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なぜフレディは、多くの人の心を癒したのか

あなたの本名がフレディ・マーキュリーではなく、ファルーク・バルサラだと知ったのは、映画「ボヘミアン・ラプソディ」がきっかけでした。

あなたは死んでなお、多くの人に愛され、あなたの全盛期を知らない僕みたいな若者ですら熱狂する映画の主人公として、伝説のロックシンガーとして、今も語り継がれています。

なぜ「ボヘミアン・ラプソディ」が、ここまで年代を超えて多くの人を胸打ったのか。それはあなたが一重に、誰よりも孤独で、素の自分が嫌いだったからではないでしょうか。

自分の歯の形や出生を嫌い、名前すらも変え、全くの別人に、世間から見ればスーパースターになったあなたは、その心の内側でファルークに戻ってしまうことをきっと恐れていたのでしょう。

フレディでは無くなることから目を背けようと、時には酒や薬に溺れたパーティを開き、また時には仕事をぎゅうぎゅうに詰め込んで、邪魔な思考が入り込まないようにする。全ては、フレディで居続けるために。有名になればなるほど、広がる心の隙間を埋めようと、出口の見えないトンネルをさまよい続けていたのでしょう。

ツギハギのように心の隙間を埋め続けるうちに、とうとうその行為に疲れ、自分をフレディとして受け入れてくれていた家族のようなメンバーたちを、一度はないがしろにしてしまうほどに。それほど、フレディとして自分を保つのは、一般人には想像もつかないプレッシャーだったのでしょう。

しかし、あなたの見せたその孤独は、結果として、映画を通じて多くの人の心を癒すことになったと思います。人は、程度の違いはあれど、素の自分のどこかに嫌いな部分があって、それを埋めたり、隠したりしようとします。

もっと理想的な誰かになりたいという欲望は、誰しもが持っているものです。もう少し鼻が高かったら、もう少し給料が良かったら、もう少しビジネスセンスが良かったら。僕たちは常に誰かと比較して、その度にあなたと同じように、孤独を感じています。

あなたの魅力は、圧倒的なスターでありながら、裏側には生々しい程の人間臭さを抱えていたところだと思います。まるで絵柄は派手でも、裏地は他と同じカードであるトランプのキングのように。

変わりたいと願う気持ちを、僕は悪いものだとは思いません。一人一人のその気持ちは、集まれば結果的に世の中を良くするものだと思うからです。Queenのメンバーが、ライブに来ている人たちを勇気付けるように。あなたたちの曲を聞いた人が、また「もっと頑張ろう」と思い、さらに世の中を良くしてく。そんな循環を生み出していると思います。

Don't stop me now 'Cause I'm having a good time
(今は俺を止めてくれるな、こんなに楽しんでいるんだから)
Don't stop me now Yes I'm havin' a good time
(今は俺を止めてくれるな、そうさこんなに楽しんでいる)
I don't want to stop at all
(とめられるのは絶対に嫌だよ)

あなたの作ったこの曲、「Dont stop me now」は、まさにあなたの理想の人生を体現したかのような曲だと思います。映画のあるシーンでこの曲がかかった時、言語化できない何かが脳を駆け巡り、目頭がジワリと温められ、気づけば涙を流していました。それは、あなたの人生の軌跡を、この曲に垣間見たからかもしれません。

最後のライブシーン、あなたがメンバーの方を振り向いた瞬間。そこに言葉なかったけれど、あなたが人生で一番輝いている瞬間に見えました。それこそ、夜空を駆け抜ける流れ星のように、誰よりも強い煌めきを放っていました。

きっと、あなたに長生きをして欲しいと願った人は大勢いたでしょう。もっとあなたの曲が聴きたいと、あなたが拳を振り上げ、叫んでいる姿が見たいと。僕も同じ時代に生きていたら、きっとそう思いました。

だけど、僕はあなたが光速で人生を駆け抜けられて幸せだったんじゃないかなと思うんです。フレディのまま、誰よりも早く突っ走って、ゴールテープを切ってしまって、良かったんだと。だってフレディで居続けることが、きっとあなたの一番の願いであり、大切なことだったと思うから。

誰の心にも、フレディは住んでいる。
孤独と理想の間で、みんな苦しみながらも、生き続けている。

だからあなたの曲は、きっと今でも老若男女の心に響き続け、「僕らはチャンピオンだ」と、いつまでも僕らを鼓舞し、時には癒し続けるのでしょう。

ありがとう、フレディ。また僕も明日から、頑張ろうと思うよ。


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