#127 めでたい・たいやき
すこし寒い外で食べるあたたかいものというのは、どうしてこんなにも美味しいのだろう。
会社の近くに新しくできたたい焼き屋さん。お昼休みに本屋に出掛けるときにいつも前を通るものだから、気になって仕方がなかった。
たい焼き
たい焼きというのは名前の通り鯛の見た目の魚を焼いたものであり、主にあんこが中に挟まっている訳だが、どうして魚を模した生地にあんこをいれようかと思ったのか。
起源に着いて調べたらこんなことがわかった。
今川焼きは、山形生まれの私にとって「あじまん」として親しみだらけだ。今川焼きが売れないから工夫を凝らした結果、たい焼きが生まれたとは。亀焼きが成功していたら、亀焼き屋さんが当たり前にある世界線だったのか。
さらにこうも書いてあった。
めでたい!高級品を模したたい焼き。なんとかわいらしい発想。
キャビア焼き、フォアグラ焼き、はなんか鼻につくし、第一見た目がかわいくない。
犬焼き、猫焼き、となると、今すぐその火を消してくれ!と頼みたくなるようなどうも恐ろしい感じになってしまう。
個人的にはなまる焼きを作って欲しい。私は花丸が好きだ。花丸の形に、グルグルの焼印をいれるカタチで。そしたら疲れたときに癒されながら食べる。今日はなまる焼きあるし、となる。
さて。
たい焼きを注文したら、
「ご一匹ですか?」
と言われた。
ご、ご一匹!?そうです!?ご一匹ですとも!!と高まる心を抑え
「はい。」
と言った。
ご一匹ですか?と聞かれたのは初めてだ。このバイト、1日してみたい。
お会計を済ませると、すぐに出てきた。
今回頼んだのは王道あんこではなく、鳴門金時いも。
あたたかくてやさしい生地。二口目でやわらかくて滑らかなサツマイモのペーストに辿り着いた。ほくほく。だけど飲み物なんて全く必要ない滑らかさ。ほくほく。
ベンチに座って食べたのだが、しっかりと冬が始まることを感じさせる寒さの中、秋を惜しむように鳴門金時のたい焼きを食べた。あれは正式に冬を迎える儀式だった。
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