仲良くしてください。ひとりなら、友達とLINEとかでいっぱいやり取りして、しょうもないことで笑ってください。やるべき対策をして、いっぱい食べて、笑って寝てるうちに、きっと病気もいなくなる、と願って。


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