見出し画像

ユナイテッドアローズに聞く「お客様の明日を創る」取り組みと、VOCデザインと活用法

「明日が良い一日になればいいな」
私はそう思いながら眠りにつくことにしている。
今日が良い日でなければ、明日は良いことがありますように。
今日が良い日であったとしても、明日はもっと良いことがありますように。

私達は誰しも、明日が良い日になればいいと願っていると思う。

わくわくするような”良い日”とは、どんなものだろう?

例えば、大好きな友達や恋人と会う日。
例えば、ずっと行きたかった場所に行ける日。
例えば、美味しいディナーを食べに行く日。
例えば、夢だったことが叶う日。

そして、それらを彩るように、大好きな服を着る日。

なんでもない一日を楽しくしてくれたり、素敵な一日をさらに素敵にしてくれたりするのが、ファッションであり、1枚の洋服である。

その、私たちの1日に彩りを与えてくれる、たった1枚の洋服を提供するために、日々試行錯誤をしてくれているのが、今回話を聞いたユナイテッドアローズだ。

誰もが知っているユナイテッドアローズ。
その地位に慢心することなく、「お客様の明日を創る」という理念と共に、お客様の声(VOC)をいかに大事にしているか、いかにそれらを活用しているかを聞いたので、セミナーレポートとしてまとめていきたいと思う。


セミナー概要
2022年11月11日(金)開催
株式会社エンゲージ主催のオンラインセミナー
ユナイテッドアローズに学ぶ顧客中心主義とNPS・VOC活用術

登壇者紹介

CXグループ ストアーオペレーションセンター 人材開発サポート課
小林 貞裕氏
1999年 GLR原宿店入社
2005年 ダージリンデイズ販売統括: HCの導入/ハガキでのVOC収集
2008年 人事部人材開発課
2012年 お客様相談室
2015年 販売支援部 CX推進チーム/NPS導入
2022年 現部署にてNPS活動を推進
【現在の業務】
NPSによるVOCの収集-分析-活用/VOC活用からの販売員育成

株式会社エンゲージ 代表取締役
藤谷 拓氏
文化服装学院を卒業
ファミリーアパレルメーカーに10年勤務し100店舗以上の店舗運営に従事。
2010年よりNPSを活用したロイヤルティ向上事業(NPS)立上げ
2019年に小売(アパレル)・流通業をメインしたCXとEXのコンサルティング会社(株式会社エンゲージ)を設立。
代表取締役に就任。

セミナーが始まり、まず藤谷氏から株式会社エンゲージの紹介がなされた。エンゲージについては、私が初めてセミナーに参加した時のレポートにて詳しく記載しているので、未読の方はそちらを是非読んでほしい。
コロナ禍に溢れる「触れない」の中で、お客様の心に「触れる」大切さ―イベントレポート(noteリンク)

グランドデザインとは?

藤谷氏は、アメリカの大手ディスカウントスーパーのTARGET社の事例を元に、VOC収集のグランドデザインについて述べた。
TARGETでは、VOCを収集するにあたって、どのタイミングで、どういう相手に、どういう内容のアンケートを設け、そしてそれらをどう処理するのかという”デザイン”をしているという。
本日登壇するユナイテッドアローズでも同じように、VOCの収集においてデザインがある程度決まっているとのことで、その詳細を話していただく。ファッション・小売業を営む側からすると喉から手が出るほど知りたい内容と言えるだろう。
これから聞く本題にて使われる用語の説明があったので下記にまとめておく。

お客様の声を集める際に用いられる2つの大きな方法


 ■リレーション調査…半年、もしくは一年の期間において、ブランドとお客様の接点についての評価を問うもの。さまざまな体験を網羅的に聞くブランド調査に近いもの。調査・改善主体は主に本部。
 ■トランザクション調査…会計ごと・接点ごとの調査。今日の体験について評価を問い、現場ないし本部にフィードバックするもの。調査・改善主体は主に現場。

ユナイテッドアローズ 小林貞裕氏登壇

そしていよいよ、ユナイテッドアローズ小林氏が登壇。
先日の繊研新聞にて、ユナイテッドアローズが好調だという内容がニュースになっていると藤谷氏は口火を切った。
(ニュースの内容は検索すると読むことができるので、是非検索して読んでほしい)
その内容を藤谷氏が読んだ中で、好調となったポイントを三つ挙げた。
「値下げをやめてプロパー販売をしたこと」
「MD・適正在庫が上手くいったこと」
「お客様からのありがとうの声がとても増えたこと」だという。
小林氏はその通りだと答え、上記二つはどこの会社でもキーポイントとして押さえているところだが、三つ目にあがった「お客様からのありがとうの声」が劇的に増えたと告げた。
”感動接客”を目標に掲げ、全社員がその言葉に沿いお客様への接客に真摯に向き合った結果だという。
藤谷氏は、”ユナイテッドアローズの接客の良さ”はあちこちで話に上がるほどのものだと頷いた。
その接客の良さはどうやって創られているのか、VOCがどう活用されているのかを、本日3つの大きな内容に分けて語っていただく。

本日のアジェンダ
ユナイテッドアローズが実践する
①全社トランザクション(365日)調査の概要と活用
②半期ごとリレーション調査の概要と活用
③それ以外のVOCサーベイの概要と活用

エンゲージのセミナーお馴染みの、参加者がより聞きたい内容を投票して詳しく話すテーマを決めるアンケートでは、①に多くの投票が集まった。
結果を受け止めつつ、小林氏はまずユナイテッドアローズについての説明から話し始めた。

■ユナイテッドアローズ 会社概要
設立…1989年10月2日
代表者…代表取締役 社長執行役員CEO 松崎善則(2年前に就任)
従業員数…3,826人(2022年3月31日現在)

ユナイテッドアローズでは元々、”お客様の声”を集めるのにはがきを用いていたり、従業員がその場でメモを取って集めるというアナログな方法を取っていたのだという。
それをNPSという概念の元、現社長の松崎氏が声をあげてグランドデザインが作られるにまで至った。今回は、そのグランドデザインを大きく3つに分けて紹介。藤谷氏の補足や、参加者からの質問とその答えを合わせてまとめていく。


1.全社トランザクション(365日)調査の概要と活用

まずは、多くの参加者が気になっている項目、会計ごとのVOC収集についてだ。
主に会員登録(ハウスカード会員)をしているお客様へ、会員カードを読み込んで会計をした次の日に、購入いただきありがとうという”サンキューメール”が自動的に送られる仕組みをとっている。その中にお客様アンケートを添付し、エンゲージのアンケートソフトウェアに飛ぶというもの。購入してすぐのアンケートだと、記憶も新しいので答えやすく、とてもいいシステムだと思う。
そして回収されたアンケートは、毎週月曜日に『お客様相談室』へフィードバックされ、そこでフォローが必要かつ、連絡をしても良いと回答されたお客様へ、お客様相談室から連絡を取り対応をする。即座に対処、フォローアップすることで、お客様の満足度が向上し、同時にお客様の心情理解の探求も進めることができるのだ。
お店に連絡するほどでもないが、少し気になることがあった時など、ブランドの方からこういった対応を取ってくれるということは、客側からしても「またここで買おう」と思わせてくれる真摯な対応であると言える。
そのVOCの内容や対処・結果は全社に共有され、ブランド全体でレベルアップできる取り組みがなされている。
なにより、こういった対応を各現場がするのではなく、専門の部署を置いていることで、より的確な対処ができる上に、販売員は現場に集中できる。ただの『お客様相談室』ではなく、VOCの要を担った重要な部署だと言える。
そんなVOCの要であるお客様相談室の室長にインタビュー動画内にて話を聞けたので下記にまとめる。

お客様相談室 室長 澁谷裕一氏インタビュー動画まとめ

「お客様の声を聴くということをどういうふうに捉えているのか」
…お客様相談室のミッションの一つに、『お客様の声を適切に伺うことで、より良いサービスの改善や課題解決に向けて、関係各所へ伝達を依頼すること』というものがあるという。時に厳しい意見や、解決が難しい内容もあるが、お客様が貴重な時間を使い答えてくれたということは、ユナイテッドアローズへの期待があるからだと考えている。お客様の声を、このお客様相談室が拾い、解決しないことにはその先のお客様満足は無いと澁谷氏は言い切った。
「お客様アンケートをどのように活用しているのか?」
…集まったアンケートの約50%が、コメント付きで回答されているそうだ。コメントがあるものは、室長の澁谷氏自らすべて目を通しているという。そこでサービスの改善等に繋がる意見をまとめ、各所に共有している。コメントの約9割はサービスや商品に対しての肯定的な意見で、ARIGATOレポートという社内のレポートにて共有し、従業員のモチベーションアップに繋げている。そして残りの1割である改善が必要な意見は、しっかりと対応を考えた上で、責任者へ伝達をし、そして連絡をしてもいいと答えてくれているお客様には直接連絡を入れて能動的にフォローアップをしている。例えば、商品の汚れなどの意見には新品交換を提案する等の対応をとることができる。それが、不満足や今後の課題の解消となっていると述べた。
「活用することでどのような良いことがあるか?」
…サービスの改善と課題解決に活用され、結果的にお客様満足に繋がっていることが最大のメリットだと澁谷氏は言う。
様々なお客様の声を拾うことによって、「まさか連絡をもらえるとは思わなかった」と感謝の言葉をいただいたり、届くはずではなかった”サイレントクレーム”に対応することができるという。

こういった的確、かつひたむきな姿勢を室長自らがおこなうことによって、適切にお客様への対処をすることができ、それが社内へと広がっていくのだと感じた。

ここまでのQ&A

Q.お客様相談室のメンバーは、何名くらいいるのですか?
A.小林氏「実際にお客様と連絡を取り合ったり、関わりを持つメンバーは20名ほどです。最近増員され、こういった対応を取ることが可能になりました」

Q.ユナイテッドアローズのVOCとなると膨大な量になると思いますが、どのように目を通していますか?
A.小林氏「澁谷氏が言っていた通り、コメントがあるものを一つ一つ全て目をとおしています。彼は1,000件くらいなら、合間を見て一日で見てしまえると言っていましたね」
 藤谷氏「他社でも聞く話ですが、600-700件くらいお客様のコメントに目を通していると、”今のお客様”が見えてくるらしいです。ですので、読む価値は十二分にあります」

Q.お客様相談室のメンバーは、ブランドの出身者ですか?
A.小林氏「色んなブランドの出身者がいますが、店舗経験者が8割を超えますね。そうでなければいけないというわけではありませんが、店舗を経験しているとお客様の心情理解が早いという強みがあります」

2.半期ごとリレーション調査の概要と活用

続いて、ハウスカード会員に向け、年に2回実施しているというリレーションサーベイについての話だ。
ユナイテッドアローズでは、6月と12月に実施しているという。先述したとおり、マーケットや、ブランド自体の接客・商品を主体にアンケートを取る、ブランド調査のようなもの。半年の期間内に、一度でもカードを通して買い物をした顧客に向けてメールを送付する形だ。
それをトランザクションと同じくエンゲージのシステムにて集計し、役員会議の場であったり、各ブランドの発表会、店長が出席するウェビナーの場でフィードバックしているという。そして今年から発足した「お客様の体験価値を向上させる」ことが目的である各ブランドのCXチームにも共有し、行動レベルにて改善活動を落とし込む。
そうすることで、NPSの”推奨者”を増やすことに繋がり、ユナイテッドアローズでは着実に半年間の平均購買金額を伸ばしているそうだ。
推奨者を増やすために動いているCXチーム。その中のBEAUTY&YOUTHブランドのCXチームリーダーに、インタビュー動画内にて話を聞けたので下記にまとめる。

※CXグループ BYCX推進部CXチームリーダー 高橋功氏インタビュー動画まとめ

「お客様の声を聴くということをどういうふうに捉えているのか」
…”真心と美意識をこめてお客様の明日を創りたい”という理念を、本部も店頭のメンバーも含めて全ての社員が同じ志で活動している、と高橋氏は力強く言った。そしてお客様の明日を創るという壮大な目標を達成するには、まずお客様の今日を知らないことにはアクションが起こせない、という切実な思いを抱えていたという。そんな時に始まったハウスカード会員様アンケートが、いかに役立つ情報であるか、道しるべになっているかと告げた。本部や店頭でさまざまな改善方法を出し合ったとしても、やはり一番重要で一番大切にしなければならないものは『お客様の生の声』であると、高橋氏を含めユナイテッドアローズで働く全員が感じているという。取り組みが開始された当初は、厳しい声が集まるのではないか、監視されるのではないかと不安な声もあったが、今では年2回のアンケート結果を全メンバーが心待ちにしているという。自分たちの行動の結果を評価してくれる、”お客様から頂ける通信簿”だと表現した。
「お客様アンケートをどのように活用しているのか?」
…CXチームでは、多くの項目の中から”接客に紐づく項目”に絞って活用しているという。メインで7項目あり、そのスコアとNPSのスコアを掛け合わせて、どこを伸ばすべきなのかということを、各店舗の店長やエデュケートリーダー(教育担当者)が考えている。半年という期間の中で、そこで考えられた改善方法がヒットしているかどうかを、買上率やSET率というKPIを定めて毎月チェックし、見定めているそうだ。
「活用することでどのような良いことがあるか?」
…多くの良いことがあるという中で、高橋氏は大きく3つに絞って紹介してくれた。一つは『店頭の活動内容が明確になった』ということ。例に挙げれば、BEAUTY&YOUTHスカイツリー店ではその立地から、観光客が多いことを見越して接客の多言語化(英語・中国語)であったり、近隣のグルメスポットの把握を教育方針として取り入れていたが、VOCの結果を見ると地元のお客様が多く、その方々からの声を大切にすることも必要だということが分かったという。二つ目は『自分達のやっていることが合っていると実感できたこと』。お客様も多く滞在時間も短いBEAUTY&YOUTHルミネ店を例にあげると、お客様に満足いただける接客ができているのか不安だったが、VOCにて”忙しい中で精いっぱい対応してくれて嬉しかった”という声が届き、そのコメント達が店頭メンバーの”お守り”になったとのことだ。最後は『店全体の活動として取り組めていること』だという。幹部だけ、店長だけ、教育担当者だけ、等一部で取り組むだけでは、推進スピードも濃さも変わってくる。みんなで「お客様に満足してもらいたい」と心を一つにできることが、一番の財産だという。高橋氏はこれからもフル活用していきたい、そしてお客様のことを知る上で一番のツールにしていきたいと笑顔で締めくくった。

小林氏は、リレーションをさらに活用しているという内容について続けた。
それはアンケート回答者の中から、モニター調査やグループインタビューの参加を募集し、次期商品への意見をインタビューしたり、新しいレーベルのワークショップに招待し意見をもらったりしているという。
これが非常に様々なところで生かされており、さらには参加したお客様からARIGATOレポートに載るほどのコメントをいただいたりと、多くのメリットがあるというのだ。
このような活用方法に参加できる機会を設けていること、それはユナイテッドアローズというブランドを別の角度から見れるチャンスであり、さらに好きになるポイントにもなる素晴らしい取り組みだと思った。

その3.それ以外のVOCサーベイの概要と活用(アウトレット)


最後は、アウトレット店舗でのグランドデザイン。
年間2回、紙(QRコードが記載されたカード)を配りアンケートを回収し、各部署・各店舗へフィードバックして改善活動をしているという。
何故アウトレットでは独自の方法をとっているのかというと、やはりアウトレット店舗は顧客も多く滞在時間も短いため、接客体験を受けない方が大多数だそうだ。なので、接客を前提とする他のレギュラー店舗の傾向とは異なり、リアルな声を集めることができないからだという。
接客を受けたか/受けていないかによって分岐する独自のアンケートで、しっかりと本当のお客様の声を集められる内容となっていた。
同じ内容のアンケートを全店で使用するという簡単な方法ではなく、それぞれに合わせたものを設定しているという、ユナイテッドアローズの誠実な心が分かる内容であった。

小林氏、そして澁谷氏、高橋氏をはじめ、ユナイテッドアローズが企業理念である”お客様の明日を創る”という主題に向かい、VOCを活用しながらいかに本気で取り組んでいるかが分かるセミナーであった。
変わりゆく世の中、顧客の心情、”お客様の今日”をどのように知って、そして対応し、明日を創っていくのか。
これからのユナイテッドアローズがさらに楽しみになる話が聞けた。

Q&A

Q.スタッフがトランザクションサーベイを自分ごと化して主体的に取り組むためにコツはありますか?
A.藤谷氏「ユナイテッドアローズでは、トランザクション然りリレーション然り、スタッフ皆が自分ごと化できていますよね」
 小林氏「弊社も以前は情報が錯綜する等、知っている人と知らない人が出てくることで共通意識が持てない時もありました。そこで発足したCXチームが、しっかり情報をまとめて各店舗、各部署に落とし込むことによって、スタッフが正しい情報を受け止めることが出来ていることも大きいと思います」
 藤谷氏「お客様相談室がおこなっている、モチベーションアップのための情報共有ももちろんそうですが、そういった取り組みで企業理念などの共通意識が、しっかりと浸透しているということですね」
 小林氏「そう言っていただけると嬉しいです。お客様からの長文のコメントなども全て共有していたり、自分達の行動がしっかりお客様に伝わっているんだな、と意識してもらえる活動をしていることも大きいのかもしれません」

Q.アンケートで「連絡を希望する」と答えたお客様にはもれなく連絡をしているのでしょうか?
A.小林「いいえ、お客様からのコメント内容を確認した上で、フォローをしたほうがいいと判断した場合のみ連絡することにしています。こういったフォローが必要な方への取り組みは、実は昔から各店舗でおこなっていました。それがそのままお客様相談室へ引き継がれた形ですね」

Q.リレーション調査で、ECサイトへのお声があった場合も改善はおこなっていますか?
A.小林氏「もちろんです。デジタルマーケティングという部署があるので、そちらで改善活動をおこなっています。今まで多かったお声は”回線が遅い”というものだったので、その辺りはすごく頑張って改善しました」

Q.(メールができない)ハウスカード会員以外にはアンケートをとっていますか?
A.小林氏「日々のトランザクションやリレーションでは、現状メール会員様以外にアンケートをとる方法はおこなっておりません。ですが、新入社員が入社時に研修でおこなうNPS配布など、スポットでおこなっているものはそれに該当しますね」

Q.VOC調査を、配布型のカードからメールに切り替えたタイミングと、きっかけを教えてください
A.藤谷氏「元々エンゲージのシステムを採用したのは、現社長の松崎氏ですよね。それ以前は、QRコードの書かれたお客様アンケートのお願いカードを、熱意を込めてお客様に手渡ししていました。あえてデジタル化せず、その接点を大事にしていましたよね」
 小林氏「そうですね。それをデジタルに変更したきっかけはコロナです。新型コロナウイルスが流行し始めた当初は未曾有の感染症に対して何も分からない状態だったので、物理的に従業員がお客様に紙を手渡すという行為を続けるのは難しいと感じました。そこでトランザクション調査を一度ストップし、年1回のリレーションを2回に増やして対応していました。しかし、やはりトランザクション調査もやってほしいと現場・ブランドから声があがり、去年の12月にデジタル化で再スタートした流れです」

Q.アンケートに対して何かプレゼントはつけていますか?
A.小林氏「リレーションではギフト券をプレゼントしておりますが、純粋に生の声をお聞きしたいので、トランザクション調査やアウトレットのアンケートではつけておりません」

Q.リレーション調査の回答期限が1週間というのは、短くないのでしょうか?
A.藤谷氏「私からお答えしますと、期間をいくら設けたとしても全回答の8割は最初の2,3日で集まります。そのあと回答されるのは少しなので、正直3日あれば大丈夫という認識ですよね」
 小林氏「おっしゃる通りですね。一週間後あたりだと集まるのは数件なので、期間は十分だと思っています」

Q.企業理念の浸透に感動したのですが、ここまでくるのにどれくらいかかりましたか?
A.小林氏「どれくらいという期間を区切ることはできないのですが、創業時に、創業者の重松が提唱したものを皆が引き継いでここまできました。特に、入社研修では、理念研修をみっちりおこないます。あとは社長が自分の想いを語る場を設けたり、理念を体現しているメンバーのインタビューを社内で共有したりすることで、浸透を深めることに努めています」

Q.お客様アンケートでいただいた結果を、具体的な改善アクションにつなげる進め方はありますか?
A.小林氏「設問で出てきた7項目のスコアを、NPSスコアと掛け合わせてみると改善すべき点が見えてきます。それを各ブランド・各店舗に共有すると、納得することが多いんです。ですので、その納得した部分をどう改善していくか、どう次につなげていくかを現場・担当者にしっかり考えさせるようにしています。自分達で日々考えいくことで、上から言われるだけではなく自ら考えて提案できるよう成長できます」
 藤谷氏「弊社のクライアントでもここに躓くところが多いですね。ライクヘルド氏の書籍にもありましたが、スコアだけに着目するのではなく、自分たちの成長に繋げるマインドセットが重要なんです。ユナイテッドアローズでは理念が浸透しているという”地”ができているというところもありますし、どうすればいいのかという”問い”があり、各々が考える場がしっかり用意されているんだなと感じました」


私たちの明日

中学生の頃、初めて自分のお小遣いで自分の服を買い、明日それをきて遊びに行こうとドキドキして眠りについた夜の気持ちを、私は未だに覚えている。
そしてその新しく買った服を着る時のドキドキは、大人になった今でも変わらない。

「明日のデートは、この服でいこう!」
「明日は寒くなるから、このカーディガンが着れる!」
「明日は女子会だから、ワンピースお揃いで着たいな!」

ユナイテッドアローズのいう”お客様の明日を創る”という理念は、こういう日常のドキドキを創ってくれることだと思う。
たった1枚のスカート、たった1枚のトップス、たった1枚のワンピースで、私たちの気分はこんなにも上がるのだ。

良い日にも、悪い日にも、必ず明日はやってくる。
そしてその明日が、今日よりも良い日でありますようにと願いを込めるだろう。

鏡の前でとっておきの服を合わせながら、”明日”に期待を寄せて。