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パリ1日1話

18
パリのはしっこ18区の、ふつうの毎日を書き綴ります。
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2017年5月の記事一覧

パリ1日1話 7〜マダムとマドモワゼルの話

パリ1日1話 7〜マダムとマドモワゼルの話

 フランス語を学んだことがある方ならご存知かと思いますが、フランス語にも英語のミスター、ミセス、ミスにあたる敬称があります。名前の前につけるあれです。ミスターはムッシュー、ミセスはマダム、ミスはマドモワゼルとなります。マドモワゼルは敬称として機能するのかというほど長いですが、特に略することはしません。英語同様、既婚女性にはマダム、未婚女性にはマドモワゼルです。

 ところで、フランス語の敬称は呼び

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パリ1日1話〜6 猫の話

パリ1日1話〜6 猫の話

 パリでも東京でも、住宅事情が許さず猫を飼ったことがありません。大好きで、いつか飼いたいという野望を持ち続けているのですが、いまのところ叶わずじまい。アポリネールの詩に、「欲しいものは理解のある奥さん、書物の間を歩き回る猫、大事な友人たち」といった内容のものがあるのですが、シンプルにしてこれがすべてで、まさにこんな生活にあこがれています。奥さんはあきらめましょう。でも、猫はいつか飼いたい。

 東

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パリ1日1話〜 5 映画館の話〜

パリ1日1話〜 5 映画館の話〜

 ノスタルジックな話をするときりがないのですが、むかしから映画が好きで、特に学生のときには熱に浮かされたように映画を観ていました。ヌーヴェル・ヴァーグを中心とするフランス映画には、恥ずかしい話、完全にかぶれていたと言っても過言ではありません。文化系の人間にありがちな、悩みがちで、夢見がちで、むずかしいことを考えがちで、無力であることに気づきつつもそれでもなにか革命的なことが起こせるという誤解のもと

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パリ1日1話〜4 バスの話〜

パリ1日1話〜4 バスの話〜

 公共交通機関では、よくバスを使います。地下鉄の駅はたいがい暗くて汚くてしめっぽいけど、バスはわりにきれいだし窓から外を眺めるのは楽しい。でも、バスの問題はけっこう悩ましいのです。

 まず、時刻表はなく「10分に1便」とか「15分に1便」とかそういうゆるいルールにそってやってくるので、時間が読めない。公共交通の会社(RATP)のスマホアプリやバス停の電光掲示板に「あと何分で来ます」と表示されるけ

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