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ビバリウム(2021)

無駄に知名度の高いこちらの作品。こういう世にも奇妙な物語みたいなのが大好物なので楽しんで観た。オーメンのダミアンよりも不気味な少年が出てくる。ちなみにこれとムカデ人間とKUSOを観るためだけにAmazonマイシアタープラスの無料体験に申し込んだ(ムカデ人間シリーズは一度鑑賞済み)。とんでもなく濃密な14日間になりそうだぜ。

<あらすじ>

新居を探すトムとジェマのカップルは、ふと足を踏み入れた不動産屋で、全く同じ家が建ち並ぶ住宅地「Yonder」を紹介される。内見を終えて帰ろうとすると、すぐ近くにいたはずの不動産屋の姿が見当たらない。2人で帰路につこうと車を走らせるが、周囲の景色は一向に変わらない。住宅地から抜け出せなくなり戸惑う彼らのもとに、段ボール箱が届く。中には誰の子かわからない赤ん坊が入っており、2人は訳も分からないまま世話をすることに。追い詰められた2人の精神は次第に崩壊していき……。

映画.comより引用

<感想>

※以下ネタバレを含みます※

 冒頭のカッコーの映像が最大のネタバレではあるのだが、ここで気がつく人は少ないだろう。

 トムとジェマがが案内されたのはどこまでも行っても同じ形の家が立ち並ぶ住宅街。他には誰もいない。どれだけ車で徘徊しても同じ家の前に戻ってくる。怖いですねぇ。家ごと焼き払ってもなぜか復活。定期的に食料は届くがそれらは全て無味無臭だ。なんだかんだ言ってこれが一番の地獄かも。
 絶望に暮れる2人のもとにダンボールに入った赤ちゃんが送られてくる。箱には

"RAISE THE CHILD AND BE RELEASED"  (子供を育てれば解放される)

と書かれている。この子供はとんでもない速さで成長するのだが、まぁ兎にも角にも気色が悪い。年齢の割に妙に野太い声、異常な記憶力でテープレコーダーのように2人の会話を再現でき、何か要求する時は甲高い声で絶叫する。いつも2人を見ていて、もちろんセックスも盗み見る。エスターに引き続き”不気味な子供えっち覗きがち”説はかなり濃厚になってきた。

こいつです。

数々の映画で気色悪いおっさんには慣れている私でも、気色悪い子供には免疫がない。つんざくような叫び声が本当にうるさくて、何度慌ててテレビの音量を下げたことか笑。トムは早々に愛想を尽かしてこいつに辛く当たるが、ジェマは母性本能というのだろうか、見捨てられずつい優しくしてしまう。ジェマと過ごす様子はまるで本物の親子のようで「よくよく見たらこのガキも可愛いとこあるか」なんて一瞬錯覚しそうになる。トムは脱出経路を求めて庭の穴を掘ることに執着していく。

 青年になった子供はオードリー春日をシュッとさせた感じに成長(春日さんは大好きです)トムは体調を崩して絶命し、青年によってまさに自分が掘り続けていた穴に埋められてしまう。ブチ切れたジェマは青年を襲うが、仕留めることはできず失意の中で死亡。青年はそのままカップルの車に乗って住宅街を出ると、冒頭の不動産屋に行き、再び違うカップルに住宅を売りつける。


私は途中からSF展開となる作品があまり好みではない。だってそのオチで良いなら「正体は地球外生命体でしたー」にすれば何でも成立してしまうから。この映画も途中から香ばしさは感じていたものの、化け物として物理的に殺傷する恐ろしさではなく、冷静に人間を利用して増殖する狡猾さやしたたかさ、何にも悪くないのに化け物を育てさせられ最後には殺されるという不条理さが主軸になっているのが良い。冒頭からひしひしと感じる違和感と心地悪さ、数少ない俳優さんたちの演技も光る良作である。映画中はBGMもほぼなく、カラフルなのに無機質な光景は巧妙で、一種のアート系映画とも言えるだろう。

 お金を払ってまで観ることを勧めるかというと、正直微妙なラインではあるのだが、この子供の類を見ない気色悪さは一見の価値あり。機会があればぜひご覧ください。もちろん責任はとりませんよ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。




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