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渋谷で秋のアート巡り

たまたま平日ぽっかり空きができたので、以前から気になっていた複数のイベントを巡ってみることにした。偶然にも、いずれの会場も渋谷駅から徒歩圏内という。図らずも思いっきり芸術の秋っぽい、クリエイティブとアートにどっぷりの一日になりました。

「バーチャルスクランブル」@JOL Collab Store

この夏からずっとハマっているVTuberコンテンツ、ぽこピー(甲賀流忍者ぽんぽこ&ピーナッツくん)が参加する、いわゆる「個人勢VTuber」のコラボショップ企画が10月11日から始まるというので、初日に行ってきました。場所は、スクランブル交差点に臨む商業ビルMAGNET(旧109メンズ)の5階。

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イベントについてはKAI-YOUの記事を読んでほしいんですけど、ざっくり説明すると、企業や事務所に所属して頻繁に大規模なライブやイベントのある有名バーチャルYouTuberさんに対して、無所属で、言ってみればインディーズのようなスタンスで独立して活動しているVの人たちというのがいて、そのうち今回ぽこピーさん、おめがシスターズさん、名取さなさんの3組がタッグを組んで企画したというのがこのポップアップストア「バーチャルスクランブル」。

でいて、ぽこピーは滋賀県甲賀市で活動している兄妹(正確には、ピーナッツくんの生みの親である兄ぽことぽんぽこちゃんが兄妹)なので、都内のリアルイベントというのがそもそもレアなのです。今回、着ぐるみスタイルのチェキ会というのもあって、だいたいVTuberの魂の人が本人の着ぐるみに入ってリアルイベントに出るというのがだいぶ混み入ってるんだけど…。

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ご本人が登場するチェキ会は別日かつ予約売り切れとのことで、期間中は実質的にオリジナルグッズ販売のみ。にもかかわらず、初日ということもあって到着した11時ごろには大勢のファンが待機列を作っていた。多少は混むかなってのは予想していたものの、そこからまさか2時間弱も並ぶとは…!

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実物大のぽんぽこちゃんとピーナッツくんだ

わたしは実は、名取さなちゃんとおめシスのことはまだそんなに知らなくて、今回とにかくぽんぽこグッズが欲しかったので行ってみた。会場では彼らそれぞれの会場限定アナウンスが流れており(ファミマの店内放送と勘違いしているピーナッツくんとぽんぽこの掛け合いといういつものノリ!)、『言の葉のうた』や歌ってみたMAD『ぽんぽこがやってきたぞっ』などがかかっているというお祭り感。グッズも盛りだくさんで楽しかったよ。

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グッズはこのぽこピーおあずけアクリルキーホルダーとかを買いました。めっちゃかわいい。わたしは普段スパチャ(スーパーチャット=YouTubeライブ配信の投げ銭システム)とかもしないので、こういう形で彼らの活動にコントリビュートできる機会があるのはうれしいな。

VTuber個人勢のバイタリティや独創性、なにより開拓者精神をとても尊敬している。ぽこピーに関して言うと、根っからのアーティスト気質でアニメ制作ソフトや機材の扱いにも長ける兄ぽこさんと、天性のパフォーマー気質で自由奔放なぽんぽこさんという得意分野の異なる2人が互いを補いつつ、それでも「田舎のどこにでもいる仲のいい普通の兄妹」みたいな親しみやすいパーソナリティが魅力です。企業勢に負けない、ハチャメチャに横断的な活動をこれからも期待してしまうね。

「バーチャルスクランブル」の開催期間は10月27日(日)まで。小ぢんまりした展示ではあるけれど、今後のグッズの通販などは未定とのことなので、気になる人はぜひ行ってみて。

「すしお万博」@GALLERY X BY PARCO

お昼を食べたあと、その足でスペイン坂のGALLERY Xでやっているすしおさんの個展「すしお万博」へ。旧ガイナックス、現在はトリガーの作品の多くに参加されている、日本を代表するアニメーターさんだ。

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ちょうど会場に着いたころ、スペイン坂のところにものすごい人だかりができていて何事かと思ったら、たまたま会場限定のガチャガチャ? かなにかの頒布が始まるタイミングで、待機列の形成をしているところだった。さすがに人気あるんだなあ…。そのおかげか、逆にその時間帯には会場内は空いており、ある程度ゆっくり見て回ることができた。

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展示されているのは、すしおさんが制作に関わったアイドルのMV関連のお仕事の原画、Twitterなどで公開された『キルラキル』のラフイラスト、それに描きおろし作品を含む大判カラーパネルの数々、オリジナルグッズなど。一部を除きほとんどが撮影可能でした。撮影NGのものとしては、分厚いファイルに収められた生原画やラフ画の類がある。すごい量だ。

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にしても、まあ絵が上手すぎてなんの参考にもならない…。魔法です。これだけシンプルな鉛筆の線で、こんなにも生き生きと描かれたキャラクターたち。すしおさんの絵は現実の精緻なコピーではなく、マンガ的なダイナミズムを独自のフィルターを通して作品に落とし込んでいる。それもおそらくは最小限の手数で、ものすごい速度で。

わたしは昔、アニメーターという職業って「自分の絵柄」があってはいけないのだろうと思っていました。漫画原作のアニメだったら、できるだけ個性を殺して原作の絵に近づけないといけないし、それって絵描きとして楽しいのかな? とすら思っていた。でも今なら分かるんだけど、すしおさんにしろ今石さんにしろ、他の著名な原画マンさんであっても、やはりそこには個性があるんですよね。替えがきかない「その人の絵」がある。キャラ原案や原作つきのアニメであっても、いや、そうあればあるほど、動かすときにこそ個性と職人技が現れる。

アニメーションの現場もどんどんデジタル化が進むいま、おそらくは生原画の生き生きとした鉛筆の線が見られる機会もこれからは少なくなるのだと思います。「すしお万博」は残念ながら本日10月14日までの開催。間に合わなかった方はまたの機会に…。

「AFTERL-IFE WORLD BY MAD DOG JONES」@DIESEL ART GALLERY

続いて、明治通りの宮下公園交差点にあるDIESELの地下ギャラリーで開催されている、カナダのCGアーティストMAD DOG JONESさんの個展「AFTER L-IFE WORLD」へ行ってきました。

きっかけはダイハードテイルズの杉さんの記事から。イベントそのものや作品の評価、展示の特殊性についても詳しく紹介されています。

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いやもう、サイバーパンクですよ。元のイラスト自体が彩度の高いギラギラした作品なうえ、蛍光灯の照明とアクリルパネルの反射効果でほとんど万華鏡のような空間になっている。演出の勝利だ。

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で、そのイラストというのがこういった線でパキッと色分けされたフィルターライクな作風。モチーフの多くが近未来都市の様相や日本語の看板、あるいはオタクカルチャーに基づいていて、それらがパースを無視した独特のコラージュのような手法で画面内に高密度圧縮されている。そして、こうしたアーティフィシャルな世界観への憧憬を積極的に肯定するでも否定するでもなく、淡々と描写しているのです。

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東京に住んでいる我々からすると、見慣れた都市風景がこんなふうにエキゾチックに見えているのだなという驚きもあるし、その意味でも彼の個展がここ渋谷で開催されていることは重要なのでしょう(センター街の看板も作品の一部に取り入れられている)。MDJの脳を経由したハイパーリアルな情景が、イメージの源泉となった場所へ再転写されているという感じだ。

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渋谷DIESELでの「AFTER L-IFE WORLD」は11月14日(木)まで。

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