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みんなの歌からひとりのみんなの歌

春の苑 紅にほふ 桃の花 したでる道に 出で立つ乙女
万葉集
大伴家持

 万葉集では、大友家持が好きだというのはこっぱはずかしい感じがしていた。ちょこっと、かじっているだけだし。

 万葉集はまだ、社会が初々しいころの初めての歌集で古代からの民謡、防人、天皇、いろんな立場の人々の歌が集められている。生活の中に歌がある。そして、なにかしらの祈り、思いをあらわしてように思う。
 

 その中でいろんな人と惚れたはれたとか、なんかあってつらいとかの歌を残して、個人がある家持の歌はほっとする。細々とくよくよしている小さい自分とつながっている。多くの人々と少しはつながっている自分が見えるのだ。
 万葉集は彼が和歌はみんなの文化だ。そう決意して彼の体を通してまとめた。だから、それを集め、新しく自己をあらわす表現にした彼の歌を好きなるのはあたり前だ。と、今は思っている。

 日がさした美しい桃の花の下、てらされたように立つ少女。

 これから始まる人生。ああ、すべてのものが萌え育っていく春が始まる。人間を通して自然を感じるよろこびがある。


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