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読書感想文「82年生まれ、キム・ジヨン」

「82年生まれ、キム・ジヨン」チョ・ナムジュ著

1982年に生まれた女性、キム・ジヨンの半生が描かれたもので、2016年に韓国で出版されてから現在まで130万部の大ベストセラーとなっている。

第一子出産後、女性であるという理由で受ける不平等や世間の子育てに対するプレッシャー、離職したことの喪失感など、あらゆるストレスから精神が壊れていき、ある日から他人が憑依したように振る舞い始めたジヨンを夫が精神科に連れていく。
その精神科担当医のカウンセリング記録という形式で、ジヨンの母のエピソードからジヨンの幼少期~結婚、精神科を訪れるまでが語られていく。

女性としての苦悩と悔恨がここに全て詰まっていると言っても過言ではないこの作品は、日本でも2018年に翻訳化され、15万部のベストセラーとなった。
物語が見せるあまりのリアリティに、舞台が韓国であるということを忘れてしまうほどだった。
家庭内の男性優位、ガラスの天井、妊婦に対する妬み、出産による社会との隔絶。義理の親や夫、職場の上司たちの言動の端々に浮かぶ差別、無理解。
全てを余すところなく経験したわけでなくとも、「わかる」ということ。
ああ、そうだった。こんなこともあった。こんなこともあるのか(きっとあるだろう)。
「ジヨン」は82年生まれの女性に一番多い名だという。
ジヨンは特別な存在ではなく、どこにでもいる。
キム・ジヨンは私だ、と気付き、その認識に傷つけられる体験。

しかし、じわじわと認識が広がるものの大きなうねりには中々繋がらない日本のフェミニズム運動は、韓国のそれとどう違うのだろうと疑問を持った。
韓国で社会現象にまでなったというキム・ジヨンの物語が、他国とは言え、そのリアリティへの強い共感によってベストセラーにもなった日本。
チョ・ナムジュの次作「彼女の名前は」を読んで、韓国と日本のフェミニズムに対する認識の明確な差を確信することになる。

次回の読書感想文「彼女の名前は」へ続く~。





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