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不幸を比べ合ったらきりがないのだ。


「有川浩さんは女の人なのに男の人目線でものを書く人。
小説って女の人の感情の籠りすぎたものよりも
男の人主体の文字の方か淡々としていて読みやすいかも。」

私が初めて有川浩さんの『レインツリーの国』という本を読んで思った感想だ。

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こんにちは。なこと言います。
広告代理店に勤めていて、人の心に刺さる言葉が好きです。

私が最近読んで好きになった小説家の方の一人が有川浩さんで、『レインツリーの国』を読んだ私なりのレビューをまとめてみました。

ミステリーとかではなく、ヒューマン小説が好きな人にとってこの本は特に、身近な ”ことば” をテーマにした作品なのでとても共感や感情移入できるところが多いんじゃないかなあと思っています。

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以下、本文一部引用。

「自分に引け目や負い目のない人の言い分。こっちは堪えてるのに。」
「気にするしかない人に、そんなこと気にするなよというのはむごいです。」
「何らかの意味でコンプレックスのある人は、フラットになるのが難しい。」
「理想の人なんかいない。単に条件が違う人間がいっぱいいるだけ。」
「世間の善意は自信のなさそうな者を見抜いて寄ってくるのだ」

読んだ今の自分が好きな、特に刺さった言葉たち。


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タイトルにもなっている「レインツリーの国」というのは耳に障害を抱えた女の子が 唯一言葉で自分を表現するために記しているブログの名前のこと。

そして女の子が記すブログのとある本の書評に惹かれた男の人とお互いに惹かれ関係を築きつつも、お互いの弱み・脆さを曝け出しつつ言葉を通じてぶつかっていく話。


※wikipediaのあらすじ紹介ページも載せて起きます。笑

自分が好きな小説の感想を書いているウェブサイトを探していた男性が、共感する感想をブログで見つけ、そのサイトの管理人であり難聴を抱える女性と交流を重ねていく。彼は次第にその女性の文章に惹かれ、直接会ってみたいと思い始める。そして彼は実際に会うのだが、そこで彼はその女性は難聴者だったと知り、その障害を知らずに彼女を傷つけてしまうような発言をしてしまったことを大きく悔やむ。優しさを滲ませる彼は、その後もネット上という細い糸をたぐって彼女と交流を続ける。彼と彼女は、その後も関係性を深めていくが、その過程で、障害者と、それを取り巻く世界を描き、それでいて大人の恋を巧みに描く長編である。


耳が聞こえないから女の子にとってのコミュニケーションは言葉じゃなくてテキスト•文字だから表現がストレートで一つ一つが刺さってくる。

一部引用した上記のように、単刀直入な表現が多いから読んでいてキツイところもあるけど 読む人にとっても自分の抱える、人にはあまり言えないしんどさや辛さを認めてうまく扱うのを手伝ってくれる本だと感じた。



そしてこのnoteのタイトルにもある

「不幸を比べ合ったらきりがないのだ。」

という言葉が個人的にとても刺さって。
なんというか「自分は聴く人になろう」と、自分を肯定できるようになった気がするのだ。



自分にとっての不幸さっていうのは ”両親との関係”で、
実際社会人となった今となっては比較的良好な関係を築けているけれど特に小学生高学年〜高校生までの割と繊細な7〜8年間はずっとコンプレックスを感じていた。(自分が未熟だった部分と、親の更年期の時期が重なった結果と思うようにしている)


自分の思ったこと、発言、友達選び、存在や仕草一言一句を毎日面と向かって否定され続ける日が続いていたので自然と自分が価値のない人間だと思うようになっていた。


晴れて大学生になって今は関係も良好になったので過去の話ではあるが、自分自身に自信がもてないのはこの時期に受けた罵声や暴言をまだひきづっているからだと思っている。


…とまあつらつらと記したが結局、誰にとっても自分の不幸が一番の不幸であって私の今のエピソードも完全にその例だ。笑


私自身友人が家族との関係が悪いとか、彼氏とうまくいかないだとかの話を聞いた時に「そんなの幸せな悩みだよ〜私なんて。」と思うこともあるし、
他にも自分の周りで不幸マウントをとっている会話が存在することもある。


けれどこの小説を読んでまさに、不幸を比べ合う描写を客観的に見て
不幸さなんてその人の感受性によるし、絶対的な指標なんてないし、比べたところで仕方ないじゃんと冷静に今までの自分を反省するきっかけを作ることができた。


そして元々喋るのが得意でなく聞き役が多い自分は
厨二みたいな ”自分が一番不幸” マウントを心に抱えながらその人にとって深刻な悩みや不安を想像して寄り添える人間になりたいと思うようになった。(完全なエゴ笑)


また小説って読む人や同じ人でも読むタイミングによって感じることって違うから厨二だった自分を許してあげたいと思っているし、だからこそ面白くて私は好きなんだろうな〜と考えたりした。

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と書評というよりも自分の経験と絡めた感想ベースになってしまったけれど、この小説自体 言葉の一つ一つが繊細なので普段の生活で少し疲れてしまって休みたいな〜と思ってる時とかに読むと、涙を流して気分転換・スッキリできるんじゃないかなと思ったので是非おすすめしたいです。

※しっかり重たい内容なのですごい読んだ後に充足感があります。笑


最後まで読んでいただいてありがとうございました!




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