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スライド1枚で完結?!納得感のある事業計画書が持っている要素とは?

ぼくは会社の「事業計画書」や、IPOの際にリリースされる「成長可能性に関する説明資料」を読むのが好きです。

この手の資料を作るのも好きで仕事でも試行錯誤しながら度々作成してきました。

最近は開示資料でも、洗練された資料が増えてきている印象がありますが、一方で、やってることは良さそうなのに、これだと全然伝わらない、、、とか、この情報が欲しいのにないな、、、と思うことも多々あります。余計なお世話ですが。

そこで今回の記事では納得感のある事業計画が持つべき要素を紹介します。

ピンポイントで事業計画書を作成される方はもちろん、IR資料を作成される方や、そもそも資料の論理構成の仕方に悩んでいる方に何かヒントになればうれしいです。


納得感のある事業計画書には共通点がある?

そもそも事業計画書とは、一般的に、会社の経営者が、投資家や金融機関等に向けて、出資やサポートを依頼するための資料として使われます。ある意味、会社自体の営業資料的なものです。

そして、他の資料と同様、目的は「読んだ/プレゼンを受けた人の心を動かし、期待する行動を促すこと」です。

事業計画書の場合、投資家や金融機関が相手であれば、出資やその他のサポートをしてもらうように行動してもらう(例えば、社内を説得して稟議を回し、お金を振り込んでもらう)ことだったり、社内向けに一部使う場合であれば、モチベーションや帰属意識を高くすることを期待して使います。

では、どういう事業計画書が人の心を動かすのでしょうか??

ポイントは2つ。「納得感」と「高揚感」だと思います。

「人の心を動かす」事業計画書のポイント
・納得感(なるほど!たしかに!そうかも!)
・高揚感(面白そう!すごそう!ワクワク)

「高揚感」は、ワクワクするような要素です。「高揚感」は、人を動かすうえでめちゃくちゃ大事です。

ただ、資料の構成も影響しますが、話し手の人柄や話し方、ホットな事業領域やわかりやすい実績などによっても大きく影響を受けそうです。

一方、「納得感」について、良い事業計画書には汎用性のある共通点があると思ったので、今回の記事では「納得感」に焦点を当てて説明します。


納得感のある事業計画の持つ8つの要素

”納得感”のある事業計画に必要な要素は以下の8つです。
スライドを作り始める前に要点をこの1枚のスライドに整理すると頭の中が整理されます。

どれも当たり前と言えば当たり前なので説明は不要かもしれませんが、簡単に補足します。

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❶ 市場の課題

基本的に、スタートアップや新規事業は、誰かの強烈な課題を解決してくれるものや、代替手段から得られる以上の価値を提供してくれるものが前提となります。

新規事業でなかったとしても、中長期的に会社が成長していくためには、世の中に与える付加価値を増やすか、その対象を広げていく必要があります。

今(もしくは少し先の未来)の市場がどうなっていて、そこにいるプレーヤーがどういった課題を抱えているか。

なぜ、5年前でも5年後でもなく、今なのか。

事業をしている自分たちにとっては当たり前でも、読み手と認識をすり合わせる意味で、まずはその整理がないと、「なんでその事業をやるんだろう?」という疑問がずっと頭の中に残ってしまいます。


解決策/ビジネスモデル

どういった方法で❶の課題を解決するのかという話で、具体的には、ビジネスモデルや実際のプロダクト/サービスの話になります。


競合/代替手段

どんな新しいサービスであれ、比較対象となる別のサービス等が存在するものです。

それらの比較対象に関しての認識がないと、自社プロダクト/サービスの優位性や価値がわかりにくくなってしまいます。

もちろん、競合も見る可能性があるような資料の場合は、具体的な話を載せるデメリットも大きいですが、❹と絡めて業界でのユニークなポイント程度はわかると良いと思います。

ちなみに、「競合はいない」というのは、響きが良さそうですが、市場自体の魅力度が少ないか、市場をきちんと分析できていない、もしくは本当はいるんだけど言いたくないように受け取られてしまうので、ポジティブには受け取られないようです。


❹ プロダクト/サービスの競合優位性

基本的に、競合優位性は他の選択肢との”比較”で理解されます。

提供するプロダクト/サービスが、他の選択肢やこれまでの方法と比較して、より多くの付加価値を提供しているか。なぜそれが実現できるのか?

ビジネスモデルに特徴があれば、なぜ他社と異なるビジネスモデルが実現できるのかがわかるとぐっと納得感が深まります。


市場規模

市場規模は、TAM、SAM、SOMに分けるのが一般的で、最近は上場企業のIR資料でも見るようになりました。市場規模は、大きいければ大きい方がいい気がしますが、そこに論理がないと意味のない数字になってしまいます。

TAMでは、大きなトレンドとしてマーケット自体が成長していることや、自社の成長に対してマーケットがボトルネックにならない程度に十二分に大きいこと

SOMでは、現在のターゲットとしての顧客セグメントの規模も十分に大きく、その中のシェアを一定程度取ることが現実的にイメージできることが大事かと思います。


❻ 成長戦略

伸びている市場でこういったビジネスモデルを展開します!でもいいんですが、さらに中長期的にはこんな展開も考えていて、成長にレバがかかります的な話がこの成長戦略です。

もちろん競合も見えるような開示資料でわざわざ手のうちを明かすようなことをする必要はありませんし、まだ創業間もないスタートアップなどでは、あまり先のことを言いすぎても非現実的になりかねません。

したがって、読み手にもよりますが、今後3~4年後までにしたいことが伝わればいいのかなと思います。

例えば、売上高が社数と単価にわけられるのであれば、社数は営業体制やパートナー・アライアンス戦略、ターゲットとしての顧客セグメントの拡張など、単価は提供価値の向上やアップセル、クロスセルなどの戦略を説明しているケースをよく見ます。


チーム

投資家が投資をするときには、結局最後は「人」を信頼できるかに尽きます。どんなに良さそうな事業であってもマネジメントが信頼できなければ投資はされません。

当然、スライドとしての資料だけで測られるものではないですが、どういう「マネジメントチーム」でやっているのかは事業の成否を左右する重要な要素です。


ビジョン/ミッション

経営者の「思い」に当たる部分で、これも「Why」を説明します。


説得力が増す「裏付け」を添える

次に、ここまでの「主張」に対して、「裏付け」として第三者からの評価や、その結果としての定量的な指標(KPI)・財務数値などを示すことで、「主張」に説得力が増します

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会社のフェーズによって、どこまでの「裏付け」ができるかは異なりますが、良いトラクションがある会社はまずそれを示すことで相手を惹きつけることができます。

例えば、昨年末上場したYappliは、資料の冒頭に投資家を惹きつける数字を示しています。

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結局、納得感は「5W1H+裏付け」からくる

なぜこれらの要素が大事かというと、理由はシンプルです。

自分たちはこういう事業をしていますというのを、
「誰が」「なぜ」「いつ(なぜ今)」「どこで(どの市場で)」「何を」「どうやって」いるのかをに合わせて説明していると自然とこういった要素が必要になるからです。

事業計画/成長性資料

話し手の方々は通常自分たちの事業や業界のことを常に考えているので、当たり前すぎて、敢えて説明する必要がないように思ってしまう内容もあります。

ただ、そういった内容も、Appendixに入れとくと、読み手の前提知識を選ばない納得感のある資料が作れます。


この記事でご紹介した要素は当たり前と言えば当たり前ですが、実際にこれらの要素が足りないがゆえに納得感が持てない資料が多く見られます。

この手の資料を作る方は、是非一度読者の立場で見返し、必要な要素がちゃんと入っているかのチェックに役立てていただけると大変嬉しいです。

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今回の記事は以上です。このnoteでは、ビジネスモデル(SaaSなど)の分析記事や、企業分析等を定期的に上げているので、もしよかったらフォローをお願いします<(_ _)>

【参考記事】

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