大晦日の兄弟
大晦日の夜、テレビの前で一人で寝そべってテレビを観ている私。
今夜のシチュエーションはあの夜のことを思い出す。
もう随分時は経ったのだが、次男が小学校6年生の時だ。
「あのね、俺に妹が二人いるんだって」
ある年の大晦日の夜、帰省した父親との食事を終えて帰宅した次男が私に告げた。
「えっ?!」
テレビの前で寝そべっていた私は飛び起きた。
離婚した夫が再婚して、子供がいることは自然なことだ。
が、父親を慕っている次男に離婚した事実をなかなか告げられず、単身赴任だと誤魔化してきた私は気が動転した。
父親から娘と動物園に行った写真まで見せられた息子は、一体どんな気持ちだっただろう。
「そうね、私は全く何ともないけれど、あなたがショックを受けているんじゃないかと心配」
「ううん。ショックが半分で、残り半分は、遠く離れた場所に妹がいるんだっていう不思議な気持ち」
そして彼はこう言ったのだ。
「仕方ない。これも俺の運命だ」
私は胸が熱くなった。この子はいつの間にこんなに成長していたのだろう。
父親との食事からの帰路、長男と二人で少し遠回りをして歩き、この事実を私に知らせるべきかどうかを話し合ったという。
「俺よりも兄ちゃんの方がショックを受けてたかもしれんよ」
ああ、だから彼はこの役を買って出たのであろう。
自分の悲しみをさらせば両親が傷つくと思いやったのか。
子供を悲しみから守ってきたつもりが、守られていたのは私だったのだ。
今年は長男は彼女の家で年越しをする。 さて、アルバイトに出掛けている次男と一緒に食べる年越しそばの準備を始めよう。