児童文学の名作であり、物心ついた子どもの頃、初めて読んでから、親になった今この時まで、自分の人生の傍らにずっといてくれたと思える物語。 中川李枝子さんと山脇(大村)百合子さんの作品といえば、やっぱり絵本「ぐりとぐら」シリーズは外せないし、図書館のおはなし会で読んでもらったことは子ども時代の楽しい記憶として残っている。 そして、絵本ではなく、児童文学として初めてひとりで読んだのは、真っ赤な表紙が印象的な「いやいやえん」。 絵本は、横長だったり縦長だったり本のサイズは大きめ
季節が冬に向かってだんだんと移り変わってゆく時に、温かいお茶を飲みながら、よるべない夜に読みたくなってしまう一冊。 吉本ばななさんの作品の登場人物には魅力的な人たちがたくさんいると思っているけど(ex「キッチン」のえり子さんとか、「白河夜船」のしおりさんとか、「ムーンライト・シャドウ」の麗さんとか。)、この作品の登場人物たちは格別に魅力的で、みんな最終的には幸せになってほしいと祈ってしまう。 もう何回も読んでいて、結末もわかっているのに、ひとたびこの作品の世界に入り込むと
なんだかずぅっと頭の中でぐるぐる思考していて、ちょっと苦しいなと思って、図書館でタイトルに惹かれて手に取った一冊。 お坊さんの書かれた本なので、あまっちょろい俗世間の考えに渇!を入れられてしまうような厳しい論調だったらどうしようなどと思っていたが、杞憂だった。 なんなら、読んでいてクスッとだったり、ぶはーっと吹き出してしまうようなお話もあったりで、一気に読み終えてしまった。 説法というより、落語を聞いているような気分になり、心の中にすぅっと言葉が染み込んでくる。 亡くな
「時間が足りない」 「時間に追われている」 「時間を効率的に使おう」 これらの表現は、日常の中でまあ割と使われていたり、自分も心の中で思ったりしている。 でも、たまにふと「そもそも時間ってなんだっけ?」と思ってしまうことがある。 本書のイントロダクションにこう書いてあり、薄々そうじゃないかなと思っていたけど、やっぱりそうだったのか!と納得した。 子育てのために時短で働いていることにより、日々の仕事に時間制限がある。 効率的に仕事するためタスク管理し、すぐに返信できるメ
2015年の期間限定の質問・相談サイト「村上さんのところ」に寄せられたメールを、村上春樹さんとスタッフのみなさんで選りすぐった473通のやりとりを集めた一冊。 (本の厚さ2センチ!) 村上春樹さん好きな店主さんがいるカフェにて、本棚に置いてあったので読んでみると、いろんな人の濃淡のある質問や相談に対して、村上さんがコツコツと回答されていて、思いがけず読み込んでしまった。 村上春樹さんの作品を好きな方たちを「ハルキスト」と呼称することがあるけど、当のご本人は本書の中で『でき
法律系の資格の勉強のため、六法の条文をコツコツと読み込んでいる。 そのなかで、特に憲法をじっくり読んでいくうちに、憲法に体温を感じるようになってきた。 憲法についてもっと知りたいと思い、日本を代表する憲法学者の樋口陽一さんのこちらの本を読んでみることにした。 内容が難しすぎて理解できなかったらどうしようかと思っていたが、裏表紙に記されているとおり、講義形式でわかりやすい表現、優しい語り口で書かれているので、支障なく読み進めることができた。 樋口さんは本書の中でこう書い
旅先には、必ず何冊か本を鞄に入れておく。 もう、何回読んだかわからないけど、また旅先で読みたいなと思って持っていった一冊。 吉本ばななさんの世界の旅シリーズの中で、個人的に一番好きな作品。 原マスミさんの印象的なイラストの表紙にはじまり、本編の中にもたくさんのイラストカットが添えられていて、さらに取材旅行の際の色彩豊かな写真もあり、おまけに旅の日程表まで付録としてついている。 そんな盛りだくさんの本作は、吉本ばななさんがあとがきで書かれているとおり、「日本で幸福を見つけ
自分にとって「善きもの」に見たり触れたり読んだりすると、比喩かもしれないけど、心やお腹のあたりがぽっとあったかい気持ちになることがある。 この対話集を読んで、すぐにその気持ちになり、読み終わった後も、まだその温もりが残っている気がする。 宮本輝さんに、吉本ばななさん。 お二人の著作をずっと読み続けてきた自分にとって、この対話集は大事にしていきたい宝物と言っていい。 「対話」の目的は、お互いの意見や感情を尊重し、理解を深めることと言われるが、作品紹介にあるとおり、珠玉の対
不真面目だとわかっているけど、職場にくるといつも頭の中でこう思ってしまう。 「うちに帰りたい。」 そんな自分が、図書館で秀逸すぎるタイトルに心惹かれて借りた津村記久子さんの本。 表題作の「とにかくうちに帰ります」も、なかなかクセのある登場人物たちの会話やら行動が、「そうくるか〜」と思わせる絶妙な文体で書かれていて楽しめたけど、一番印象に残ったのは「職場の作法」という連作短編だった。 語り手はある会社の勤め人の鳥飼さんという女の人で、職場の先輩・後輩・上司の仕事ぶりや職
表紙の金魚鉢に入った金魚が、ぱくぱくしている様とタイトルを見て、直感で「読んだら自分の中の何かが変わるかも」と思い、図書館で借りた一冊。 本書は、思想家(フランス文学者や武道家など他の肩書きもあるけど)である内田樹氏がさまざまな媒体に書いたエッセイのコンピレーション本の文庫版。 もとは2019年に出版されているので、内田氏が文庫版あとがきで「〜今読むとけっこうネタが「古い」と感じられたと思います。」と説明されている。 確かに、読み始めてから少しすると、令和の前の政権のトピ
かなり前に、タイトルと装丁と表紙の写真が印象的で、そのうえ取り外し可能(ここ大事)なレシピブックがついてるので思わず手にとって購入した一冊。 料理研究家の高山なおみさんが、ロッキング・オンの月刊誌「CUT」で連載していた仕事や日常の出来事について綴られたエッセイ集。 つれづれなるままに書かれている散文なので、パラパラと読みたいところから読んでも大丈夫なのがうれしい。 本を読むのは好きだけど、内容が濃かったり、自分が疲れてるなと感じるとき(特に平日の仕事に集中せざるを得な
ギラギラの日差しと熱波が続く毎日なので、せめて涼しい気持ちになれそうな本をと思って読んだ一冊。 南極点人類初到達という世紀のレースについて、ノルウェーのアムンセン隊とイギリスのスコット隊の背景やその道中のことがらを同時進行的に叙述して、なぜそうなったのかを検証するノンフィクション。 ノンフィクションなのに、壮大な物語を読んでいるような気持ちになった。 写真や地図などもたくさん掲載されていて、極限の地の様子や、各隊の基地での生活や隊員たちの顔写真に手紙やスケッチなど、読み
アンソニー・ホプキンスが好きだ。 そこに理屈はなく、映画のキャストにアンソニー・ホプキンスの名前があると、とても気になってしまう。 この映画も、アンソニー・ホプキンスが主演だと知り、公開からけっこう経ってしまったが映画館に観に行った。 映画冒頭で、「この映画は事実に基づく〜」とさらりと表示される。 ナチス・ドイツの手からいくつもの命を救った実在のイギリスの人物であるニコラス・ウィントンを、イギリスのウェールズ生まれのアンソニーが演じる。 映画鑑賞後にパンフレットを購
吉本ばななさんの新刊! 装丁もすてきで、装画は朝倉世界一さん。 仕事で疲れた週末のとっておきのご褒美です。
料理好きだったお義母さんが、古本屋さんで見つけてきて「この本、レシピも使いやすいけど、うつわも素敵なのよ。」と教えてくれた一冊。 本書は「うつわや」さん店主である著者が、お客さまに伺ったレシピを、お客さまとの短いエピソードも交えて、「うつわや」さんでお取り扱いしているすてきな器たちと共に一冊にまとめられている。 ジャンルとしては、レシピ本になると思うけど、お料理が盛りつけられている器たちが、そのお料理にぴったりと合っていて、写真集みたいにも楽しめる。 そして、お料理のレ
図書館の新刊コーナーにあった、潔さを感じる真っ白な表紙とタイトルに惹かれて手に取った一冊。 本書は、20人の表現者(哲学者、画家、ノンフィクション作家、モデル、翻訳者、精神科医、書店主など)による、その人の人生にまつわる本に関する書き下ろしエッセイを収録したもの。 目次には、それぞれの執筆者のお名前と、執筆者の方がつけたと思われるタイトルが表記されているけど、肝心の本に関する情報(本の名前や、作者、出版社など)は書かれていない。 そのため、タイトルだけでどんな本について