1日目 地下鉄のザジ

今日からできるだけ毎日、今まで見た何かしらの作品の感想を書いていこうと思う。

1日目はレーモン・クノーの「地下鉄のザジ」(小説のほう)。

この話は終盤までは、乱暴で粗野な主人公の女の子ザジと、その周りの大人たちが織り成す一風変わった物語といった感じで進んでいくのだが、ラスト数十ぺージからその様相が一変する。この「一変」というのが所謂「どんでん返し」とか「衝撃の展開」とかいう性質のものではなく、ただ純粋に全てが破壊されてメチャクチャになる凄まじいもの。この部分のカタルシスというか、爽快感のようなものが本当にすごくて、おれが今まで読んだ小説の中でもトップクラスに好きな小説だ。

この小説の凄い部分は、その魅力を一言で表現しきれないところだろう。

上に書いたようにおれがこの小説で最も好きな部分は、終盤からラストにかけてのすべてが破壊される部分だが、この小説はそれだけの小説ではない。それ以外の部分も普通に面白い。というより、個々の部分がしっかり面白いからこそ、ラストのカタストロフの爽快感がより際立つといえる。

それを成り立たせている力を表現力とかユーモアとか表すのだろうが、とにかく読んでいて飽きないし、引き込まれる。登場人物のキャラクターもかなり魅力的で、どんどん彼らが好きになっていく。そしてラストスパートで急にすべてがメチャメチャに破壊される。普通、今まで読んでいて好きになってきた世界を急に壊されたらいやな気持になりそうなものだが、それもまた、作者の表現力のなせる技なのか、むしろより深い没入感を伴って楽しめる。

この話は、優れたストーリーとか魅力的な登場人物とか奇抜なアイディアとか、そういうところに魅力の核があるわけではない。強いて言うなら小説全体が、その総合力が魅力的といえるだろう。

具体的な言葉でこの小説の魅力を伝えきれないのが歯がゆいが、もしも興味がわいた人がいたらぜひ読んでみてほしい、絶対に損はしないと思う。



ちなみに、映画版も見たがこっちはあんまりだった。再三書いているようにおれはラストの今までのすべてが破壊されるようなカタストロフの部分がかなり好きなので、前半部分からちょこちょこ超現実的な映像がちりばめられている映画版では少しラストの破壊力が弱いような気がする。


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