泣きながら食べれる人
この週末、妹と久しぶりに会った。
息子が亡くなったこと、舅の世話でしんどいこと、夫が大切なこと、包み隠さずありのままを話した。
震える背中にお互い手をやり、ゆらゆらとさすりながら、とめどなく流れる涙をそのままにした。
聞きたいことは山ほどあるだろうに、ただただ黙って一緒に泣いてくれた。
小さな女の子だった時、こうやってしゃくりあげながら泣いたよねって思い出し、笑いたかったけど、ごめんねしか言えなかった。
話を最初に戻すと…
朝、今日会える?と突然ラインした。
昼からなら大丈夫~と待ち合わせをして、すぐにお腹すいたねぇとなった。
お岩さんのような腫れぼったい姉の顔に不安しかなかっただろうに、お腹ペコペコやわぁとおどけていた妹。
なに食べる?やっぱ鰻やんね~とイソイソと鰻屋さんへ。
家じゃぁ、たやすく出されへんから、鰻はひとりでこっそり食べにいくに限るやんねぇとかなんとかクスクス笑いながらペロリと完食。
ここは私が~と会計を済ます妹に、そりゃそうやんと殿様顔な私。
一休のタイムセールで今晩のお宿は確保した。
ゆっくり話をしようと腹をくくり、今日会える?とラインしたのだ。
姉の誘いはいつも突然に、ラブストーリちゃうやん、と大口あけて笑うけど、いつものようには笑えなかった、うなぎは美味しいのにね。
じゃ、一旦帰るわ、仕事帰りやし、着替えもってないしね、となった。
この街で暮らす妹は、田舎で暮らす私と違って
いつまでもきれいなまま。
わかった、夜なに食べる?と、今食べたとこでまた次の心配に小さく笑う。
肉やん、となるのは承知だったけど。
格安だったとはいえ、お値段はそこそこした。なにより海が見たかったのだ。
(どこまでも底値を求めちゃう)
心安らぐ眺めが見えるのはここしかない。
朝食つきで、チェックアウトも12時でゆっくり、見上げる空も陸も匂いも優しいのは、一億倍以上知っている、私はこの街で育ったから。
着替えをもってきた妹と、ホテルへ。
見晴らしのよすぎる部屋にうっとりして、飲兵衛じゃない私たちは、部屋にあった無料のお水で喉を潤す。
なにかあった?と聞かないから、言いだすタイミングに困った。
夜、大好きなお肉を食べて、お風呂に入り、寝る前に話しよう、そう思った。
義父さんの世話に疲れてさ、と言い出したとき、タンクの水があふれてしまったのだ。
一気にとめどなく崩壊、止められなかった。
そんなことよりしんどいことがあってさ
死んじゃたんよ
床に崩れ落ちてしまった。
驚いて近寄る妹に抱えられ、ふたり、小さな女の子に戻り、しゃくりあげるように泣いた。
四十九日がおわったこと
母にどうやって伝えよう
毎日が地獄のよう
義父さんにふりまわされてしんどい
家を出たい
夫とふたりで暮らしたい
もう無理なこと
たくさんの後悔
生きるのは辛いね
整体と美容皮膚科に行きたい
FPの試験合格したこと
命日占いの本のこと
NOTEをはじめたこと……
たくさん泣いて、支離滅裂になりながらも話し続けたら、お腹はしっかり空いてきて、食べれそうにないなと思ったけど、目の前に美味しいものが並んだら、迷わず口にいれた。
夕飯は三田屋の肉。
次の日の昼はミュンヘンの唐揚げ。
紀伊国屋のアップルパイがお土産。
泣きながら食べれる人は
生きていけるらしい。