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「障害」と「健常」とバリアフリー

October 6, 2021

先週のどしゃぶりの中での入学式、総長によるUTokyo Compassの基本方針発表も終わり、今週はすっかり秋空。10月となり新学期のスタートです。

ところで、高等教育機関で障害(身体・精神・知的)をもつ学生の在籍者は年々増加しているそうです。2006年に約5,000人だったのが、2019年には37,000人以上。これは世の中の障害をもつ人の数が増えたというより、大学での受入体制が整いはじめたことなどが理由で、進学を目指す学生が増えたのだとか。これまで学力以外の「バリア」で進学機会が少なかったことがうかがえます。

日本には「障害者差別解消法」(平成25年制定)という法律があり、「不当な差別的取扱いの禁止」(例:障害を理由に大学への入学を拒否することを禁止)と「合理的な配慮の提供」(例:車いすユーザーのために前方の席を空ける)を求めています。一方で、たとえば2017年には、ある航空会社が、階段式タラップを移動できないことを理由に車いすユーザーの搭乗を拒否というできごとがあり、物議を醸しました。(その後、航空会社は昇降機を導入。国も、車椅子ユーザーが航空機に搭乗するための設備を義務づけたそうです)

バリアフリー先進国と言われるアメリカには、ADA法(Americans with Disabilities Act of 1990:障害を持つアメリカ人法」(1990年制定)という強い法律があります。
たとえば、ほとんど山で人口密度の低い(ほめ言葉)モンタナ州ですら、バスを乗り降りするステップは電動式。車いすユーザーも介助者なしで難なく乗り降りすることができ、バスの運転手さんもバス乗車後の車いすの固定は手慣れたものでした。また、大学はもちろん、あらゆる建物にスロープが整備されています。

とはいえ、アメリカもバリアがゼロというわけでもなく。アメリカ研修時、研修同期には、歩行が困難な電動車いすのユーザーがいました。一緒に旅行先のホテルから空港に向かう際に配車したAccessible taxi(車いす対応タクシー)が、台数が限られているために時間どおり到着せず、やむなく一般のタクシーで運転手さんに車いすから座席への介助の補助をお願いしようとしたところ、断られたことも(もしもけがをさせてしまったときに責任問題になるため)。バリアは設備だけではフリーにならないのだと知りました。

「障害」は、障害者手帳の有無で決まるものではなく、実生活に不便があればそれは障害にあたるそうです。世の中は、「障害」がなく100%「健常」であるということを前提につくられがちかもしれません。
これはもしかしたら日常の働き方にも通じること。みんながからだも心も環境も常に100%「健常」な状態で働けるとはかぎらず、職場の中や外で、なにかしら多かれ少なかれ「バリア」をかかえているもの。今日はノー残業デーです。今日は早めに業務を切り上げて、たまには自分をあまやかすのはいかがでしょうか。
バリアに優しい職場はみんなに優しい職場です。

*内閣府:障害を理由とする差別の解消の推進
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html

*バニラエア騒動から1年半 木島さんが「障害者」と名乗らない理由
https://withnews.jp/article/f0181209001qq000000000000000W06810101qq000018458A

(写真:サンフランシスコのふつうの市営バス)




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