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ゴーストランドの惨劇(2018) その夢、絶対叶えよう。

 私はこの映画の軽いネタバレをYouTubeで先に見てしまい、ちょっと後悔はしたけれど面白そうだなと思ったので鑑賞してみた。想像以上に重たい内容でびっくり。本作は中盤で"あるトリック"が種明かしされる。もちろんそれを知らない方が楽しめるんだけど、この映画のすごいところはここから。そのどんでん返しに頼りきって全てを賭けるのではなく、映画後半はしっかり映像と演技で魅せてまさに真っ向勝負を挑んでくるのだ。

〈あらすじ〉

人里離れた叔母の家を相続し、そこへ移り住むことになったシングルマザーのポリーンと双子の娘。奔放で現代的な姉ベラとラブクラフトを崇拝する内向的な妹ベスは、双子でありながら正反対の性格だった。新居へ越してきた日の夜、2人の暴漢が家に押し入ってくる。母は娘たちを守るため必死に反撃し、姉妹の目の前で暴漢たちをメッタ刺しにしてしまう。事件から16年後、ベスは小説家として成功したが、ベラは精神を病んで現在もあの家で母と暮らしていた。久々に実家に帰って来たベスに対し、地下室に閉じこもるベラは衝撃の言葉をつぶやく。

映画.com

〈あらすじ〉

※明言は避けますが以下ネタバレを含みます※
※何も知らない方が楽しめる映画なので、ここまで読んで本作に興味のある方はこの先を読まないことをお勧めします※








 本作は心霊現象系ホラーではなくヒトコワものだ。母親と姉妹を襲う二人組は、巨人のような大男とムキムキの女性(実は女装した男性)という組み合わせ。登場してから最後まで叫び声以外は一言も発することはなく、ただただ残虐で暴力的。不気味だし何を言っても通用しないという絶望感がある。大男の方は知能に障害がある様子で、とにかく女の子の人形で遊ぶのが大好き。姉妹にフランス人形のようなコスプレをさせて楽しんでいる。作中では詳細について明かされないので、結局二人は何が目的でどこの誰だったのかは分からずじまい。ココディ・ココダという映画に出てくる3人組に雰囲気が似ている。

 お人形姿にされたベスが大男にいたぶられるシーンは、他の有名な拷問映画さながらの緊迫感。殴られる瞬間も迫力がすごいので「がんばれ!逃げろ!諦めるな!」と思わず力が入ってしまう。なかなか長尺で描かれているので酸素が足りなくなりそうになる。命からがら逃げ出した姉妹がまた捕まって連れ戻されるシーンはまさに「絶望」そのもの。個人的には一番キツいと感じる展開かもしれない。

 姉妹が散々な目に遭うストーリーの裏に流れているのは家族愛。娘たちを守るために命をかけた母、映画序盤では内気な妹を煙たがっていた姉ヴェラの優しさ、そして妹ベスの姉を想う気持ちと勇気。お涙ちょうだいとまではいかないが、観ていてとても安心感があった。というか視聴者としてはここしか救いがないのだ。

ベスが逃げ込んだ世界はまさに完璧で、彼女が思い描いた通りに輝いている。辛いことがあった時に心が現実から離れ、まるで他人の人生を見ているように現実感を失ってしまう解離という症状は実際に存在する。小説を書くのが好きで想像力豊かな彼女だからこそ作りあげることができた世界。映画終盤でそんな理想郷を自ら脱出し、迷わず姉のもとに向かったベスには胸が熱くなる。無事に逃げ帰った彼女が、今度は姉と一緒に「ゴーストランドの惨劇」を書きあげて夢に見た人生を手に入れていることを願う。最後までベスの才能を信じてくれていたことが分かる母親の演出も良かったと思う。

 わずか90分の映画とは思えない重厚感で鑑賞後はやや疲労感すら覚える。大して怖くないB級ホラーでしょ?なんて余裕かましていると、想像以上に痛々しくて胸糞な展開に面食らうこと間違いなし。アマプラだと標準画質300円でレンタル中です。ぜひご鑑賞ください。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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