なのはな

映画と舞台と読書

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最近の記事

「二十一時、宝来館」

初のオメガ東京 初の竹田モモコさん作品。 どこか古びたホテルの使われていない喫煙室に集まる3人の女たち。喫煙室と女たちが持つ侘しさがどこかリンクする。灰皿は女たちを見守り続ける。 同窓会に人生のピークを持ってくる女、過去の男を引きずる女、愛を確かめ合うこともない相手との結婚を選んだ女。 最高に女の物語だった

    • 七人の墓友

      ラッパ屋第49回公演『七人の墓友』を観劇した。 すっごく面白い!!!まず、とても10年前に書かれたものとはおもえない今時さ。演者もクリエイティブも客層も中高年の方々なのだけど、私でも大笑いに最後は涙。 映像が思い浮かぶようなそんな本だった

      • 舞台『ウーマン・イン・ブラック』

        観た。 コロナが明けたことを自覚させられる客席動線が取り入られた場面の数々。 最後のセリフまで私たちをゾッとさせ、視覚ではなく聴覚で怖がらせたのは舞台ならではだなと思った。 向井理さん、顔が小さすぎる

        • 「未来少年コナン」

          宮尾俊太郎、まじか!! もはやダンサーでなく普通にセリフを喋る俳優だった。 お金を恐れない場転の数々。今、未来少年コナンを上演する意味は作品を観てわかった。2年前に劇団チョコレートケーキの「生き残った子孫たちへ 戦争六篇」が芸劇で上演していたことを考えれば、芸劇が共催に入ってるのも納得。 身体表現とダンスの狭間を、グラデーションをもって行き来するインバル・ピントの演出と振り付け。非常にインバルピントしてて良かった。特に、物を奪い合うのにタンゴしてしまう宮尾俊太郎と門脇麦のシー

        「二十一時、宝来館」

          舞台「千と千尋の神隠し」

          待望の再演とはまさにこのこと! 初演は環奈ちゃんで観たので、どうしても今回は萌音ちゃんで観たくて観劇。 もうもはや何が素晴らしかった、どれが素晴らしかったなんて言うまでもなくただただ至福の時間だった。 ただ…今回演出変わった? カオナシの演出は初演の方がよかったなぁと思うなど。ダンサブルなカオナシをもう一度観たい

          舞台「千と千尋の神隠し」

          COME FROM AWAY

          ずっと、ずっと生で観たかった!!! 派手な美術や照明に頼らずとも、本当に練り込まれた作品。 日本ミュージカル界のアベンジャーズとも言える豪華キャストによる最高のパフォーマンス 。「思わず立ち上がっちゃう」スタンディングオベーションをしたのは久しぶりだ。 最高だった!

          COME FROM AWAY

          「WITHOUT YOU」

          初めてIMMシアターに行ってきて、観劇したのは1人ミュージカル「WITHOUT YOU」 大ヒットミュージカル『RENT』でマーク役を務めたアンソニー・ラップによる自伝的ミュージカル。 てっきり、「WITHOUT YOU」が指すのは彼の人生を変えたジョナサン・ラーソンかと思いきや、それだけではない。彼の人生におけるWITHOUT YOUは、彼を支えた母親も指していた。亡き母親に向けて愛を叫ぶ歌は、思わず胸を打たれた。 「WITHOUT YOU」は、彼の母にも向けられたダブ

          「WITHOUT YOU」

          テラヤマキャバレー

          ※この記事は、劇中の台詞を一部引用しています。ネタバレ注意。 舞台は、寺山修司の死の前夜。 彼の仲間が集まるキャバレーでリハーサルを始めようとしたところに死神が迎えにくる。 死神を感動させることを条件にわずかな猶予を得た寺山は、過去へ・未来へ飛び回る。 演劇への愛に満ちた作品だった。 彼の創造に最大限のリスペクトを込め、寺山が死と向き合うさまが演劇と向き合うさまとリンクした。 近松門左衛門が存在する過去に行って感銘を受け、私たちが生きる現代(未来)を訪れ絶望を覚えた寺山。

          テラヤマキャバレー

          ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険」

          とんでもなかった。 とんでもないものを観てしまった。 これは、帝国劇場で上演すべきグランドミュージカルだ。 オリジナル作品で、大掛かりで、日本的な作品。これを上演までこぎつけたクリエイティブおよびキャストに拍手喝采である。そして積極的に火を使った演出にも感嘆した。そりゃ調整に時間がいるわよ…。 スピードワゴンがストーリーテラーの役割を果たし、ラップで物語るさまは「ハミルトン」みを感じる。 あとなんてったって、宮野真守。前列は彼のファンで埋め尽くされ、劇場にいた誰の期待をも

          ミュージカル「ジョジョの奇妙な冒険」

          「オデッサ」

          観劇!!! 3人の登場人物に字幕。字幕も4人の出演者なんじゃないかってくらい趣向が凝らされていた。存在感が抜群で、1時間45分の3人芝居になくてはならなかった。 そして役者御三方、ハイスペックすぎる。まさか柿澤さんも英語が喋れたなんて。 ミステリーを使った人間ドラマ、言い得て妙です。

          「オデッサ」

          人生で一番感動した邦題『あのこと』

          “2023年映画館はじめ“にして、もう2023年ベストムービーが出てしまったような気分。 『あのこと』 中絶が違法だった1960年代のフランスで、望まない妊娠をしてしまった大学生のアンヌが、自らの願う未来を叶えるために、独りで葛藤する物語だ。ヴェネチア国際映画祭で最高賞を受賞した本作を鑑賞した。 まず、度肝を抜かれたのは音の使い方だ。BGMは最小限にしており、劇的な演出もなく、物語は淡々と進んでいく。 この映画が静かであることの意味が、まさか、アンヌが流産した瞬間ートイ

          人生で一番感動した邦題『あのこと』

          全女子救済物語『もっと超越したところへ。』

          ※ゴリゴリにネタバレしていくので、鑑賞後に読んで共感していただけたら嬉しいです※ 根本宗子さん脚本・山岸聖太さん監督作『もっと超越したところへ。』を観てきた。 「お米」を共通点に、前田敦子、趣里、伊藤万理華、黒川芽衣それぞれの物語が始まる。 一度関係を持っただけで突如男を飼うことになってしまった者があれば、ゲイの彼とひとつ屋根の下で共同生活をする者も。一見普通のギャル男と付き合っている者もいて、しまいにはプライドの塊のような常連男をお店で相手する者も… とにかく、女たち

          全女子救済物語『もっと超越したところへ。』

          彼女の視点と僕の視点-『僕の狂ったフェミ彼女』を読んで

          今年の初め、ある本がツイッターで話題になっていた。 表紙の上部には『僕の狂ったフェミ彼女』。韓国で大ヒットした本で、映画化とドラマ化が決まった作品らしい。日本では今年3月に初版が発売されたとのことだから、私がツイッターで見つけたときはまだ発売されてすぐのことだったのだろう。タイトルを見た瞬間「私のことじゃん」と直感し、なんとも興味をそそられるネーミングに興奮したのを覚えている。それから半年。ようやく購入し、即読了した。 ずっと忘れられなかった元カノと4年ぶりの再会、その「彼

          彼女の視点と僕の視点-『僕の狂ったフェミ彼女』を読んで

          フェミニズムの視点をもつこと

          フェミニストとして書き、訳し、出版する 登壇者 小澤身和子さん(翻訳家) 松田青子さん(作家、翻訳家) 松尾亜紀子さん(エトセトラブックス代表・編集者) フリアナ・ブリティカ・アルサテさん(CGS研究員・翻訳家) ※以下の内容は筆者個人の見解です。登壇者の発言に関しては、筆者自身のメモをまとめたものなので、正確な意図を汲み取れていない場合がございます。 3/12(土)、ICUジェンダー研究センター主催の、オンラインイベントに参加した。フェミニズムと本を書くこと、

          フェミニズムの視点をもつこと

          『すばらしき世界』というタイトルの映画を観て現代の残酷さを実感する皮肉

          「多様性を認める社会」なんてのは建前だ。この社会の前提は「不寛容」なのだ。 本作は、「寛容されない側」で生きてきた1人の男が、人の助けを借り足掻きながら、なんとか「寛容される側」にしがみつく物語である。 人生の大半を刑務所で過ごした男・三上が刑期満了で出所した。4歳から児童養護施設で育ち、裏社会で生き、人を殺した。少年院も合わせ、人生の半分以上を刑務所で過ごしていた。 この社会で生き難いほどの素直さゆえに突如沸点に達し暴発する狂気。普段は温和で優しいから余計、この相対す

          『すばらしき世界』というタイトルの映画を観て現代の残酷さを実感する皮肉

          配信と有客上演の両立の難しさよ『ジャージー・ボーイズ・イン・コンサート』

          「観劇って嗜むものじゃん、そうだわ忘れてた」社会人になってから何かとガツガツしていた私は、こんな当たり前の認識をすっかり何処かへ放り投げてしまっていた。この認識を思い出させてくれたのは、紛れもなく帝国劇場に訪れていたレディたちである。色鮮やかなワンピースで身を包み、開演前の優雅な時間を過ごす彼女たちと、「勉強のために舞台を見続けなければならない」と身のこなしも気にせず(Tシャツジーパン)(おい)、血眼になって劇場に訪れた瑞穂らしい自分とのあまりの違いになんか泣いてしまった。

          配信と有客上演の両立の難しさよ『ジャージー・ボーイズ・イン・コンサート』