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『「日本国憲法」まっとうに議論するために』

法律系の資格の勉強のため、六法の条文をコツコツと読み込んでいる。

そのなかで、特に憲法をじっくり読んでいくうちに、憲法に体温を感じるようになってきた。

憲法についてもっと知りたいと思い、日本を代表する憲法学者の樋口陽一さんのこちらの本を読んでみることにした。


日本を代表する憲法学者による明晰な憲法解説。いま、憲法を論ずるための本格的入門書として重要な1冊である。明快な講義形式で、高校生をはじめ若い人たちにも読みやすい、丁寧な叙述となっている。
昨今の状況の大きなうねりのなか、数々の疑問への回答の手がかりが、ここにあるだろう。情勢を見すえ、大幅な改訂が施された。新たに書き下ろされたのは、《政権交代》《「決める政治」と「決めさせない」政治》《2012年自民党改憲案の日本社会像》《「天賦人権説に基づく規定振り」の排除》の4節。最新状況をふまえ、「改訂新版へのあとがき」を付す。
「国家」「国民」「個人」「人権」「主権」を、どう考えればよいか。法について、民主主義について語るための重要なことがらが論じられ、今こそ憲法を語る言葉を吟味せよ、というメッセージが伝わってくる。付録として、読みやすいレイアウトで日本国憲法の全文を収録。

「もとより、自分の手足を制約されずに思いどおりの支配をしたいという誘惑は、たえず、権力を持つ者たちをひきつけるでしょう。だからこそ、権力を持たないひとりひとりの国民が、権力を持つ者たちに「この憲法を尊重し擁護」(第99条)させるための監視を怠ってはならないのです」 (本書39頁、《憲法を「尊重し擁護する」義務》より)

みすず書房 樋口陽一著 
『「日本国憲法」まっとうに議論するために』
裏表紙より

内容が難しすぎて理解できなかったらどうしようかと思っていたが、裏表紙に記されているとおり、講義形式でわかりやすい表現、優しい語り口で書かれているので、支障なく読み進めることができた。

樋口さんは本書の中でこう書いてくれている。

 日本国憲法の条文としていちばん大切と思うものを一ヵ条だけ引用しなさい、と言われたとき、私は躊躇なく十三条、それも書き出しの一文、「すべて国民は個人として尊重される」を挙げています。
 ここで、この本のはじめの所でとりあげた、「国民」の二つの意味あいを、思い出して下さい。
「尊重される」べきなのは、国民ひとりひとりの「個人」なのです。
全体としての「国民」、主権者としての「国民」がみんなで決めたとしても、ひとりひとりの「個人」を尊重するという原則を侵してはならない、ということなのです。
 そしてこれこそが、人権の意味なのです。

みすず書房 樋口陽一著 
『「日本国憲法」まっとうに議論するために』
47ページより

樋口さんは、1934年に生まれた方で、今月90歳になられた。
戦時中に子供だった世代の樋口さんが、「躊躇なく」憲法十三条の書き出しの一文、「すべて国民は個人として尊重される」を挙げていることに、とても大事なことを示してくれていると感じ、なんだか心の奥にぽっと明かりが灯されたような気持ちになった。

新聞のインタビューでも、同じく十三条が憲法の肝心なところとおっしゃっていて、さらにこのようにコメントされていた。

一人一人かけがえのない個人、全体のために犠牲にするわけにはいかない個人を大切にする。そうした意味での人間尊重。

東京新聞 Web
護憲派の巨頭・樋口陽一さんが次世代を挑発する
「なぜ反乱しない」「9条に恥じない国を」
【ロングインタビュー】より


日本国憲法が1947年に施行されてから、今年で77年。
現実の世界では、戦争や紛争が起きていて、日本という国の中でもいろいろな課題や問題があり、かけがえのない個人が尊重されていると、胸を張って言えないかもしれない。

それでも、わたしは、思い煩う必要がないことで頭をいっぱいにしたくないし、できるだけ憂うことがないように生きて行きたいし、本当の最期には「いろいろあったけど、生きてて良かった!」って思っていなくなりたいと考えている。

本書を読んで、より深く思考することにより、自分の世界の見え方が変わったと感じていて、そこに少しの希望を見いだせたと思う。

本書の中に「言葉の重み」と記されている。
上っ面の「言葉」に惑わされないように、「言葉の重み」を意識しながら、自分も自分のまわりの人も尊重することができるように生きていきたい。

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