【本質】ひろゆきさんに流されない

ひろゆきさんは時として表現が極端だったり論理が破綻していたりするので、彼の発信を鵜呑みにしてはいけない、ということを覚えていただければ今日は目標達成なのだが、私がそう思った事例を1つ紹介したい。


ひろゆきさんがTwitterに投稿した下記内容について、YouTubeで議論がなされていた。

『親の知能は子供に遺伝します。
他人が自分の子供を呼ぶために、名前をつけるのですが、一般的に読めない名前をつける親は頭が良くない可能性が高いです。
よって、読めない名前の子供は遺伝により頭が悪い可能性が高いです。
と言う話をしてたら、また実例が増えました。』

私はこれを読んだとき、こう思った。
稚拙な主張だな。

まず、この主張には定義が曖昧な言葉が含まれており、主張が意味をなさない。
『知能』『読めない名前』『頭が悪い』
これらは具体的に何を指しているのか不明瞭であり、読み手には適切な意味がさっぱりわからない。
(以下、このようなひろゆき語には、皮肉を込めて『』を付ける。)

次に、主張の最後にある「読めない名前の子供は遺伝により頭が悪い可能性が高い」というのを示すのであれば、『読める名前』の集団と『読めない名前』の集団をランダム(無作為)に用意し、『頭が良い』のはどちらの集団であるかを調べる方が、主張を裏付けるのに適切であって、彼みたいに長ったらしく論理展開をするのは賢くない。(しかもその論理も破綻しており、これは次で説明する。)

さらに、百歩譲って上記2つに目を瞑ったとしても、彼の主張は論理が破綻している。
彼は、「親の知能は子供に遺伝する(可能性が高い)」「読めない名前をつける親は頭が良くない可能性が高い」を組み合わせて、「読めない名前の子供は遺伝により頭が悪い可能性が高い」と主張している。
ただ、一つ言いたい。

(可能性が高い)✕(可能性が高い)=(可能性が高い) とはならない。

どういうことか。(ここからは数学の話なので、苦手な方は読み飛ばしていただいても構わない。)

「AならばBである可能性が高い」「CならばAである可能性が高い」を組み合わせて、「CならばBである可能性が高い」とは必ずしも言えないのである。

なぜなのか。
例えば、「AならばB」である可能性を6割、「CならばA」である可能性を6割としたら、「CならばB」である可能性は、単純計算すると
0.6✕0.6=0.36
となり、半分を下回る。(本当はこんな簡単な話ではないのだが、)少なくともこれは可能性が高いとは言えないだろう。そもそも彼が、何と比較して高い・低いと言っているのかもわからないが。

話を戻すと、つまり「親の頭が悪い(A)ならば遺伝により子供の頭が悪い(B)可能性が高い」「子供が読めない名前である(C)ならば親は頭が良くない(A)可能性が高い」を組み合わせて「読めない名前の子供である(C)ならばその子は遺伝により頭が悪い(B)可能性が高い」
とは必ずしもならないのだ。

実際に、YouTubeを見ると、
「親の知能は子供に遺伝します。」というのは、とある研究結果を読み替えたものらしく、その研究では「親のIQが子供に"6割"遺伝することが示唆されている」らしい。
(細かく言えばこの研究の解釈についても議論が必要だが、今はひろゆきさんの論理破綻に焦点を当てているので、これ以上向ける矛先を増やすことは控える。)
つまり、親の知能は"6割"子供に遺伝する、と彼は言っている。

次に、「読めない名前をつける親は頭が良くない可能性が高い」と言うが、上で説明した数学を踏まえると、例えばここの可能性が6割の場合、彼の論理は破綻することになる。(0.6✕0.6=0.36であり、半分を超えないからだ。)
0.6✕0.8333…(5/6)=0.5(半分)
なので、ここの可能性が83.33…%を超えるのであれば、彼の論理が破綻するとは簡単には言いきれない(が、「読めない名前をつける親は頭が良くない」ことがそんな高確率であると示すデータがあるとは容易には考えづらい)。

細かいデータも無いのに、極端なことを言って不愉快な人を発生させるとは、彼は悲しい人である。

そしてまた、本人に直接言うのではなく、自分のフィールドでああだこうだ言う私も、しょうもないのであるが。


とにかく、むやみに有名人の意見を鵜呑みにするのはやめ、根拠に忠実に生きよう。

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