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見えないところを見る〜衣食住から考える〜

衣・食・住、これは人間が生きていく上で必要なもので、生活に欠かせない三要素です。

「住」

うちの主人は、創業65年の家業を継いで土着の工務店で働いています。

うちの工務店の売りは丁寧な仕事。

御施主さんの痒い所に手が届くような心配りと、

一生涯住めるような丈夫な仕上がりにするため基礎部分や壁の内側など、

完成してしまえば表には見えなくなる部分への丁寧さが自慢です。

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うちの大工さん達の丁寧な仕事ぶりを誇らしく語る主人を見ていると、

こちらも嬉しい気持ちになるもので、

ある時ふとひとつのエッセイを思い出しました。

万葉文化研究者の上野誠さんのエッセイ「まごころとは何か」の一節です。

「建築家の佐川旭さんからこんな話を聞いたことがあります。『建築というものは、外から見える部分よりも、見えないところの方が多いんですよ。(中略)でも見えないところで手を抜くと、家が傾いたり、雨漏りをして大変なことになります。目に見えるところは、誰でもいい仕事をするんですよ。見えないところが、大切です。それに、建築の失敗というものは、すべて見えないところで起こるんですよ。』私は、なるほどと思いました。人が見えないところを大切にするのが「まごころ」だと思ったからです。

これは「住」についての話ですが、どれも一緒だなと思います。

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「衣」

「衣」については、バングラデシュの首都ダッカの縫製工場が入った商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落した事件を知っていますか。

バングラデシュではアパレル産業が国を支える大きな産業。

しかし労働者は長時間低賃金労働の過酷な状況に置かれています。

雇用主はコスト削減の為ビルの改修などを行わず、

壁はひび割れ、建物は傾き、汚くて暑くて寒くて、労働環境は劣悪です。

それが原因で起きたこの事件、

でもそれ以前から、国の経済発展と引き換えに多くの命が失われていたのです。

さらにコットンを栽培するために莫大な量の農薬が散布され、

環境破壊にも繋がっていたり、

農薬が原因で重い障害を持つ人や胎児が増えたりしている
という事実があります。

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最近エシカルファッションという言葉も広がりを見せているように思います。

エシカルは「倫理的な・道徳的な」という意味で、決して「環境に良い」ことだけを指す言葉ではありません。

自分が着ている衣服のタグにはmade inどこと書いてありますか?

なぜその値段がついていると思いますか?

その国でその服を作っている人や環境など、

ファッションの裏側にある世界にも心を向けていきたいものです。

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「食」

さて、「食」についても全く同じです。

食は、人に幸せを感じさせてくれる最も身近なもの。

生きることに直結する最も大切なもの。


それなのに、当たり前すぎて、

一昨日の夕食何を食べたっけ?

昨日のランチすらパッと出てこない、

こんな飽食の時代になって久しいです。


忙しい現代、ファストフードは速い・安い・おいしいの三拍子揃っていて、利用する人も多いと思います。

でもやはり考えなくてはなりません。

ファストファッション同様、

ファストフードはなぜこんなに安いのか、

大量にこんなに速くサービスできるのはなぜか、

ちょっと立ち止まって考えてみると、その裏側に思いを馳せることができるのではないでしょうか。


上野誠さんが言うように

人が見えないところを大切にするのが「まごころ」だ

と言うのであれば、

「見えないところを見よう」という思いも「まごころ」に繋がるものだろうと私は思うのです。

作ってくれた生産者に感謝の気持ちを持ったり、

料理するときに食べてくれる相手を思ったり。

食べることはもちろん、食材を選ぶことや料理をすることも、

一面的ではない楽しみ
になっていきます。


見えないところに思いを馳せて感謝したり思いやったり、

気のおけない人と食事の時間を共有したりすると、

「幸せホルモン」とか「優しさホルモン」とか呼ばれている「オキシトシン」が分泌されます。


そう、「まごころ」が「幸せ」を作り出すのです。

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