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自社採用、地域おこし協力隊…面接に関わって考えた、マッチングや採用の大事な話#1



 えぽっく代表の若松です!

 昨年の今頃を振り返ってみると、1月、2月は、さまざまな人材募集の面接が集中していました。自社の採用面接も含め地域おこし協力隊など、一年を通してかなりの数の面接をさせていただいたおかげで、マッチングにおける考え方は本当に大事だなと、改めて思っています。

 人材におけるマッチングというのは、どの業界でも課題になっているところだと思います。


 本記事では、地域おこし協力隊と役所におけるマッチングについて、僕の経験から考えたことを記していきたいと思います。主語は協力隊や役所になりますが、一般企業の採用やマッチングについても通じるところはあると思いますので、参考にしていただけたら嬉しいです!




■そもそもなぜ、協力隊として採用したいのか?


 どこまでをマッチングというのかを考えると、『ある人とある組織が出会い、受け入れるまで』のことを、一般的には指すのだと思いますし、僕もそうだと思います。その上で大切なのは、お互いにとってそのマッチングが良い結果をもたらすものであることです。

 マッチングを行う際に避けて通れないのが面接です。


 面接を行う人、あるいは行ったことがある人は、何を重要視して面接をされているでしょうか?

 これは組織の考え方や、目下必要としている人材像などなど、あらゆる要因に左右されることなので、一言では表せないものだとは思いますが、よくあるのは【スキル重視】か、【人物(人柄)重視】か、が挙げられると思います。目に見える成果物を作ることだけにフォーカスするのなら、もしかしたらスキル重視で面接して、任務的に粛々と業務を遂行してしまえば、上手くいく可能性もあるかもしれません。

 ここで考えてみていただきたいのは、なぜ、協力隊(会社であれば社員)として採用したいのか?ということです。なぜ、身内、仲間を集めたいのか?とも言えます。

 目に見える成果物をただ粛々と作っていくだけなら、業務委託でもできる場合があります。それをわざわざ、なぜ協力隊として関わってもらいたいのか?これを考えてみてほしいのです。

 これは僕の持論ですが、その理由は明らかに、理念やビジョンの浸透でしかありません。

 組織の中である程度仕事を回していくという機能的な側面として、ある程度の人材(回せるだけのキャパの確保)が必要なのはもちろんあります。しかしそれだけではなく、取り組みたい共通の課題があり、同じところを目指していくという、ある種の共感性、共同体のようなものを求めているように、僕は思うのです。


 この理念やビジョンの浸透、共感性を求めればこそ、比例して仲間を求めるのであって、そこが業務委託との差だと感じています。これは協力隊のような行政の案件も、一般の企業も同じだと思いますが、その温度差をいかに埋めていけるか、という点は、非常に大切なことだと感じています。



■面接に臨む、その前に


 例えば、すごくプレゼンが上手い、トークが魅力的、素早く的確な資料が作れる…のように、能力値が高い人を純粋に採用していく、という考え方が【スキル重視】です。


 これは、プロジェクトチームを組んで短期的に一つの事業をこなす場合(協力会社に部分的に業務委託する場合など)には、ある程度有効に作用するかと思いますが、協力隊として関わってもらう場合、この採用の仕方をしていくと、長い目で見てゆくゆく上手くいかないことも少なくありません。

 協力隊の場合、役所の担当者が数名で面接を行うことが多いですが、応募者に対して点数をつけていき、総合点の高い人が選ばれることがあります。このときに、点数をつける項目を何にするかは役所によるのですが、どうしてもスキル重視(事務能力など)の点数の付け方になりがちです。

 もう少し踏み込んだ言い方をすると、面接に何度も時間を割けるわけではありませんので、(仕方ないことかもしれませんが)短い時間で判断しなければならず、スキルが高そうな人(スキルが高そうだな、という印象を与える人=面接のスキルが高い人)が、結局高得点になりやすいように思います。(これはもちろん、自己PRの才能でもあるわけで、それが良い、悪いというわけではありません。)

 しかし一方で、たとえば『話すのは苦手だけどシンプルに人が好きで、人の気持ちを汲み取り細やかなサポートができる人』というのは、協力隊のような、地域に密接に関わっていく仕事には、必要且つ重要な人材であったりするのです。

 社会人であれば、アルバイトや企業の面接を受けたことが一度はあると思いますし、面接する側もされる側も、”面接の限界”、というのは感じたことがあると思います。簡単に言うと、『たった一回(あるいは数回)の面接で、何がわかるんだろう?』という感じ…。

 少し脱線しますが、えぽっくの場合は説明会のような形で最初に約1時間くらいお話しさせていただいてから、エントリシートを書いていただきます。日を改めて、再度エントリーシートを見ながら約1~2時間、お話しさせていただきます。さらに、自分の取説、モチベーションシートなど、もう一つ課題を追加で出していただいてから、再度お話しをさせていただく、という流れで基本的には面接をしています。ですので、自社の場合は最低でも3回は面接を行っています。

 この3回の面接が、僕の中でもベストだとは思っていません。しかし、先述したように面接の限界も理解しているので、現状このような体制で面接を行っています。

 本音を言うと、中途採用であっても、副業などで何かしら関わってもらってから採用、という形をとれるのが一番良いのだろうと思っています。しかし、働きながらであればそれが叶う環境にいる人もなかなかいませんし、えぽっくとしても、副業としてお願いできる仕事がタイミングよくあるかと言われると、できない場合もあります。


 現状、世間的にもオンラインが主流になってきていることもあり、いろいろな要素が絡んでいるので、面接を超えたところでお互いに試してみる、知っていく、というのも、よほどタイミングが合わない限り難しいです。それでも、1~2日でも一緒に行動することで、その方の性格や価値観に気づくことがあります。また、地域を実際に知ってもらうためにも、働く前に対面で会っておくことはオススメです。

 話を戻します。今も昔も、一度や二度の面接だけで人を見極めるのは非常に難しいですが、役所は事前に求める人物像に合わせた選考基準やその方法をつくり、役所の内部、外部を問わず、面接官として関わる人全員に共有、理解をしてもらいましょう。


 面接を受ける側(応募者)にも面接を行う側(役所や企業)にも言えることは、応募する理由や募集する目的など、とても基本的なことをもっと掘り下げることが必要であることは確かです。

 面接で何を聞きたいのか。
 面接で何を知りたいのか。
 どんな人材を求めているのか。
 どんなことがしたいのか。


 双方きちんとした物差しを事前に準備して、面接に臨んでもらえたらと思います。


■マッチングで何を重要視したらいいのか?どこの地域でも共通の大事な視点


 協力隊として活躍するということは、基本的に移住が伴います。『地域と上手くやっていけそうか?』という目線を持つことは、どこの地域の協力隊応募者にとっても役所にとっても、共通して非常に重要な視点です。

 すべての都市部で、とは言いませんが、都市部は地域コミュニティにおける人間関係が希薄なことが多いです。


 たとえば、日常生活で関わる人を挙げてみると、家族、職場の上司や同僚、学校の友達…などがあると思います。これはきっとどこへ行ってもあまり変わらないと思います。しかし都市部だと、『隣の家の人の名前を知らない…』ということは、わりとあることだと思います。

 しかし、地方ではそうはいきません(笑)。


 お隣さんの名前を知らないくらいですから、都市部の方は無関心に慣れている方が多いと思います。それが、都会から地方へ移った瞬間、急に隣近所との関わりが濃くなるため、その温度差やギャップに戸惑うことも少なくありません。

 たとえば、移住者からのよくある相談の中には、『春になった途端、食べ切れないほど大量のタケノコをもらうんですが、これはもらったほうがいいんでしょうか…?』のように、“やたら大量の野菜をもらうあるある” があったり(笑)、『もらってばかりでは申し訳ないから、何か返さなきゃと思うのですが、何もないのでどうしたらいいのかわからない…』という、“お返しはどうしたらいいのあるある” を、よく耳にします。


 (とてもありがたいことではありますし、地域の方の人柄が出ていてほっこりするエピソードではあるのですが…嬉しい悲鳴的によくあります(笑))


 仕事(だけ)の関係、のように、どこかで線を引いたり、分断された関係性の中で生活するのではなく、いい意味で『放っておいてくれない』のが地域なので、そういった環境の中で上手くいろんな人と関わりながら、コミュニケーションをとっていく必要があります。

 (余談ですが、このように都市部での生活と比べると公私の境界があまりないので、別の見方をすると、『都会の人間関係に疲れたので、田舎に行きたい』と思っている人は、その真意がもし『一人になりたい』のであれば、田舎へ行くのは逆効果です。プライバシーが全くないわけではありませんが、人間関係がそれほど濃密になる可能性が高いので。)

 以上のことから最初に述べたように、スキルを重視してマッチングさせるより、地域の中でいろんな人(対役所、対ご近所さん、など)と、上手くコミュニケーションをとれる人かどうか、のほうが重要なんだろうなと思います。履歴書のように紙に書けることよりも、人に上手くお願いができるとか、上手く人を巻き込んでいく力があるとか、人と仲良くなるスピードが早くて移住したばかりなのになんだか馴染んでる…とか、結果的にそういう人のほうが、上手くいっているケースが多いように思います。


 地域と上手くやっていけそうかどうか。人間生活の基盤をその土地で築いていくためにも、協力隊にも役所にも意識してもらいたいなと思う視点です。


 以上が、主に面接時に大事だと思うポイントについて、協力隊と役所に共通する、僕の中で代表的なものをまとめました。


 『面接って奥深いな…』と思っていて(笑)、僕もまだまだ勉強中です!こんなことを書いてしまうと元も子もないかもしれませんが(笑)、結局は、蓋を開けてみないとわからない、やってみないとわからないとは思います。それでも、その人それぞれ、地域それぞれにとって良いマッチングになるようにと、いつも思っています。


 ここからは、協力隊の応募者と役所、それぞれの立場で、良いマッチングにするために知っておいてほしいな、こういうことに留意すると良いのではないか、と思うことを書いていきます。こちらも参考にしてもらえたら嬉しいです!


■”起業型”協力隊に興味がある方に、知っておいてほしいこと


 まず地域おこし協力隊には、起業型協力隊と呼ばれるものがあります。これは、地域おこしに関わる内容で起業することを目標とした協力隊です。


 (一方、テーマ型の協力隊と呼ばれるものは、たとえば『農業の活性化のための商品開発をしてくれる人を募集します』のように、やることの大筋が決まっています。)

 この起業型協力隊の応募の際、役所に対して、『〇〇で起業したいのですが、どんなサポートをしてくれますか?』というスタンスでやって来られる方がいます。具体的に時々あるのは、『〇〇を作りたいのですが(売るために)、どんなPRを役所はしてくれますか?』のような質問ですね。

 移住して起業してくれたら、何でもしてもらえるわけではありません…(笑)。

 まず、地域おこし協力隊以前に “起業する” とは、自ら商売をしていくということですよね。当たり前ですが、雇用されて給料をいただくわけではありませんので、社会的には個人事業主であれ法人であれ、自立した立場を持ちます。起業するにあたって、役所を含むあらゆる機関で補助金等の金銭的なサポートは受けられるにせよ、基本的には自分で商売を成り立たせなければなりません。

 厳しい書き方になるかもしれませんが、独立してやりたいことをやる、ということは自由である反面、雇用されている時とは異なる責任も伴います。起業する=経営者になるということは、基本的には何事も自分で考え決断し、行動に移さなければなりません。世の中にはたくさんの企業がありますが、そのどの企業が役所に対して、『この商品を開発しました。あなたの町で起業、開発したのだから、売れるようにPRしてください』と頼むでしょうか…。協力をお願いすること、相手の求めるものを理解しながら巻き込むことは大事ですが、要求や要望から始まるのは今後の関係性を築く上でよくありません。(『移住してあげているんだから、役所はこれをやって当然』と言う方もおりました。)


 ”起業型” といっても、協力隊期間中は給与のような形で報酬が支払われますが、任期が終わるまでの期間限定起業ではありません。形態は地域によって異なりますが、いずれにせよ任期が終わるまでの期間限定起業ではありません。任期満了のその先も、成り立たせていかなければなりません。

 起業型という名前から、“起業” に注目してしまうかもしれませんが、忘れてはいけないのは “地域おこし” 協力隊だという点です。役所側からすれば、やってみないとわからないにせよ、その事業が地域おこしに寄与することを望んでいます。たとえば起業型の協力隊としてカフェを開業するのは良いですが、長い目で見て地域に根差してくれる、その地域に価値のあるカフェになってほしいわけです。カフェの開業が目的ではなく、地域おこしが目的です。

 このように、役所が求めているのは、ただ移住して起業してくれる人ではありません。あくまで自主性に任せた起業は手段であって、目的は地域振興や活性化…そこを忘れないでほしいと思います。


■協力隊が地域で良好な人間関係をつくるための心構え


 人間、いくら平穏無事に生きていきたいと思っていても、誰ともぶつからずに生きていくのは難しいと思います。でも、だからといって、わざわざ敵を作る必要はないですよね(笑)

 協力隊に関しても同じで、『進んで敵を作らない』ということを知ってもらえたらと思います。どういうことか具体的に書いていきます。

 育った場所と移住先では、たとえ同じ日本とはいえ文化が異なります。自分にとっての当たり前はその地域の中では当たり前ではなく、またその逆も然りです。

 移住先の地域で、ある決め事があったとしたら、それには何か理由があってその決め事ができたのです。ある行事が毎年行われるのであれば、歴史的な背景があって続いているのです。大きな行事の存在から日常の細かい取り決めまで、こういったことはあらゆる地域で、たくさん存在していると思います。


 そんな文化の異なる場所で、『その行事に何の意味があるんですか』とか、『それは非効率だからこういうやり方のほうがいいですよ』、のように、自分のバックグラウンドのみで価値判断をしてしまい、その土地のバックグラウンドを無視してしまう、ということが起こることがあります。

 育った環境や慣れもありますので、感じることや思うことに関しては決して協力隊が悪いわけではありません。そんなことは誰しもあることだと思います。しかし、『郷に入っては郷に従え』という言葉があるように、地域でつくられてきた、あるいは守られてきたものには、やはり理由があって存在しているのです。意味があるのです。最初はわからなくても、それを『理解する、理解したい』というスタンスを取ることは、すごく大事なことです。

 言い方は悪いですが、自分の都合や価値観だけで、その地域に根付く文化を変えようとしたりすると、場合によってはただの侵略者みたいになってしまいます…(苦笑)。逆の立場になって考えてみればわかることで、先祖代々生きてきた場所や、何十年と生活してきた場所での慣習を、何も知らない新参者が壊しに来たら、良い気はしませんよね。そんなつもりはなくても、そう受け取られてしまってからでは、信頼関係を築くのは大変かもしれません。

 『進んで敵を作らない』という言い方は、一見するとネガティブな言い回しかもしれませんが、別の視点で考えてみると、『その地域に興味を持って、理解しながら馴染んでいこうとするスタンス』と言えると思います。

 決意をして移住したのですから、自分のやりたいことだけに留まらず、地域ならではの人間関係も良好なものであってほしいですし、楽しく生活してもらいたいです。そのためには、この心構えをぜひ、覚えておいてもらえたらと思います。

 いかがでしたか?参考になるところがあれば嬉しいです!


 次回の記事で、役所の立場で留意すると良いなと思うことを書いていきたいと思いますので、そちらもお読みいただけたら嬉しいです!



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