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体内時計と概日リズム

ヒトの睡眠と人の眠り

生物として見てみると、ヒトという種が必要とする睡眠時間はほぼ一定ですが、人々が必要とする睡眠時間にはそれぞれ個人差があります。

睡眠周期

睡眠には、レム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。

一晩の睡眠は、レム睡眠とノンレム睡眠が交互に現れることで成り立っていて、ノンレム睡眠に入ってからレム睡眠が終わるまでの周期を「睡眠単位」と呼びます。
ふたつの睡眠は、1時間半〜2時間程度の周期で交互に現れ、
「睡眠は90分周期でとると目覚めが良い」という説は、このことに由来しています。

このふたつの睡眠が繰り返される一晩の睡眠サイクル全体を「睡眠周期」といい、一晩のうちに繰り返されるふたつの睡眠の長さや頻度は、個人差やその日の体調によって変わってくるため、睡眠周期もその日その日で変化しています。

天文学者が発見した

睡眠周期と並んで生物の睡眠時間に大きな関係があるのが、概日リズム(サーカディアン・リズム)です。
概日リズムを発見したのは、18世紀フランスの天文学者、ジャン・ジャック・ドルドゥス・ド・メラン。
それまでの何世紀にも渡って、植物は太陽の光を浴びることによって葉を開いたり閉じたりすると考えられていましたが、ド・メランはその考えを根底から覆すことになります。

ミモザは葉を規則正しく開いたり閉じたりすることで知られていて、彼はその性質を利用した実験を行いました。

やり方:
日光が入らない真っ暗な棚の中に置いたミモザを、ときどき覗いてみる。

理屈で言うと、ミモザが日光に反応しているとすれば、暗闇に置かれたミモザはずっと葉を閉じているはず。観察を続けてみると、ミモザは暗闇の中でも昼には葉を開き、夜には葉を閉じていることが明らかに!

現在では、
地球上で生きる動物、植物のほぼすべては体内時計を持っており、
概日リズム(サーカディアン・リズム)を刻んでいる
ことがわかっています。
ヒトも例外ではなく、体内時計で概日リズムを刻み、睡眠をとっています。

視交叉上核と松果腺

脳のもっとも内側、視床下部という部位に、視交叉上核(しこうさじょうかく)と呼ばれる小さな器官があります。
視交叉上核は体内時計として働き、脳の持ち主が生まれてから死ぬまでの間、休むことなく時を刻み続けています。視交叉上核のすぐ近くに、松果腺(しょうかせん)と呼ばれる小さな部位があります。

視交叉上核は、一日の内のある時間になると、松果腺に睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌を促し、そのメラトニンの分泌によって、脳は眠気や疲労感を覚えて、覚醒から睡眠へ移行します。
毎日規則的に働くこのメカニズムが概日リズムの正体で、メラトニンが放出されて強い眠気を覚える時刻に限らず、日中も体内時計の働きによって、覚醒レベル(眠気の強弱)は緩やかに変化しています。

覚醒レベルの日内変動

概日リズムは、覚醒レベルの日内変動と捉えることも出来ます。
明け方から早朝にかけての時間帯は、覚醒レベルはかなり低い状態にあり、朝起きてしばらくは眠気が取れないのはこの理由によるもの。
起床から数時間で覚醒レベルは少しずつ上昇していき、午前11時頃までは活発に過ごすことが出来ます。
そして、また覚醒レベルが少しずつ低下し始め、午後3時頃には日中でもっとも停滞する時間帯を迎え、軽い昼寝や休憩を取るにはこの時間帯が最適です。
この午後の停滞は長くは続かず、覚醒レベルはその後すぐに上昇し始め、午後8時頃にピークを示した後、メラトニンが放出される真夜中の時間帯まで緩やかに下降。そして眠りに就くと、翌朝まで不活発な状態が続きます。
このような覚醒レベルの日内変動が、体内では毎日繰り返されています。

体内時計で概日リズムを刻むというメカニズムはヒトに共通でありながら、そのリズムはひとりひとり少しずつ異なります。その理由は、体内時計と遺伝子の間に大きな関係があるからと考えられています。


Point

  • 睡眠単位…ノンレム睡眠に入ってからレム睡眠が終わるまでの周期で約90分前後。

  • 睡眠周期…一晩の睡眠サイクル全体のこと。

  • 概日リズム(サーカディアン・リズム)…地球上の生物、植物のほぼすべてが持っていて、体内時計によって刻まれる。覚醒レベルの日内変動とも言える。

  • 視交叉上核が松果腺に睡眠を促すメラトニンの分泌を促すことで、脳は眠気や疲労感を覚える。

  • 体内時計で概日リズムを刻むというメカニズムはヒトに共通だが、そのリズムはひとりひとり異なる。

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