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目的別のもあることはあります。

夏は午前中涼しいうちにいろいろ済ませて
おきなさい、とよく言われたものです。
夏休みの宿題とか(笑)

でも、涼しさが気持ちいいのでのんびりしてしまって
はっと気づくと暑い時間になってるってのも
ありがちでした。

夏の朝の心地よさは格別。
仏さまのお勤めは午前中に行うものですが、
この時期はことさらに気持ちの良いものです。


お経は対症療法的に使うもんじゃない、と昨日は書きましたけども。

実は全然ないわけじゃないです。

雨乞いには孔雀経。
熱病が猖獗している時には却温黄神咒経。
痔や腫れ物、腫瘍を治すには療痔病経。
家や土地を鎮め浄化するには安宅神咒経。

そして親孝行の功徳を語る父母恩重経、
お産や月経で血を流す女性は地獄に落ちること(!)を教える血盆経、
お盆の由来と親孝行を薦める盂蘭盆経、
錫杖の功徳を説く錫杖経もありますし、
即身貧転福徳円満宇賀神将菩薩白蛇示現三日成就経は
今貧乏でも三日でお金持ちになれるというものです。

これらの用途明確なお経は、ほとんどがいわゆる「偽経」と
呼ばれるもの。

偽経とは、
サンスクリット語やパーリ語の原典から
訳出されたのではなく
仏教の伝播や定着の過程で
西域や中国や日本においてそれぞれ地域の
習俗を折り込むなどして作られた経典の体裁をしたもの。

布教のためにはその地その地の習慣や習俗に合わせて
教えを説くことが必要です。

このため、中国では儒教や道教の内容を、
日本では神道や修験に関わる内容を織り込んだお経が
作られました。

布教の時は信じてもらうためのテクニックが必要です。
その土地その土地に合わせたローカライズ、
人々のニーズに合わせた現世利益の内容を示すことは
いわゆるマーケティングの一環というもの。

お釈迦さまは占いや呪いなどに関わることを
退けていましたが、当時も毒蛇よけのマントラを
用いることは許可していました。

大乗仏教は衆生済度を最も重視するので
方便の用い方もより洗練されるようになったといえます。

それぞれの宗派の根本経典とされる大部のお経は
その宗派の教理の背景となる思想をその中に含んでいます。

ですので、常に読誦することでその教えの理解を
深めることを意図しています。

根本経典を総論としたら、
目的別のいろんなお経は各論。

学校のカリキュラムでも、まず原論や総論を学んでから
各論や個別の内容に進むもの。

仏教の教えの基礎や、宗派の教えの基本の上に
具体的問題に対応するものを積み上げていくのが
順当というものでしょう。

お経は仏教の経典なので、仏教の文脈の中で用いることが
その意味や力を最も強く発揮します。

コロナ禍の中、いろんなところで疾病消除や流行収束を願って
法会が行われました。
本山で宗派を挙げて行われるものだけではなく、
それぞれのお寺でもいろんなやり方でご祈願されたのですが、
真言宗の僧侶は摩怛哩神法というものを用いる方も
多かったです。
私もこのお次第を頂きましたよ。
却温黄神咒経はこの法を修法する時に用いられます。

目的別の修法は、確かに効果が鋭く出るのですが
やはり難易度が高い印象があります。

仏さまの力が現れるには
行者の功徳力と、如来の加持力と、法界の力が
いい感じにバチッと合うことが必要、というのも
何回か書きましたけど、
こういう場合、行者自身が練ってきた功徳力が
かなり問われる感じがします。

なので、個別案件に対応するというのは
中〜上級者向け。

いきなり高難易度のものに挑むよりは、
いつものことをいつもの通りに行う方が確実。

そして、「いつものお経」の方が実は
功徳が広大だったりしますよ。

常用経典をお薦めする理由は
そういうところにもあります。


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