見出し画像

「ALWAYS 三丁目の夕日」などで知られる映画監督 山崎貴さんと代表取締役社長小川のスペシャル対談

2022年9月20日、エプソンは長野県松本市と包括連携協定を締結しました。(リリースはこちら)連携活動の一環として、2023年7月15日から松本市美術館で開催されている企画展「映画監督 山崎貴の世界」への協賛を決定。協賛に至った背景には、松本市出身である山崎さんからエプソンとのコラボレーションの打診があったこと、また今回の取り組みを長期ビジョン「Epson 25 Renewed」で重要なキーワードの一つ「共創」を軸として国内外に訴求するといった狙いがあります。

本記事では、企画展に協賛・共創することにより実現した、映画監督 山崎貴さんとセイコーエプソン代表取締役社長 小川恭範のスペシャル対談について紹介します。コラボレーションの打診に至った経緯や、お二人の「共創」に対する想い、組織の環境作りにおける考え方など、異なる業界で活躍するお二人が語り合った内容をぜひご覧ください。
※対談は、企画展開催前の2023年6月に実施しました。


映画監督 山崎貴さん

1964年生まれ、長野県松本市出身。映像制作プロダクション 株式会社白組に所属。
「スター・ウォーズ」や「未知との遭遇」に強く影響され、特撮の道へ進むことを決意する。2000年に「ジュブナイル」で監督デビューし、主な監督作に「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「STAND BY ME ドラえもん」シリーズ、「永遠の0」、「アルキメデスの大戦」などがある。2023年11月3日に公開される、ゴジラ生誕70周年記念作品「ゴジラ-1.0」の監督・脚本・VFX*も担当。

*:Visual Effectsの略。映画やテレビドラマなどの映像作品において、現実には見ることのできない視覚効果を実現するための技術のことを指す。



信州で「共創」する想い


山崎さん
:僕の地元である松本市での個展の開催ということもあり、地元の有名企業であるエプソンさんと一緒に“何か面白いものを作りたい”と思ったのが発端です。エプソンさんのイメージとして、新しいことをやろうとしている会社、そういうチャレンジングな社風があると思っていて、そんなエプソンさんだったら僕の理解から一歩進んだ、もしくは予想の斜め上の発想とかが出てくるんじゃないか。そういう期待もあり、ただ単純に製品(プロジェクター)をお借りするとかではなく、エプソンさんの知見を、力をお借りしながら、一緒に何ができるかを探っています。

小川:今回の共創は本当にありがたいお話だと思っています。もし共創という形ではなく、依頼を受けて我々だけで何かを創り出すとなった場合、あまり発想が豊かになっていかないのではないか?という懸念があります。もちろん最大限の発想やアイデアを生み出す努力はします。ですが、いろいろな人たちと意見を交わし、刺激し合いながら創り上げたものは、より素晴らしいものにでき上がると思いますし、共創の過程・結果で得たものは、双方にとってかけがえのない価値を生むと考えています。

また一人で悶々とやっていても限界があると思いますし、いろいろな人のアイデアがそのまま使えなかったとしても、何かのちょっとしたヒントになる。これがすごく大事だと思うんですよね。ですので、一人で何かを作るというよりもチームとして、そしてチームもある程度ばらつきのある人材がいた方が良いと私は思っています。

山崎さん:そうですね。みんなであまりにも同じ方向を目指しちゃうと、何かはできるんですけど、あんまり面白くなくて。僕みたいな外部の人間がある程度無茶な事を言った方が、何か新しい面白いものが生まれるような気がします。

小川:今回の共創においても、異なる業界で第一線を走っている山崎さんのような方が一言ぽっと言ったことが、「そうかそういう発想があるんだ」とか「こういうことがしたいんだったら、今までのやり方ではできない。新しい何かを考えないと」みたいに思考や発想が進んで、「山崎さんのやりたいことを実現できるんじゃないか」という風になってくる。
こういったプロセスを踏むことが大事であり、とても貴重な機会ですので、我々も新たな知見を得ながら、山崎さんと一緒に良いものを作っていきたいと思います。


ノウハウがわかっていると忖度する。
新しいもの、面白いものは生み出せない


山崎さん
:映画を作るとき、これだったらできるかもって言いながら取引先や関係先に発注することが多いんですけど、実はその中にいくつか「いやこれ絶対無理だな」というものを入れ込んでいます。そうしたら、その要求に対してうーんと唸っていた人たちが、最後に意外とすごいところにたどり着いたりすることがあるんですよ。
何かを作り出す、生み出すときに“ノウハウがわかっていると忖度する”じゃないですか。知っている領域や知識の中でのことしかやらないので。だから、そういう一見無茶なことを言うってことも、仕事の一つだなと思っています。

ただバランスは難しいですよね。無茶なことばかり言っていると出来上がらないですし。ある程度自分で勉強した中で、これだったらおそらく一生懸命頑張ればできるだろうなというものを、これは無理だろうなというときのための保険として用意しながら、すごく難しいことを一つ二つお願いする。そしてそれをクリアしていくと、最初の予想からどんどん良いものになっていって、最終的に形になったときにすごい達成感があるんですよね。

小川:我々の場合では、お客様がある程度製品について知っていて、「こうしたい」という要求をいただくことが多いんですが、よくよく話を聞いて本当にやりたいことは何かを聞くと、要求いただいたこととは少し違っていたり、より難しいことを求めていたりするケースがあります。そのときに例えば我々の持つ違う技術で、本当に求めていることを実現できるんじゃないかとか、そういうところを探っていくことがすごく大事なんです。そうすると、こちらからもいろいろな提案ができますし、最終的にお客様にも満足していただける非常に良いものができ上がります。

これはお客様とのビジネス、商売をやる上で一番大事なところなんですよね。でもお客様が求めている“本質”を掴むのが意外と難しかったりもします。

自由闊達な意見が言える
環境作りの大切さ


小川
:“本質”を掴む、伝えるという意味では、社外でも社内でも同様だと思っていて、社員が思っていることや考えていることが自由に言える、言い合える風土をどうやって作るか、社長に就任して以来ずっと考えながらやってきています。若手からベテランまで男性女性関係なく、どんどん意見が出せる自由闊達な風通しの良いコミュニケーション環境を作ろうと。

もちろんトップダウンで良いものができる場合もありますが、やっぱりいかに多様な意見から刺激を受けられるか。一人の考えることは限界もありますし、間違うことだってあります。間違いも含めて多様な意見が出て、刺激を受けながら考えて、最後の判断をしっかり行うこと。これが大事だと思っています。

山崎さん:そうですね。ジャッジの部分は、もちろん最後に責任を取らなきゃいけないですしね。その途中にどれだけいろいろな意見を聞くことができるかっていうのはすごく大事なことです。

僕は若手の意見を大事にしていて、例えば若年層をターゲットにした映画を作ったときに、若いスタッフの意見を聞いて参考にしています。でも若いスタッフの上には親方が居て、さらにその上に監督が居て、となると自由に意見を出してと言ってもやっぱり躊躇するじゃないですか。それをどうやったら、簡単に気楽に言えるようにするかという環境作りは大事にしたいなと思っています。

小川:簡単に気楽に言える環境、とても大事ですね。
私も普段から一般社員と対話会をやっていて、そのときには「ざっくばらんにとにかく話せるような場にしよう、愚痴とかも言っていいよ」と伝えています。

山崎さん:なかなか言えなさそうですけど(笑)

小川:なかなか言えないんですけど(笑)
でもそこには絶対改善につながるヒントがあると思うんですよね。何かがあるから愚痴が出てくる。もしかしたら単なる事実確認になるかもしれませんが、そこに何かもっと奥深い問題があるかもしれない。あるいは愚痴がヒントになっていろいろなことが見えてくるとか。

山崎さん:超大事ですよね。僕の場合はできるだけ舐められるようにしています。特にうちのCGスタッフには好き勝手言えるように「(何を言っても)いいんだよ」と伝えているんですけど、あまりにも忖度のない意見を言うんですよ。「監督、ダサくないですか?それ」みたいな。ちょっと最近つらくて。やり過ぎたかなとは思っています。(笑)

でも作品を最終的にジャッジするのはお客さんなので、世代とか性別の違いなど多様なお客さんがどう思うか、僕らではわからない部分も事実としてあります。そうした中で、若い人が見たらどう思うのかとか、いろいろな人の忖度のない意見を聞きたいなと思いつつも、半分聞きたくないなとも思うんですよね。でも最後に後悔するのは自分なので聞いていますけど。(笑)


「ALWAYS三丁目の夕日」の時代から振り返る
地球環境への配慮


小川
:「ALWAYS三丁目の夕日」のあの時代は高度経済成長時代で、ちょうど三種の神器*が出てきて、まさに物が豊かになっていく時代ですよね。そして物が豊かになることで、人々の生活が豊かになる。その時代から、今の我々は物質的には相当豊かになってきていると思うんですよね。ただ本当の豊かさって何だろうと考えたときに、今までやってきた物を沢山使って、捨ててという状況は本当に豊かなんだろうか。地球環境を汚してまで自分たちだけが幸せになるというのは、本当に幸せなんだろうか。と振り返ったときに、いやそうではない。地球環境に良いことをしていった方が世の中のためになるし、我々が存在している意味も世の中のためではないかと。若い頃は、こういうのちょっと白々しいなという思いもありましたが、最近はベタに言うようにしています。

使い捨てではなく、長く使ってもらう。これが世の中やお客様がより豊かになることだと考えているんですよね。ですので、今までの「売って、捨てて、また新しいものを買って」というのは、もうそういう時代でもないし、そういうことをやっていてはいけないとも思っています。

*:当時(1950年代後半)豊かさや憧れの象徴として「白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫」が三種の神器と呼ばれた

山崎さん:外圧というか、世の中がそうじゃなきゃいけないから、企業とか個人としても、地球環境への配慮をちゃんとやらなきゃいけないから、やる。そんな入口でも僕はいいような気がしているんです。
それに配慮をしないと逆に見放されちゃうという世の中、時代にも段々なってきているじゃないですか。なので、配慮しないとまずいのでやりますという始まりでも、何か良いもの、良いアイデアが実はあるんじゃないかなって。
ですから、外圧や世の中の流れは大事だなという気がしているんです。

小川:確かにそうですね。社会が変わってきて、今、企業はお金儲けだけじゃない。社会貢献だと。実際に貢献できると楽しいし、気持ち良いと思うんです。だから社会貢献や地球環境への貢献を前面に出してやっていく。例えばシンプルライフ*なんて言葉がありますが、捨てるとなんか気持ち良いねという感じに近いのかなとも思っています。

*:無駄な物を削ぎ落とし、自分が本当に必要な物・好きな物だけに囲まれて過ごす生活スタイルのこと

山崎さん:慎ましやかにとか、ずっと良いものを大事に長く使うとか、昔は割と普通だった暮らしが、大量消費こそが幸せなんだと一度時代が変わって、また昔の暮らしの考え方に戻ってきている。やっぱり人間も本能的にわかってたんじゃないかなという気もするんですよね。

小川:そうですね。でも、お金をしっかり儲けないと社会貢献や地球環境への貢献も続けられない。しっかりやっていきますよ。


「共創」の後に目指す
「山崎貴の世界」


山崎さん
:今回エプソンさんと一緒にやらせていただくところでは、お客さんを驚かせたいんですよね。お客さんが来たときに「このぐらいだろう」って思っているところから、どれだけ飛びぬけられるものが作れるか。そこがポイントだと思っています。何ができるかというのは、まだこれから切磋琢磨しなきゃいけないというか、ちょっと苦しまなきゃいけないと思っていますが、やっぱりお客さんにはちょっとでも驚いてもらいたい。

そして皆さんが考えているスケールより、2歩3歩先に行きたいと思っています。僕も音楽とか映画とかいろいろなものが好きなんですけど、新しさっていいますか、新鮮な驚きっていうのがそこにないと「これ昔のあれと同じじゃん」となって、あまり面白くないんですよね。クオリティが高いのはわかるんですけど、でもそれだけだよねと。そこに新鮮さがあると、“新しさ”が感じられるはずで、そうなると面白いですし何より素晴らしいと感じます。ですので、そういったものを作り上げるためにエプソンさんと一緒に頑張っていきたいですし、最終的にでき上がると期待しています。


スペシャル対談の動画はエプソンのリクルートサイトに掲載しています。
https://www.recruit.epson.jp/future/#conversation

この記事が参加している募集

企業のnote

with note pro

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!