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BANANA FISH 深掘りー後編

4.多面的視点

本当の仲間
この作品に触れた時、アッシュの圧倒的なカリスマ性やリーダーシップに少し『東京卍リベンジャーズのマイキー』を思い出した。彼もまた卓越したカリスマ性や絶対的強さを誇るが、心情は孤独で闇を持っている。
トップであるが故の重圧、責任、孤独。だからこそ”素”を見せれる相手は本当に貴重で、一緒にいるだけで心が穏やかになれるのは今まで出会った事の無いタイプだったのだろう。
アッシュにとってショーターと英二の存在が、マイキーにとって「ドラケンとタケミチにあたるのかな」と思いを馳せた。マイキーはこれからどこに向かうかはわからないが、幸せになってほしいと願わずにはいられない。


アッシュと英二の強い絆
2人があそこまで全てを越えた関係性になれた理由を熟考している時に、『愛の不時着』を観た時に感じた2人の強固な絆に近いものを汲み取った。
恋愛とかそういうものではなく、それ以上の『お互いが命をかけてでも守りたい、自分の命よりも大切、そういった何度も文字通り”命懸け”を経験している点である。
現実世界では、ギャングとか北朝鮮とか命の危機を感じながら過ごしてるわけでは無い環境で、相手とそこまで深い関係になれる事は決して容易ではないけれど、そういう人に出会う事ができたら、創っていく事ができれば幸運だろうなと思った。


◆光の庭
19巻の番外編に掲載されている7年後の話。
これを読む事ができて本当に良かった。
伏線が回収されていたり、様々な出来事が繋がっていて納得できた部分やそれでもやっぱり複雑で、胸を締め付けられるような感情にもなったが、英二と共に気持ちの整理や少し自分の中で消化できた気がした。

その中でこの曲の一部分の歌詞を思い出したんだ。

It's been a long day without you, my freind.
And I'll tell you all about it when I see you again.

First you both go out your way.
And the vibe is feeling strong.
And what's small turn to a friendship.
A freindship turn to a bond.
And that bond will never be broken.
The love will never get lost. 

メロディが持つ儚さと歌詞が合わさって涙無しには聞けない曲の一つになってしまった。どうしてもアッシュと英二の重なった話に聞こえてしまう。
特にラップのこの部分は本当に語りかけているようにリアルで共鳴した。


5.秀逸な表現

私がこの作品の中で特に『素敵な表現だな、美しいな』と思ったセリフがある。

◇アッシュの本名『アスラン・ジェイド・カーレンリース』の名前の由来

「古代ヘブライの祈りの言葉で”暁”って意味だそうだ」
「俺は夜明けに生まれたから」
ミドルネームの『J』は『Jade』翡翠

17話

それを受けて英二は、
「お母さんは一生懸命その名前を考えたんだよ」
「夜明けに生まれた君の幸せを願ってさ」
「君の人生が夜明けの翡翠みたいに素晴らしいものであってほしいって」「そういう人が君を愛してないなんてことありえないよ」


◇『キリマンジャロの雪』

キリマンジャロの高さ19,710フィートの雪に覆われた山で西側の頂はマサイ語で”神の家”と呼ばれている。この西側の頂上近く干からびて凍りついた1頭のヒョウの死体が横たわっている。こんな所までヒョウが何を求めてやってきたのか誰も説明したものはいない。「キリマンジャロの雪」という小説に出てくる一説さ。

13話

「俺は自分の死を思う時、このヒョウについて考える。
ヤツはなぜ何のためにそんな高地へとやってきたのか。
獲物を追い、さまよう内に戻ることのできない場所へ迷い込んでしまったのか。
それとも何かを求め憑かれたように高みへと登り詰め力尽きて倒れたのか・・・ヤツの死体はどんなだったろう。戻ろうとしていたのか?
それとも尚、高みへと登ろうとしていたのか。
いずれにせよヤツはもう二度と戻れないことを知っていたに違いない」


それを受けて英二は、

『人間は運命を変えることができる。
ヒョウにない知恵を持って
そして君はヒョウじゃない
そうだろ?』

西の山頂:マサイ語で”ヌガイエ・ヌガイ”


6.天才

『BANANA FISHのアッシュ』や
『Good Will Huntingのウィル』
『Suitsのマイク』
達みたいに賢く、”天才”の主人公に触れた時、自分の中でも大きく刺激を受けた。天才の特徴として記憶力の良さや、知識の探求に終わりは無く、莫大な量の本を読んでいる点が代表的である。
その証拠にアッシュが図書館で大量の本を読んでおり、その姿は本当にカッコよく、それでいて美しく洗練されている印象だった。
ただこの場面は、トップであり天才(持つ者の苦しみ)であるが故の孤独を英二が感じ取り、何があっても彼を信じようと決めた重要なシーンがうまく表現されている。

壮絶な孤独-24話

NYに行く機会があれば必ず立ち寄る一つの場所になった。この作品を通して読書欲が間違いなく高まったし、そこから派生して『ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス』を見始めた(笑)

https://youtu.be/CpnBQrD_U68


まずは、近場の図書館にでも行ってみようか。


最後に

『BANANA FISH』は迂闊に人に薦められる作品ではないが、各々のタイミングで1度は触れてほしいとやっぱり思ってしまう作品だ。
辛い以上に得られるものが大きく、人生観が大きく変わる可能性に秘めており、十分その価値に値する。時間を作って、是非この作品を通して様々な事柄に思索を深めてみてはどうだろうか。


現に私は衝撃を受けすぎて本当に1週間以上頭から離れず、なんとか自分の気持ちを昇華させたくてここに書かずにはいられなくなった一人だからだ。
必死に汲み取ろうと深掘りをしていく中で、想像以上に細かい伏線や、知れば知るほど自分の知らない事ばかりで、まるで”壮大すぎる知的な旅”をした気がするんだ。

このような傑出した作品に出会ってしまうと、本当に膨大な情報量と知識量、そしてそれをうまく紡ぎ合わせる独創性、才気を兼ね備えている作者の吉田先生に感服すると同時に私自身少し救われた感覚も併せ持つ事ができた。
私の人生を振り返った時に、なかなか点と点が繋がらずにフラストレーションを感じたり、「これが何の意味になるのだろうか、これをやっていていいのだろうか」と思う事も多かったが、やはり人生に無駄な事は無く、一つ一つの作品や人との出会いがこのように人生を豊かに彩ってくれ、人間的に深みが出るようになるのだろう。そしていつかきっと繋がる時がくるんだと信じる事ができるようになった。
『アルケミスト』のスプーンの油の例えでもあったように、
世界の全ての素晴らしさを味わいながら、しっかりスプーンの油(目的)のことを忘れないでいて、これからも大いに寄り道をしながらまだまだ出会っていない珠玉の作品に胸をときめかせながら人生を歩んでいこうと思う。

The work was a game changer.



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