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【読書】旅のお供は何ですか?

旅に出るとき、支度には誰でも大なり小なり悩むもの。私は迷ったら持っていかない派である。必要になったらなったで現地で調達できるものも多い。
本読みさんが旅に出るときは「さて、何を旅のお供にしようか?」と悩むのではないだろうか。
電子書籍派は本屋のコンビニを携帯しているかもしれないが、私は電子書籍を読まないので、思い立っての「調達」ができない。

その時佳境に入っている本が分厚かったら、泣く、である。まず重い。
そして、旅は非日常でもある。
佳境に入っている本に没頭していては、
美しい富士山を見逃すかもしれないし、
波間きらめく大洋を味わえないかもしれないし、
トンネルを抜けた後景色が一変した様に、感嘆を漏らせないかもしれない。

いわゆる鈍器本が課題図書の読書会では、
「通勤には不向きなんですよね、この本。重くって。」という声が聞かれた。
持ち歩くんだこの本!であった。私にはその選択肢は全くなかった。

旅のお供の本、まず、
重くない、
薄い、
旅本来の目的の興をそがない
である。

この1か月間に愛知県を2度も訪れた。どちらもそれはそれは楽しみな目的での旅だった。
楽しみ感が半端ない旅に質量ともにひっそり寄り添う本、そんな本は今回
「東方奇譚」マルグリット・ユルスナール、であった。
「源氏物語」の多数の関連本の1冊である。

『源氏物語』に想を得た小さな恋物語、
中国、インド、ギリシア・・・
ヨーロッパが夢見たオリエンの幻想的な九つの佳品を収めた珠玉の短編集

「東方奇譚」マルグリット・ユルスナール

夜が眠りのためにのみ過ごされるほどの齢に達したこの男は、

「東方奇譚」『老絵師の行方』から

この一文、これほど男性の性の衰えを品よく表現できるのだとうなった。

無人島に持っていく1冊は何ですか?の問いかけをよく聞くが、
「あなたの旅のお供の本は何ですか?」も聞いてみたい。

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