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住宅設計者の自分の家づくり 10 コロナ禍で住まいは変わるのか

(注:2020年8月時点での文ですが、おおよそそのまま掲載します)
家で長い時間を過ごす生活が定着しつつあります。

当然ながら、今回の設計期間は昨年で、現在のような事態になることは全く想定しておらず、着工後ながらもこのままで良いんだろうかということを考えたりします。

とはいえ、おそらく薬ができてしまえば以前とさほど変わらない生活に戻るようにも思え、あまり現状に引っ張られない方が良い気もしますが、せっかくの機会でもあるので最近の生活様式に照らし合わせながら改めて計画を見直してみることにしました。

今回感じたことは

1 病人とそれ以外がある程度距離を起き、なるべく交差せずに過ごせるようにしたい。
2 家族全員が家に長い時間いても適度な距離感を保てるような居場所を作る。
3 外出が難しい時期にも屋外で気分転換ができるようにする。
4 最低限の備蓄物を収納するスペースがほしい。
5 リモートワーク中に他の家族がいてもお互いストレスにならないようにする。

では改めて平面を見てみましょう。

1については、病人は1階寝室に寝てもらい、それ以外は2階の子供室かリビングで寝るとしましょう。風呂トイレは寝室のすぐ近くなので必要最小限の交差で済みそうです。

換気計画が1階については寝室と階段下から吸気して浴室、トイレ、玄関収納で排気となるので、寝室に近い浴室とトイレには寝室から出てくるウィルスがある程度空気に乗って来る可能性があり、ロスナイなどの同時給排気タイプの換気を寝室に導入することは考えられます。

普段の戸建ての設計では温熱環境面から個室はロスナイを基本仕様としていますが、感染という観点では浴室やトイレは病人も使いますし、今回はそもそも寝室に扉が無いためあまり部屋ごとで換気という考え方が有効ではなさそうなのと、我が家の習慣上毎日窓を開けてしまうので熱のロスもそちらが大きく、個人的には見た目のデメリットの方が強いので採用は見送ります。

2については、元々家中全部居室を標榜していたので狭いながらも居場所には困らない予定です。

3については現在の賃貸マンションの奥行き80cmのベランダでもぎりぎり3人で食事やプール遊びができていますが、やはり無理矢理感は否めません。

ここは容積率を使い切らず、気軽に使いやすい広めのベランダや家の各所から見える植栽などの外部空間をしっかりと確保したことがより活きてくることでしょう。

病人が寝室で寝ていても外の庭が見えるというのは気分的にもかなり有効に思えます。

ベッドからの風景

4については計画上ちょっと弱い部分で、コンパクトな空間で快適に過ごすにはあまり物を持たないという意思が必要で、現時点でも物を減らせというプレッシャーと戦っているのですが、ご覧のように収納スペースはかなり少なく、備蓄もせいぜい2週間程度までしか想定していません。

2週間というのは関東で震災などが起きた時に東京を脱出して地元に戻れるまで持てばいいやくらいな感覚なのですが、今回のように日本全国での厄災となると1~2ヶ月分くらいを循環利用できる方が良いのかなと思いつつあります。

考えられるのはキッチンの上の小屋裏スペースを小屋裏収納にすることですが、なかなか出し入れが面倒なので、結局喉元過ぎて熱さ忘れそこまでの備蓄はしないような気もします。

今後の展開次第ですが、米を20kgくらい置いておくのはキッチンバックの収納で十分なので、まあなんとかなるでしょう。(といいつつ、後日デッキ前のベンチ下を収納にしました)

結構入るベンチ下収納

5については、扉が殆ど無いのはどうかと思うのですが、今でこそ3歳児の所構わず発せられる雄叫びに悩まされることがあるものの、間もなくそんなことも無くなるような気もします。

主なワークスペースとなる書斎(設計当初は予定していなかったスペースですが)は1階の玄関収納内なので、2階のリビングでテレビなど見ていてもそれほど気にはならないでしょうし、季節によっては外に出てしまうのもありです。

玄関ポーチでも仕事はできます

今はだいたいwifiやBluetoothで物事が解決しますし、外部コンセントは要所にあるので、なんとかなるような気がします。

と、後半「なんとかなる」で押し切ってしまいましたが、特に大きく変更する必要はなさそうで、基本的な住まい方をしっかりと考えてあれば、このような災厄も乗り越えられる(もしくは多少の不便も納得できる)と思われます。

※この記事は2020年に自社ブログに書いた内容に加筆訂正したものです
竣工後の写真などは下記リンク先でもご覧いただけます。

このシリーズをマガジンにまとめておりますので、こちらも併せて是非ごらんください。

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