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#春

新しい明治のころ

新しい明治のころ

初恋

まだあげ初(そ)めし前髪(まへがみ)の
林檎(りんご)のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛(はなぐし)の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅(うすくれなゐ)の秋の実(み)に
人こひ初(そ)めしはじめなり

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃(さかづき)を
君が情(なさけ)に酌(く)みしかな

林檎畑の樹(こ)の下に

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春の発見

春の発見

その子 二十歳 櫛にながるる 黒髪の おごりの花の うつくしきかな
みだれ髪
与謝野 晶子

歌集みだれ髪の名前の元になった短歌。

自分の中の官能を堂々と歌ったナルシズムが心地いい。

明治の大きな特徴は思春期の発見じゃないかと思っている。それまでは16歳ぐらいになると結婚と子育てが始まってしまっていた。高等教育がはじまって青春を楽しむようになったと思う。

夏目漱石なんか読んでると、娘義太夫に

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みんなの歌からひとりのみんなの歌

みんなの歌からひとりのみんなの歌

春の苑 紅にほふ 桃の花 したでる道に 出で立つ乙女
万葉集
大伴家持
 万葉集では、大友家持が好きだというのはこっぱはずかしい感じがしていた。ちょこっと、かじっているだけだし。

 万葉集はまだ、社会が初々しいころの初めての歌集で古代からの民謡、防人、天皇、いろんな立場の人々の歌が集められている。生活の中に歌がある。そして、なにかしらの祈り、思いをあらわしてように思う。
 

 その中でいろんな

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