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モラヴィアン・ドリーム! アルフォンス・ムハ



堺アルフォンス・ミュシャ館に行ってきた。

堺アルフォンス・ミュシャ館とは


ミュシャ館は株式会社ドイの経営者、土居君雄氏のコレクションが元になっている。
土居氏は、ミュシャの世界的コレクターであり、死後居住していたことのある堺市に500点以上のコレクションを寄付した。
ちなみに本人は広島出身である。
ミュシャは何かと展示されるので、新しい発見がないかもしれないと思って見たが、十分面白い内容だった。
展示タイトルのアルフォンス・ムハのムハって何? かというとミュシャのチェコ語発音だそうで、「ミュシャの作品におけるチェコ文化」というテーマに合わせて発音も変えているようだ。
ただ、この記事ではややこしいので「ミュシャ」表記で統一する。

「モラヴィア」とはチェコ東部の地域のことだ。現代はチェコの一部だが、モラヴィア王国としてひとつの国を形成していたこともある。
「モラヴィアン・ドリーム」とは「モラヴィアの夢」といったところか。

キャプションは、チェコの文化とミュシャの絵の関係についてひもといている。
パリでポスターや広告を製作していたミュシャは、次第に故郷であるチェコの文化への郷愁を強くしていく。
以前、ミュシャは芸術ではないと言って炎上した人がいたが、芸術家ではなく商業イラストレーターやデザイナーに近いと言うなら納得するものがある。広告として作られたとしても後世への影響は計り知れないし、揶揄するような文脈で言わない方がいいとは思うが。


絵の隣に、チェコの民族衣装が展示されている。同じく大阪府内にある国立民族学博物館から貸し出されたものだ。
絵の中のチェコの民族衣裳と、物体としての民族衣裳を比べて見ることができる。
同時に並べるものによって、見るところが変わるのが面白い。

ミュシャは個々の作品について、コメントを残さなかった。したがって、キャプションは想像によるものが多い。
ただキャプションによる視線誘導や、解説はうまかった。


ナショナリズムと芸術

ミュシャがスラブ民族のために描いたスラブ叙事詩の絵はここにはないが、解説動画でどんな絵なのかは見ることができる。
悪く言えばプロパガンダ的な作品で、スラブ民族の歴史を非常に美化した作品だ。
メッセージがあからさまで、上手いんだけれど居心地の悪さも感じる。
ただ、ナショナリズムが高まり始める中で、こういう絵が必要とされていたのはわかる。特に当時は、民族が違えば差別されて当たり前のような時代だったから、エモーショナルな描き方がうけたのかもしれない。
ミュシャはスラヴ民族が手を取り合って生きていく未来を夢見たのかもしれないが、のちにソビエト・ロシアに大変な目に遭わされることを思うと複雑な気持ちになる。
ところでこの解説動画、大学生が作ったもののようだが、給料は支払われたのだろうか……。手間賃くらいはあげてほしい。

私も昔チェコを旅行したことがある。チェコは独立心が旺盛な国なのだと感じた。ナショナリズムという概念が起こるよりも昔から、「自分達の周囲の国とは違う」と自負している。特に、神聖ローマ帝国やオーストリアなどドイツ系の国との関係が強かったので、よけいそう思っていたのかもしれない。


豊富なフォトスポット


あとはすごくフォトスポットが充実している。狭い美術館なのに数ヶ所ある。
ミュシャの絵が著作権切れしているのもあると思うが、写真をSNSに上げてほしいという意思を感じる。
ぬい撮りする人にもいいんじゃないかな。私は今回もロッカーにぬいぐるみを預けてしまった。
ぬり絵もある。絵を描く人は持って帰るといいんじゃないかな。


同時展示されている人形劇展示

ミュシャとは少し話がずれるが、ミュシャの出身国チェコが人形劇がさかんなことから、同時に人形劇の展示がされている。
人形劇としての良し悪しはよくわからないが、どこから見ても魅力的で、立体展示としては面白い。
日本には糸でぶらさげて操るタイプの人形劇があまりないので、新鮮ではある。基本的に、人形の下に潜って操作するものだから。

その他雑感


天王寺駅から数駅で、市内からアクセスしやすい方である。
さらに、渡り廊下で駅から繋がっているため、迷うこともほぼない。
駅前に喫茶店や飲食店などの休むところもある。
9月の残暑が厳しい状況では、行きやすい美術館だった。

ミュージアムショップにはミュシャのアクリルスタンドが売っていて、アクスタ文化もこんなところにまで……となった。
まあアクスタ向きの絵柄ではあるよね

近くのミスドでさつまいもドを食べて帰った。


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