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賃貸の部屋の壁をペンキで塗る 1997/08〜

(前回までのあらすじ)

突然の出張で地方のビジネスホテルでの生活を2ヶ月することになった時、周りに店もなくネットもない生活で、私が一番始めに着手したのが、ホテルの室内の部屋作りでした。何より先に布団カバーや花瓶を買いに行き、ポスターを貼って、即席の自分の部屋にしたんです。
ホテルの掃除のおばちゃんたちにもお礼のお菓子や置き手紙でやりとりをし、理解者になっててもらい、根回しもバッチリ。

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何が私をそこまでさせるのか。笑

前回の記事を書いていてそのルーツを考えたら、高校時代の絵日記にその片鱗が残っていました。

当時、高校デビューしオシャレをすることの楽しさに目覚めた私は、オシャレな部屋にも憧れました。
当時の実家は築60年の団地で、私の部屋は六畳の和室。雑誌のマネをして雑貨屋で素敵なフォトフレームやポップなクッションを見つけて買って帰るも、自分の家に飾ると途端に全然オシャレなお部屋にならない不思議。
全てのオシャレ要素を吸収し無効化する魔法でもかかっているのでしょうか?

雑誌でモデルが着ている服を見て憧れ、自分が着てみると、本物のそれと何かがもう圧倒的に違う…ってなったことありません?コレジャナイ感。それの部屋バージョンだと思ってください。
そしてその魔法の原因を突き詰めていき、そのステキ雑貨の周辺を取り巻いている実家の「家具」や「背景」が、どうにもダサかったからということに気付きます。

こうなると、小さなアイテムの投入程度では太刀打ちできず、改善の対象は必然的にもっと大掛かりなマクロのものになってきます。

そこでコンランショップとかイデーとか行けたらよかったのですが、お小遣い5千円の高校一年生の身。近所のホームセンターに行って塗料を一式買い、いきなり壁をオレンジのペンキで塗っていました。(注:公団の賃貸です)

しかも、無計画な一発塗りだったのですが、塗ってる途中で元の白もいいねということで、間を開けながら塗り、白とオレンジのストライプの部屋になりました。(注:公団の賃貸です。笑)

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更に、きっと畳だからオシャレにならないんだと、今度はハンズでフローリングシートを買ってきて敷き(何故か無難なカーペットではなく、フローリングシート。笑)いよいよ部屋の原型がなくなりました。

とある田舎町の地味で無難な公団は、一室だけが派手で異様な空間になりました。笑

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…やっぱりお金や労力をどこにかけるかに、自分の大事にしていることや価値観って顕著に表れますよね。私は生活の中に自分らしさのある空間がどこにもないと感性が枯れてしまうので、落ち着ける自分の場所の確保が必須の人間だったんだなと思います。

それは単にくつろげるという意味だけではありません。外でいろいろなものに触れ、自分が半分染まって帰ってきた時、自分の世界観で満ちた部屋に入ると、「そうそう、塩崎沙和ってこれが好きな人間だった」と、自分の感覚が戻ってきます。

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部屋に自分という人間のアイデンティティを表し、その中に身を置いて、染まりかけた自分を取り戻す。「自分」を見失わないための、チューニングとチャージの空間という意味が、部屋にはありました。

その為、どんなに小さな一角だけであっても工夫して自分色にするこの根性は、シェアハウスの狭い2段ベッドの中だけで生活するようになるこの13年後にも発揮されます。

(つづきます)

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