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【729回】誰かを馬鹿にした人は、将来、自分が成功した時に全部、晒されちゃうよ(伊坂幸太郎「逆ソクラテス」その9・最終回)

伊坂幸太郎「逆ソクラテス」気に入った言葉の紹介を続けてきた。
最終回だ。
最終話「逆ワシントン」から。

◯「逆ワシントン」で気に入った言葉

「もし、わたしがいじめられたら、いじめてきた相手のことは絶対に忘れないからね。で、その子が大人になって成功したら、満を持して、発表すると思う」

伊坂幸太郎「逆ソクラテス」逆ワシントン(p271)

こういう考え方もあるな、と「ハッ」と読む手を止めていた。
それにしても、大人になるまで、成功するまで待ち続ける。恨みのエネルギーを抱え続けていられるだろうか。
逆にそのエネルギーが、自分を壊しそうだ。

誰かを馬鹿にした人は、将来、自分が成功した時に全部、晒されちゃうよ

伊坂幸太郎「逆ソクラテス」逆ワシントン(p273)

うーん、さらにページをめくって飛び込んできた言葉だ。
誰かを馬鹿にした人は、誰かを馬鹿にし続けて生きていく。誰かの弱みや、自分が気に入らないところを探す。こういう人は、実はまわりに馬鹿にされる部分を晒しながら生きている。そして、本人はそれに気づいていない。もしや、気づいていて、生き方を変えられない。今更、人の弱みを握って、自分の居場所を作る生き方を変えられない。

自分が相手に与えた傷は、自分だけでは対応できない。相手の同意が必要なのだ。
しかし、自分から傷を見せてもらわなければ、触れさせてもらわなければ、どうにもならない。
傷の回復の主導権は、傷つけられた方にある。
相手が、傷をぶつけ返すと決めたなら、いつ自分が傷つけられるかはわからない。
誰かを馬鹿にするということは、風が吹けば桶屋が儲かるように、巡り巡って戻ってくるかもしれない。自分でトラップを仕掛けているようなものなのだろう。

笑顔で、喜んでいる最中に、穴に落ちる。


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