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サーターアンダギーの思い出

中学も高校も、修学旅行先は沖縄だった。
私の沖縄好きは修学旅行の楽しかった思い出の影響もあるかもしれない。

修学旅行では民泊に宿泊した。
民宿先のお母さんに会ったとき、「会ったことがある気がする」と思った。
私は“スピチュアルな何か”を持っている訳ではない。
「ただ感覚的そう思った」だけだ。
お母さんの気さくな人柄も、会ったことがあるような感覚にさせてくれたのかもしれない。

そのお家のお母さんがおやつにサーターアンダギーを揚げてくれた。それも絵に描いたような山盛りだった。
お母さんは「サーターアンダギーに1番合うのはコーラ!シークワーサージュースは沖縄の人は飲まんよ!」と言って、コーラを置いてくれた。
もちろん、サーターアンダギーにコーラを合わせて食べた。
お腹いっぱいになるまで食べ、寝てしまった。
台所で夕食の準備をする音が聞こえていた。

夕食も机いっぱいに料理を並べてくれた。
中学生の頃の私は夕飯のことを考えず、サーターアンダギーを食べてしまったので
夕食は全部食べきれなかった。
民宿先のお母さんの料理は美味しく、その日のお昼ご飯はタコライスだったのを10年経った今でも忘れられない。

夕飯後、車に乗って海岸沿いに連れて行ってくれた。
見上げると、手に届きそうなほどの星空だった。
あの日の星空を超える夜空は、見られていない。
お母さんはコンビニに寄って買ってきた、ブルーシールのアイスを食べさせてくれた。
美味しかった。

次の日、民宿先のお母さんと別れ、他の民宿で宿泊していた同級生たちと再会し、
学校が貸し切っているバスに乗った。
出発するときふと見返すと、民宿先のお母さんは泣いていた。
驚いて、誰にも言えなかった。
私は泣いていなかった。
一緒に宿泊した同級生たちもおそらく泣いていなかっただろう。
民宿先のお母さんの優しさに、今でも胸がぎゅっとなる。

あの星空を見た場所はどこだったのだろう。
民宿したお家は沖縄のどこだっただろうか。
民宿先のお母さんの名前はなんて言うのだっただろう。
もし、どこかでお母さんに会ったら私は気づくだろうか。

サーターアンダギーを食べるたび、私は民宿先のお母さんのことを思い出す。


この話には続きがある。

https://note.com/erii517/n/nd6ea4cd6f9e1


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