テラヤマキャバレー

※この記事は、劇中の台詞を一部引用しています。ネタバレ注意。

舞台は、寺山修司の死の前夜。
彼の仲間が集まるキャバレーでリハーサルを始めようとしたところに死神が迎えにくる。
死神を感動させることを条件にわずかな猶予を得た寺山は、過去へ・未来へ飛び回る。

演劇への愛に満ちた作品だった。
彼の創造に最大限のリスペクトを込め、寺山が死と向き合うさまが演劇と向き合うさまとリンクした。
近松門左衛門が存在する過去に行って感銘を受け、私たちが生きる現代(未来)を訪れ絶望を覚えた寺山。創造することの孤独を引き受けひたすらに心と向き合ってきた彼は、孤独を恐れスマホに没頭し自分の言葉など微塵も残っていない(ように思える)現代に言葉も出ない。

それでも彼は、世界を劇場に例え創造する。
人生は借り物競争だから、借り物を全て返す前に。
「俺の墓場は言葉だ」というセリフの通り、寺山修司は最後まで言葉を紡ぎ続けたのだった。
寺山修司を題材に、演劇についての演劇を描ききった池田亮が見事。東京公演は29日まで。

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