「アムンセンとスコット」
ギラギラの日差しと熱波が続く毎日なので、せめて涼しい気持ちになれそうな本をと思って読んだ一冊。
南極点人類初到達という世紀のレースについて、ノルウェーのアムンセン隊とイギリスのスコット隊の背景やその道中のことがらを同時進行的に叙述して、なぜそうなったのかを検証するノンフィクション。
ノンフィクションなのに、壮大な物語を読んでいるような気持ちになった。
写真や地図などもたくさん掲載されていて、極限の地の様子や、各隊の基地での生活や隊員たちの顔写真に手紙やスケッチなど、読み進めていくための想像力を高めてくれ、より深く本書の内容に没頭することができる助けとなった。
特に、本書中に*が付与されている文章や単語については、巻末の[註]でわかりやすく説明があるので、[註]のページをめくりながら本書を読むと、「なるほど、そんな背景が!」とか「こんな意味があるんだ!」などと、新たな気づきも得られる。
南極点人類初到達という世紀のレースは、結果だけいうと、ノルウェーのアムンセン隊は大成功して帰還、対してイギリスのスコット隊はアムンセン隊に大差をつけられて先に南極点に到達されて敗れてしまい、さらに帰還の途上で全員遭難し、全滅してしまう。
この結果だけ聞くと、「やっぱり探検って運の要素があるのか?」と考えてしまったが、本書を読んでいくと、アムンセン隊の隊長であるノルウェーの探検家ロアール・アムンセンの底知れない極地探検への思い、その思いから探検に備えて子どもの頃から、必要だと考えられる技術やスキルそして知識を習得し、着々と極地探検のために行動していく生き様をひしひしと感じ、極地探検の成功は「すべくして」成功したものなんだ!と感動してしまった。
アムンセン隊の行動を読んでいくと、普通の人には想像できない極限の状況の中でも、「ワクワク感」がそこはかとなく感じられる気がした。
特に、南極点到達より約2週間ほど前に「デポ」と呼ばれる食糧貯蔵所兼キャンプ地にて休養後に猛吹雪に見舞われた際のエピソードが印象的だった。
このエピソードを読んで、「こんなチームに所属して、自分の力を発揮して貢献できたらどんな気持ちになるのだろう。」と考えてしまった。
「夢中になる」ってことは、やっぱり最強である。
イギリスのスコット隊については、この本が有名であるし、本書でも全員遭難死してしまう結末を知っているので、その行動ひとつひとつが死へ繫がっていっている気がして、どうしても悲愴感を覚えてしまった。
「アムンセンとスコット」の巻末の解説を、山口周氏が書いており、本書について独自の分析をしているので、その分析の視点から本書を読み直すとまた違った読み方ができて面白いかもしれない。
日差しが照りつけて、暑くて溶けてしまいそうな夏の日に、涼しいお家の中で読むのにおすすめの作品だった。
南極つながりで、元南極観測隊員・西村淳のエッセイを映画化した沖田修一監督作品「南極料理人」もよき。
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