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『白黒つけないベニガオザル』は、ボノボ好きにお勧めしたい

ベニガオザルって知ってますか? 文字通り、この本の表紙のように「顔が赤い」サルです。

ニホンザルも秋から冬にかけての交尾期には顔が赤くなりますが、ベニガオザルは顔の皮膚自体が赤と黒のまだらで、ま、一見ちょっとこわい。

でも、ベニガオザルの赤ちゃんは顔はうすいピンク色で毛は全身まっしろ。天使のように愛らしいのです。

ベニガオザルの社会では、この天使が大人の喧嘩の仲裁役をします。その様子は以前、「ダーウィンが来た!」で観て驚愕しました。

類人猿のボノボは、「性行動」によって争いを回避しています(詳しくは江口の本『ボノボ』を)。ベニガオザルもボノボも、大きな争いごとをうまいこと回避していて、そのやりかたが想像の斜め上を行っています。

あえて共通項を見出すなら、性行動も赤ちゃんも「脆弱な部分をあえてさらけだす」ことが鍵なのかもしれない。そういえば、チベットモンキーも赤ちゃんの存在が社会の潤滑油になっているし。

本書『白黒つけないベニガオザル やられたらやり返すサルの「平和」の秘訣』(著・豊田有)を読んでみたら、そのほかにもベニガオザルの生態には「えっ?」と驚くことや謎が山ほどありました。この本で気になったことを抜き書きし始めたらキリがないです。

それに加えて、著者豊田さんの繊細さと、「好き」を貫く執念、決して一筋縄ではいかないフィールドワークの苦闘が生き生きと描かれ、未知の動物の生きざまを知る楽しみと、書き手の魅力と、環境のユニークさが見事に組み合わさった魅力あふれる本でした。

豊田さんは写真の腕も玄人はだし。素晴らしいサルの写真を撮られています。サルへの愛を感じます。

そして、この「新・動物記」シリーズはタイトルや表紙デザインがいちいち良いんですよね。本の前を素通りさせない力がある。

もちろん、となりのトトロ…じゃなくて『隣のボノボ』も持ってますとも。ボノボは進化の隣人ですから、隣のボノボ、で間違いないです。

ベニガオザル赤ちゃんをキャラにしたら人気になるんじゃないかなあ。喧嘩している(あるいは今にもなりそうな)相手にLINEスタンプで送ったりして。twitterで乱闘が始まりそうなときに、第三者がすっと差し出すとか。


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