思弁逃避行 22.今に限る

 「今限定!ディズニーパッケージ」と書かれたインスタント麺がそこにあった。

 また恐ろしいものをみてしまった。それはスーパーのワゴンの中で悲しげに積まれていた。
 今限定。今季限定ではない。今だけなのだそうだ。それはもう限定に限定されている。なぜなら"今"とは時間を指す言葉の中で最も短く具体的なものだからだ。言葉の上ので"今"は、それを耳にし意識したその瞬間、刹那の話になる。その"今"が、文字として印刷され、しかも限定されているというのだ。つまりこの印字されている"今"はその商品のパッケージを人が目にして認識するたびに訪れる。こんなに希少なものはない。

 つまり、先ほどは「この上なく限定されている」といったような書き方をしたが実はそうではないのかもしれない。人が意識をしているその状態が常に"今"であり、それは流動的でほとんど永遠に近い。ディズニーパッケージは"永遠"なのだ。

 時間というものを認識する意識があるかぎり、我々は今という時間以外を過ごすことは不可能だと思っていた。しかしそれは間違いだったのかもしれない。
 このインスタント麺のディズニーパッケージが終了する時。その時こそが"今"が終わる瞬間なのだ。

 限定品とディズニーに歯向かってはいけない。

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