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今日の名言は、「美とは、芸術家が世界の混沌から魂を傷だらけにして作り出す素晴らしいなにか、常人がみたこともないなにかなんだ。」

パンケーキ大好きなかおるんです。いつもエンピツカフェの決まった席で本を読んでいます。
悩みごとがあるときに、ふっと何か大切なものを気づかせてくれる先人の名言を紹介しますね。

イギリスの人気作家Somerset Maugham(サマセット・モーム)さんが、画家Paul Gauguin(ポール・ゴーギャン)さんに着想を得て書いた小説「月と六ペンス」って知ってますか?

株式仲買人としてよく働き、よき家庭人として振る舞っていた主人公のストリックランドさんが、40歳で絵を描くためロンドンに妻子を置いて、パリへと向かうところから話は始まります。
妻は、きっと若い女にたぶらかされたのだと思い込むが、そうではなかった。彼はたったひとりで金も持たずに画家への道を志す。
どんなに困窮しても後悔したりしない。他人の評価にも興味がなく、絵を売ることもない。
自分の心に従い、みえるものだけを描き続ける。

40歳にもなった男が、家庭を捨て画家になることを選ぶという、一般社会では理解されないようなストリックランドさんの行動について、筆者はこう表現する。

良心とは、個を全体に結びつける太い鎖だ。
そして人間は、社会の利益を生み出す道具だ。
個人は全体に仕えるのだと、自分で自分にいいきかせ、主人である社会の奴隷となる。
人間は、社会を王座に座らせる。
あたかも自分の肩を打つ王笏にこびへつらう廷臣のように、人は自分に良心があることを誇る。
そして、社会の支配を無視する人間を激しく非難する。
社会の一員であることを自覚する人間は、規範に縛られない人間が相手では、どうしようもないことを知っている。
ストリックランドのような、自分の振る舞いがどれほど非難されようと気にしない人間を目の当たりにしたとき、わたしは息をのんで後ずさるしかなかった。
ちょうど、人の皮をかぶった化け物でもみたかのように。

そしてストリックランドさんの魂が望んだ通り、大海に浮かぶ孤島の奥まった谷間で、風変りな木々に囲まれ静寂に包まれながら暮らすこととなる。
ついにみえるものだけを描き続けながら暮らすことができる理想の世界にたどり着いたのです。
そしてハンセン病と戦いながら、人間の魂を根底からゆさぶる壮麗な大壁画を完成させる、というお話。

人はなりたい姿になれるわけではなく、なるべき姿になるのだ。
イギリスやフランスにいたときのストリックランドはさしずめ丸い穴に打ち込まれた四角い釘だった。
だがここでは、穴に形がない。だから合わない釘はない。

今日紹介する名言は、
まだ世の中に評価されていないストリックランドさんの才能にいち早く気が付いたオランダ人画家のディルク・ストルーヴェさんが、最愛の妻に語った芸術に関する印象的なこの一言。

美とは、芸術家が世界の混沌から魂を傷だらけにして作り出す素晴らしいなにか、常人がみたこともないなにかなんだ。
それもそうして生み出された美は万人にわかるものじゃない。
美を理解するには、芸術家と同じように魂を傷つけ、世界の混沌をみつめなくてはならない。
たとえるなら、美とは芸術家が鑑賞者たちに聴かせる歌のようなものだ。
その歌を心で聴くには、知識と感受性と想像力がなくてはならない。

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