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【美術展】皇室のみやび 第3期(前期):近世の御所を飾った品々 1/4@皇居三の丸尚蔵館

君の名は「紫上(むらさきのうえ)」。
花柄の赤い襲(かさね)と思われる装束(しょうぞく)姿の真ん中の小さい女の子が、源氏物語に馴染みのない方にも名前くらいは知られているであろう「紫上」。

「源氏物語図屏風」伝 狩野永徳 桃山時代(16~17世紀)

光源氏が、恋焦がれる継母・藤壺に似た「紫上」を垣間見る。

「紫上」を垣間見る「光源氏(18歳)」

光源氏が紫上を垣間見た時、紫上は「山吹の襲」を着ていたのだが、この画では赤。なぜに赤?

山吹色。「源氏物語の色辞典」吉岡幸雄

光源氏、この気に入ってしまった幼女「紫上」を自邸に引き取ってしまう。現代なら、幼女誘拐!ともいえる所業。

「光源氏」の下に描かれている4人の人物の表情がいい。白装束の人はちょっととぼけた表情で、左端の赤の装束の人は私的には光源氏よりイケメンだわ。

「源氏物語図屏風」伝 狩野永徳 桃山時代(16~17世紀)(左隻(させき))
この説明書きのなんと有難かったことか!。自分の見ている物がいったいなんだか分かることの心地よささといったら。


今、「皇居三の丸尚蔵館」で開催されている「第3期:近世の御所を飾った品々」の前期(令和6年3月12日(火)~4月7日(日))では、源氏物語の作品は屏風が1双(そう)、1隻(せき)展示されている。1双の右隻(うせき)が、第26帖の「常夏(とこなつ)」と第52帖の「蜻蛉(かげろう)」。
物語としてはなんの連続性もないこれらの帖がなぜ一枚の屏風になっているかはなぞ。

「常夏」のこの場面は、光源氏が息子の夕霧や内大臣の長男・柏木(かしわぎ)らを招いて、ようするに「飲み会」をしている図。

左側の大きめに描かれている人物が「光源氏(36歳)」。説明書きにはなかったが、源氏の右側に描かれている源氏と同じ色調の装束を着ている人物が息子の「夕霧(15歳)」かな。
源氏たちを眺めるように配置されているお姫様、説明書きにはなかったがこの中に「玉鬘(たまかづら)」がいるはず。

光源氏は、玉鬘を内より外に近づかせ、もちろん、御簾(みす)か几帳(きちょう)を隔てて玉鬘を座らせ、直接に姿をみせないようにしているが、若者たちにその姿を垣間みせようとするのである。

「源氏物語の色辞典」吉岡幸雄
「玉鬘」は「曇りなく赤き」の装束を纏っていたので、やはり3人いるうちの真ん中だろうな。


茜色と山吹色。「源氏物語の色辞典」吉岡幸雄

「源氏物語」をより楽しみたい方には是非、この吉岡幸雄氏の「源氏物語の色辞典」をお勧めしたい。色だけでなく、装束や各帖の内容もコンパクトにまとめられていて、記憶を思い起こすのにも役立つ上に、とにかく色が美しくて眼福である。

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