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【翻訳メモ】INSIGHTS FOR THE JOURNEY

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■全体目次 https://note.com/enflow/n/n51b86f9d3e39 ■「ティール組織」の著者であるFrederic Laloux によるINSIGHTS…
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2020年8月の記事一覧

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【4.3.6】責任と、仲間内でのプレッシャー(Accountability and peer pressure)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/436.html ■翻訳メモ 今回は、チームの中でのプレッシャーについて話します。従来の組織は、強制や威圧といった力によって自らの組織を統制していました。指揮命令系統が決定を強いてきたと言ってもいいでしょう。「セルフマネジメント」は、人権関係や会話をベースにして、組織を調整していくシステムです。それを「自己修正」と呼びました。しかし、「自己修正」は必ずしも会話が必要なわけではありません。わずかなプレッシャーによっても発動します。私たちは、互いに貢献を認め合い、時には批判し合います。価値観に基づき、相いれない場合や仲間内でやってほしくないことには批判的になります。そのような、仲間間でのプレッシャーによって、組織の活動は維持されているのです。 確か、2年ほど前、フランスで発表された記事だったと思います。哲学者か学者によって書かれたその記事には、「セルフマネジメント」のよくない側面ばかりが強調されて書かれていました。管理による制御をせずに、仲間間でのプレッシャーに頼った運営は恐ろしいものだという論調だったと思います。『蠅の王』のように皆が殺し合う世界が生まれるため、従来の伝統的な管理の方がはるかに優れているというものでした。彼らは、セルフマネジメント組織で働いた経験がないのにもかかわらず、想像だけで、このようなシナリオを描いている風でした。そのような組織を訪ねたことも、そこで働いている人をインタビューしたこともないにもかかわらずです。彼らが書いたこのような記事を無視することは容易にできます。しかし、非常に興味深く、かつ重要なのは、仲間間のプレッシャーが本当に機能するのか、きちんと検討してみることです。 いくつか、私の考えをお伝えします。1つ目は、先ほどの記事を書いた人たちに言いたかったことですが、プレッシャーを活用しようとするときの最も好ましくない状態というのは、だれ一人としてプレッシャーを感じていない状態を指します。私たちは、他人が発するシグナルをとらえられる能力を持っています。そこで得られたフィードバックは、たとえそれが批判めいていて、一時的には気に入らなくても、それが成長の糧となる場合があります。最も辛く恐ろしいのは、フィードバックが得られず、いま自分がどう思われているのか、まったく伝わってこない時です。他人からどう見られているか気になるというのは、私生活でもあると思います。他人の目から見て、自分が彼らにどう映っているか分からなければ、不安でしようがないと思います。 以前、ある組織と「セルフマネジメント」への移行に取り組んだ時、最初、彼らは、文字通りやる気がないという状態にありました。コミュニケーションがなく、恐怖がはびこっている状態に見えました。そこのメンバーは、だれからもフィードバックを受けている様子はなく、皆が自分の内側に閉じこもっているいるような感じでした。そういう状態では、あの人はきっとこんなことを考えているなどと、でっち上げが横行するものです。そういった状況を避けるには、私たちは、生来、社会的な動物であるという認識を持つことです。そして、私たちは、常に他人の評価を気にしているという事実を認めなければなりません。フィードバックが健全な方法で行われているのなら、多くの人はそういった環境で働きたいと思うはずです。しかし、その一方で、評価することによって恐怖心を抱かせようとする組織もあります。ですので、正しい方向に寄せていくというのは本当に大切なことなのです。 私が訪問している組織で、苦しんでいるところの多くは、まずここのポイントがうまくいっていません。そうは言っても、最初からうまくいくところは少ないようです。メンバーが新しいフィールドで実際に学び、行動する前にマネージャー制度がなくなった組織もありました。そういう組織では、仲間間のプレッシャーが、時にはあまり好ましくない形で出ることがあります。 重要なのは、単純に言葉に出すという行為です。「セルフマネジメント」は社会的活動の上に成り立つということを理解し、事実について話し合うことで成立します。人間の持つ社会性からいうと、言葉にするという行為は、健全な行為です。仲間間のプレッシャーにかんしても同様です。ポジティブなサイドに立ってフィードバックを行うということをチーム単位でコミットしていきます。これは非常に大切なことです。 また、多くの企業が取り入れている別の方法があります。それは、何らかの形で、NVC(非暴力コミュニケーション)の手法を使って、フィードバックのトレーニングを行う方法です。これには深い意味があります。ただし、このコミュニケーション手法を浸透させることは、とても時間がかかります。途中で諦めず、時間をかけて学ぶことが必要になってきます。 もっとシンプルな方法もあります。それは、メンバーがお互いについてもっと知ろうとすることです。多くの従来型の組織では、メンバーの個人的なことはほとんど語られなかったはずです。その人の生い立ちや、どんな価値観を持っているのかなど、共有されることはなかったと思います。当然のことですが、ある人の人生のストーリーを聞けば、その人に対する興味も湧いてくるものです。それがある故、ポジティブなフィードバックだけでなく、ネガティブなフィードバックもできるようになってくるのです。「つながり」が前提になってきます。親身になってくれる人を嫌いになることは難しいものです。これが「ホールネス」の意味するところですが、「ホールネス」は「セルフマネジメント」の中でしっかり機能を果たします。 最後、困っているチームには、コーチを活用する方法があります。ビュートゾルフ社には専属のコーチがいます。チームのコミュニケーションがうまくいっていない、モチベーションが上がってこないなどの時には、コーチが介入します。 いま話していて思い浮かんだことがあります。多くのチームが取り入れている、とても早く、かつ定期的にフィードバックできる仕組みがあります。それは、「チームの雰囲気はどうですか?」という質問です。eメールやアプリを使って、毎週金曜日とかに実施します。絵文字を使ったり、短い文章であったりでもいいのです。例えば、絵文字が笑顔であれば何もする必要はありません。しかし、チームのスコアが下がってきたり、不機嫌な絵文字が並んできたりしたら、コーチを呼ぶタイミングです。 この、「仲間間のプレッシャー」という言葉は、よい表現でないかもしれません。しかし、私たちは常にほかの人からのシグナルを受け取り、それに適応する社会性の中で生活しています。そうやって適応していることが健全だとも言えます。ですので、その健全さを維持していくことが大事です。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【4.3.5】責任の所在と担当窓口について(If a team is accountable, who do I call?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/435.html ■翻訳メモ 今回は、具体的な質問に答える短い動画です。もしチーム全体が責任を負うのであれば、つまり、たった一人の責任者がいないのであれば、だれが窓口を担当するのかという問題です。 「セルフマネジメント」に向かおうとしていた、ある大きな組織で、リーダーが進むべき方向を示し、メンバーに招待状を渡した際、矛盾したメッセージを発してしまったことがありました。中国担当やマーケティング担当など、特定の人にダイレクトに報告できる権限を与えてしまったのです。このような状況で、どうやってメンバー全員に、「オーナーシップ」を持てと言えるのでしょうか。チームリーダーがいない状況で、誰が責任を負いたいと思うでしょうか。 とはいえ、「セルフマネジメント」においても、対外的な窓口担当は必要です。マーケティングや中国でのオペレーションについて問い合わせをしたいとき、誰に聞けばよいかというものです。当然会社の中も、直接、結果にコミットする人は必要です。エキサイティングなプロジェクトが進行中だという良い結果でも、商品がクレームになっているといった悪い結果でも、どんな結果に対してもダイレクトに責任を感じる人のことです。もし、チームに5人や10人といったメンバーがいるなら、マネージャーの「役割」を分散したように、窓口担当もひとつの「役割」になります。セルフマネジメントチームでは、皆がなんらかの、目的にそった「役割」を担うからです。 それは、特定の人がチームの他のメンバーを、権力をもって支配しているという意味ではありません。また、チームの結果に対して、個人が単独で「責任」を負うということもありません。そこにあるのは、ただ担当者としての「役割」です。「役割」と「権力」とを区別することは、「セルフマネジメント」が機能するためにとても重要なことです。 顧客など、外部の人向けには担当者がつきますが、担当の役割は窓口に過ぎず、すべてはチームが「責任」を負います。そうでなければ、皆は、「セルフマネジメント」を捨て、ヒエラルキーの階層を復活させたいと思うに違いありません。そうならないための秘訣は、ローテーションにあります。つまり、窓口などの「役割」は定期的に交代していくということです。6ヵ月や1年ごとに、担当窓口の「役割」を回していきます。 デリケートな話題を扱う会合には窓口担当の人、1人では出席しないと決めてもいいでしょう。特にチームの仕事に不満を持っている人と会う時は、1人ではなく、必ず3~4人のチームメンバーと一緒に参加するという具合にです。そこで何が起ころうと、参加メンバーは皆、心理的オーナーシップを持っているから対処できるということです。そういう集団交渉を一つの「役割」としてしまうこともできます。外部の人は、チームの窓口の人、1人とコンタクトしたがるものです。しかし、複数名で当たることで、チームの真の説明責任が果たせるようにもなります。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【4.3.4】責任を負うのは誰か?(Who is accountable?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/434.html ■翻訳メモ 今回は「責任」について説明する非常に重要な回です。セルフマネジメントチームでは、いったい誰が「責任」を担うのかという問題を扱います。最初に、「責任」を2つに分けて考える必要があります。よく使う「責任」という言葉は、「役割」に紐付いて考えられます。もし、私の「役割」の1つが研修会場の予約であったり、研修の効果であったりした場合には、私はその「役割」に対して「責任」を負うことになります。これはセルフマネジメントチームでも一般の組織でも同じで、この場合の「責任」の所在といったものは比較的シンプルです。しかし、決算に対する「責任」についてはどうでしょう。会社における損益は、多くの人の活動の結果であり、たった1人の「役割」だけで説明できるものではありません。 ひと言で「責任」と言っても、「説明責任(accountability)」と「結果責任(responsibility)」に分けて考える必要があります。誰が誰に対して何を負っているかという考え方で見ていくと比較的分かりやすいものです。しかし、驚くべきことに、「責任の所在」といった初歩的な議論はいたるところで見受けられます。「セルフマネジメント」の場合、そこには信頼の結果が如実に反映されます。システム自体が感知していくことの重要さは、以前の動画で何度も何度も話してきました。システムが健全なら、「自己修正」の範囲で解決できるということです。 もし、システムが信頼に基づいて運営できていないのなら、「責任」を明確にすることは絶対に必要です。組織があるべきパフォーマンスを発揮していない場合、誰に相談すればいいのか明確にしておく必要があるということです。あるべき姿に戻すには、誰に相談すればいいのか、そこが中途半端な状態で、パフォーマンスが改善することはないでしょう。このことを理解することは本当に重要です。慣習的には、その「責任」は1人の人間にあります。つまり、マネージャー1人が、チームの結果のすべてに「責任」を負っています。ということは、チームの「責任」のすべてが個人にある場合、その個人はチームメンバーに対して権力を行使できるということを意味します。個人に「責任」が及ぶのなら、その個人は万物を支配できていなければフェアではありません。 つまり、「セルフマネジメント」は、「個人の責任」から「チームの責任」への根本的なシフトだといえるのです。ビュートゾルフ社の場合は、10〜12名の看護師からなるチームが結果に対して共同で「責任」を負います。「責任」を負わなければならない個人は1人もいません。私たちは「セルフマネジメント」をしていますが、チームを代表して結果に対して責任を負っているのは代表者の1名です、などということは絶対に起こらないのです。 私はこのような組織カルチャーの変容を数多く見てきました。マネージャーは権威を振りかざすのではなく、コーチやサポートに徹して欲しいと言います。彼らが、マネージャーに求めるのは、とても高度な注文だと思います。よきサポーターであれということと、仏教徒のようにすべてを手放せと、矛盾したことを求めているのですから。結果が伴わない時の「責任」はマネージャーが取るべきだと教わってきたと思います。また、メンバーもそれを望んでいると感じているかもしれません。しかし、ここでも矛盾を受け入れる態度が必要です。チームメンバーがそこにいることで共に「責任」を感じているというのが「セルフマネジメント」です。 したがって、「セルフマネジメント」を始めると、企業に革命が起こります。「結果」にコミットするのは、その「結果」を産みだしたチームです。それは本当に驚くべき変化であり、ゆえに、とても強力なシフトだと言えるのです。 以前のシステムでは次のようなことが起こっていたはずです。例えば、12人のチームに1人マネージャーがいたとします。しかし、そのマネージャーの影響力がチームにとってあまりにも弱い場合、チームメンバーは成果がでていなくても、あまり気にしないものです。そのことをマネージャーがメンバーに話しても、自分たちは自分たちの仕事をたんたんと続けるだけだと、そこに関心が及びません。あまりに悪くなると人的な介入があるかもしれないし、ないかもしれない、といった認識です。これがもし、12人のうち10人が結果に対して関心を持っているとしたら、その10人は、もっと良いことをすべきだと声を上げることでしょう。いや、「もっとすごいことをやろう」と言い出すかもしれません。そのような組織は強靭であり、回復力が備わっている組織だと言えます。これこそが、「セルフマネジメント」が機能する基礎的要素の1つで、「当事者意識(collectively feel accountable)」と呼ばれるものです。そのため、「セルフマネジメント」に移行すると、組織の「責任」に対する感度が急上昇するのです。これこそが、最高レベルのチームの姿です。 まだ経営チームが残っている場合、「責任」の所在は皆が気にするところでしょう。そして、もし、その所在が経営チームのままであるというのなら、その組織にまだ革命は起こっていないということです。どのようにしたら、すべての人が「当事者意識」を共有できるようになるのでしょうか?そして、どの時点になったら、真に移行への準備が整ったと言えるのでしょうか?このことはそれぞれのチームで話し合ってほしいと思います。このチームの中で、誰が「責任」という感覚を持っているのか話し合ってみてほしいのです。そして、結果が悪いとき、誰か一人が「責任」を負うのではなく、チーム全体が「責任」を負えるのかを話し合ってみてください。 私は、ソシオクラシーやホラクラシーを含めた、「セルフマネジメント」のいくつかの形態に多少の不満を持っています。それらすべてが、必ずしも、結果や責任の所在について明確に言及しているわけではないからです。ホラクラシーにはリードリンクと呼ばれる人がいます。その人が、チームのパーパスに対して「責任」を負っているとされます。だからリードリンクにはある程度の権限が与えられています。そうでなければおかしなことになるからです。個人が「責任」を負うのであれば、ある程度の権限は持たなければなりません。リードリンには、仕事の優先順位をつけるための権限が与えられています。 ただ単に与えられた「役割」を果たすというのではなく、ビュートゾルフ社のように、チーム全体がチームの結果に対して責任を負うという変革を、私は本当に魅力に感じています。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【4.3.3】マネージャー制を存続させる場合(If you'll continue having manager roles)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/433.html ■翻訳メモ 今回のビデオは、「セルフマネジメント」に向かう旅を、マネージャーと共に歩もうとしている組織に向けたものです。工場や店舗といった現場サイトに顧客と接点を持つセルフマネジメント・チームが存在していても、典型的なピラミッド構造の名残りとして、それらのチームの上にマネージャーが存在する組織のことを指します。このような構造は、移行に向けた初期の段階か、あるいは、経営陣が依然として大きな力を持ち、「セルフマネジメント」への移行に時間がかかっている場合に現れやすいものです。 この状況下でも、マネージャーの役割に変更を加えていく方法があります。それらを7つに分けて紹介したいと思います。 以前のビデオで話したことですが、1つのチームに1人のマネージャーというのが本当に機能的なのかをまず考えなければなりません。計算上、1人のマネージャーが複数のチームを担当するほうが合理的であっても、1つのチームに専任のマネージャーがいることが慣習となっています。しかし、複数のシフトがある工場などは1人のマネージャーが複数のチームを担当しています。その場合、仮に3つのシフトがあり、そして、そのうちの1つにマネージャーがいるとしたら、残りの2つのシフトはマネージャー不在になります。つまり、4つ、5つと、マネージャーが多くのチームとかかわろうとすればするほど、1つのチームにかかわる時間は少なくなっていきます。実はこれが、チームが「セルフマネジメント」を始めるための理由付けとなることが多いのです。 次の実践的な方法は、この新しい世界においての、マネージャーの新たな「役割」を明確にするというものです。良いマネージャーとは何か、チームが抱いているビジョンを明確にしていくことはとても有効です。しかし、そうは言っても、あまり杓子定規になりすぎるのもよくありません。なぜなら、誰にとっても、才能を発揮する方法は異なるからです。それでも、マネージャーとはどのようなものであるかという視点は必要です。つまり、彼らはコーチなのか、メンターなのか、それとも、結果に対して責任を果たす人なのか、といった視点です。「セルフマネジメント」がきちんと機能するよう外部から技術的なサポートを受ける場合であっても、組織の中でマネージャーがどのように定義されているか、あらかじめ共有できていることは重要です。特に、今までの管理方法をよく知るメンバーにとってはなおさらです。そして、今後は、それらを明確に定義するのはセルフマネジメント・チームの仕事になります。それは、組織にとってという俯瞰的な視点で、マネジメントとは何かを定義していくことになります。それはトップマネジメントが書いてもいいですが、トップマネジメントと一緒にチームで作り上げる方がより良いでしょう。マネジメントとは、という新しいビジョンを描き、それを可能な限り具体化します。行動やマインドセットなどを具体的に書き出すということです。 次の有効な方法は、マネージャーがそのまま残る場合であっても、マネージャーの「役割」を、細かく定義するというものです。マネージャーの「役割」の分散について話したビデオを思い出してください(【4.3.1】)。1つのチームのマネージャーであっても、3つのチームのマネージャーであっても、マネージャーには、それを形成している「役割」があります。その動画では、その「役割」を、8個、10個、12個といった「タスク」にして切り出したと思います。そして、マネージャーとして引き続き持っていたいと思うものを特定し、それ以外はチームに分配していったと思います。 次は、意思決定の権限についてです。以前の【4.3.1】の動画では、権限をどう振り分けるか、マネージャーとチームとで会話を持つやり方を紹介しました。実は、マネージャーの持つ最終決定権こそが、彼らが最も手放したくないものなのです。他の決定権は手放しても、最終決定権だけはどうしても持っておく必要があると言います。しかし、それはなぜなのか、そのことをチームと話すということです。 次はもう少し楽しく話せることですが、アドバイスプロセスとそのアップグレードの方法です。まず、マネージャーもアドバイスプロセスを使用できることは先に明確にしておく必要があります。特定の領域で拒否権を持つことが認められる場合もありますが、基本的にはアドバイスプロセスにおける権限は他のすべてのメンバーと同じです。 次に紹介する方法は、少し面白く感じるかもしれませんが、これからは、マネージャーは、下からも、あるいは360度の評価によって評価されるというものです。これはとても強力な方法ですが、シムコ社などに先例があります。そこでは、マネージャーをメンターとみなし、そのメンターに求めることを、対話を通して定義します。そして、その定義に基づいて、チームがマネージャーを評価します。これは、説明の方向が変わったことがよく分かる例です。 同様の文脈でいうと、次に紹介する方法は、「セルフマネジメント」へ移行したことをよく感じとれる方法ではないかと思います。マネージャーが辞任した、あるいは、組織の成長に伴って新しいマネージャーが必要になった場合、チームメンバーで話し合って、次の新たなマネージャーの役割定義をするというものです。採用プロセスにおいても、一次面接、二次面接といった段階は踏みません。その職務定義や求める人物のプロフィールが本当にチームの求めているものと一致するのであれば、旧来とは違う力の流れが実感できるはずです。メンバーは理想の人を採用するために、それにふさわしい場所を自分たちで探し当てて採用活動をするでしょう。そして、自分たちで選んだ人にはぜひとも成功して欲しいと願って組織に迎え入れることでしょう。 最後は、複数のチームが並行して仕事を行っているようなケースです。それは、自分のチームを離れて、別のチームに移るということを、いつでも、マネージャーの承認なしにできるという制度を導入することです。それはマネージャーの独裁を防ぐために、ファビ社が行っているちょっとした工夫でもあります。例えば、「セルフマネジメント」のやり方が尊重されていないと、一部のメンバーは組織から去ろうとします。それは、自己修正が始まる強力な信号となります。 そして、最後は、マネージャーがチームのマネジメントをしなくなる際の方法です。以前の動画で説明したことですが、その際、一部、前回言い洩らしたことがあるかもしれません。要は、旧マネージャーには、コーチングが必要な場合があるということです。次には、何度も言っていますが、学習サークルとその学習を共有できる場所が必要です。新しいマネジメントの環境に移行するとき、旧マネージャーにとって、同じような状況にいる仲間と意見交換できる場所が必要なのです。そのような境遇は、けっして自分だけではないと意見交換できる環境です。移行によってもたらされる新たな役割は幸運である場合も多いということが分かってもらえるかもしれません。いつも言っていることですが、この移行が成功するために自分たちはいったいどんな貢献ができるのか、旧マネージャーたちに考えをまとめてもらうことです。それには大きな意味があります。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【4.3.2】元マネージャーに何が起こるのか?(What about former managers?)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/432.html ■翻訳メモ 今回は、元マネージャーがテーマです。組織は管理職に依存しないシステムに切り替えようとしていますが、そういった状況で彼らの身にどんなことが起こるのか、考えていきましょう。 多くの元マネージャーにとっては、本当につらい経験になります。そして、何度も耳にすることだと思いますが、この移行に際して最も抵抗す示すのは、この層の人たちだということです。ただ、ある程度の時間が経ち、自身の社会的地位や組織の中でのポジションが見えてくると、その痛みも落ち着いてくるものです。いずれにしても、人生の大部分を仕事に投入してきた人たちが元マネージャーです。中には、仕事の本質を見失い、出世レースにしか興味を見いだせなくなった人もいたはずです。そして、彼らにしてみれば、ある日突然、出世のハシゴが外されるという経験をしたのです。多くは痛みを抱えることになります。しかし、ただ単に、痛みを経験しただけでは済みません。その痛みがどこから来るのか見極める必要に迫られるのです。 数多く接してきたことで1つ分かったことがあります。彼らが苦しむ本当の理由は、自己のアイデンティティの崩壊だけでないのです。彼らは、「セルフマネジメント」のことを、かつてなかったもので、しかもパワフルなものだと感じるそうです。そのため、どうやら、それが苦しみに転嫁するようなのです。つまり、自分自身の中に矛盾を抱え、それを隠しきれなくなるというわけです。多く場合、彼らは、過去に長年自分たちがやってきたことは間違っていて、しかも怠惰にまみれていたというメッセージを自分自身に送ってしまっています。そういう時は彼らに、今やろうとしていることはまったく新しいことだと伝えなければなりません。そして、それは、以前できていなかったことをやろうとしているのではないと正確に伝えることが必要です。過去はきちんとやってきたというものであり、メンバーもそのことはよく分かっていて、そのことは尊重していると伝えなければなりません。私たちは今までの延長線上にない、まったく新しい世界を見る準備を整えているという事実をしっかりと伝えていく必要があります。 しかし、彼らも、皆が等しく痛みを抱えているわけでもありません。中には、古い権力構造の、特定の環境の中でしか効力を発揮しないアイデンティティにしがみついている人もいます。そうはいっても、多くのマネージャーにとって、「セルフマネジメント」への移行は苦痛を伴うものでることに変わりありません。ただし、その「苦痛」は、時間の経過とともに和らいでもいくものでもあります。私はそれを何度も見て、そして、何度も聞いてきました。その「苦痛」は典型的な経験曲線を描きます。最初はつらくても、しばらく経ったら、徐々に仕事にも取り組めるようになっていったと彼らは言います。マネージャーであった彼らは、本来、生産性や付加価値の高い仕事ができる人たちです。しかも、元マネージャーという立場は、周りに対して大きな安心感を与えるものです。彼らは、今まで、自分の部下をやる気にさせなければならないというプレッシャーに常にさらされてきたと言います。生産性の上がらないことは抑制して、パフォーマンス向上のために部下に圧力を加えてきたとも言います。彼らは、もう、そんなゲームからは解放されたのです。 数ヵ月という時間が必要になりますが、多くの人は、再びクリエイティブなことができ、仕事を楽しめるようになったとも言います。考えてもみてください。ほとんど管理ばかりやっていて、仕事を楽しむという経験はしばらくできていなかったはずなのです。ほとんどの旧来型の組織は、会社の中の上下で情報が行き来しているだけなのですから。情報の多くは会議のためであり、また、その情報自体もワードやパワーポイントによって運ばれているだけというありさまです。それ以外といったら、誰もがやりたがらないメンバー同士の「いさかい」の対応くらいです。そして実際には、多くの場合、組織で最も創造的な人が、その対応に追われています。紛争の解決には創造性が必要とされるからです。そして、袖をまくり上げて、自分の出番だと喜び勇んで対応にあたった情熱型のマネージャーは、そういった場面で活躍してきたのです。 ここで問題となってくることがあります。元マネージャーが、移行プロセスの開始直後に「痛み」を感じるであろうと分かっていても、それを前もって伝えることはできないということです。仮に前もって、「6ヵ月後にこんな思いをするかもしれないよ」と告げたとしても、その時点ではきっと何の役にも立たないでしょう。身をもって体験しなければ、向こう側にあるものの存在は理解できないものです。ある元マネージャーは、「最終的には、言葉に言い表せないほどの幸せな境地を体験することになる」と言いました。すぐに理解はできないかもしれませんが、最後にはそんな心境を迎えられる可能性のことは、そっと告げておいても良いかもしれません。 さて、この「痛み」のプロセスの中で、「痛み」そのものを和らげる方法が存在します。それは、できるだけ早い段階で、その「痛み」を明確にするということです。新しい環境になっても、マネージャー経験者は、以前よりはるかに重要な役割を担う可能性があります。早い時期にそれを知っていると、「痛み」を経験しないで済むかもしれません。もちろん、過去の権力とは関係がありません。今後は、アドバイスプロセスを使用することになると思いますが、その際、マネージャーの経験やスキルがとても重要となってくるのです。アドバイスプロセスには承認のための書類などはありません。承認決議を出すためのエンドレスな会議に座わり続ける必要もありません。あらゆるイニシアチブ、変化を起こすために持っているすべてのエネルギーはアドバイスプロセスを通して実現されて行きます。ですので、アドバイスプロセスの使い方を学べば、以前より強力ではないにしても、多くの点で、以前と同じくらいの強い力が発揮できるのです。 理解しておかなければならないのは、「セルフマネジメント」においても、自然発生的な階層のルールは存在するということです。もし組織が依然として、「競争」を原動力としているのなら、「評価」が競争の対象に変わります。貢献度合いが競われるということです。出世のスピードを競うのではなく、人から何回アドバイスを求められるかが評価になります。元マネージャーはある分野の専門家で、これまでも本当に多くの貢献をしてきました。そのため、彼らは、あなたはすでに多くのソーシャルキャピタルを持っているはずなのです。周りのメンバーはそのように見ているはずですし、そんな特別な存在ともいえるのです。元マネージャーは、これから始まるゲームにすでに有利な立場にいるともいえます。ですので、そっと役に立ち、貢献していることが皆に伝われば、それで十分に勝者だと言えるのです。「セルフマネジメント」を目指す組織の多くは、実力主義の給与体系を維持したままになっていることが多いものです。つまり、まだ道はあるということです。ヒエラルキーの梯子はなくなっても、給与レンジの梯子はまだ残っている場合が多いのです。 次に、もし、彼らの持つ「痛み」が、かなりきつそうに感じた場合は、それを解消する目的で会議体を持つのがよいでしょう。それは対話式のもでもグループ形式のものでも、どちらでも構いません。とにかく、集まって話せるスペースを作ってください。「共有サークル」や「学習サークル」といった名前で、元マネージャーたちがそこに集まって、何がつらいのか、もしくは、この移行の中でも良いと思うことがあるのかなど、それぞれの想いや体験を話します。それをやっていると、次第に、「セルフマネジメント」が楽しくなってきたという発言が聞こえてくるようなります。ただ、そこに長居する弊害もあります。それについては別のビデオで詳しく説明します。 「セルフマネジメント」が馴染んでいくスピードは組織によって異なり、一様ではありません。中には、最初から「セルフマネジメント」を待ち望んでいたという人が一定数いる組織もあります。しかし、中には、そうは見せかけても内心は権限を捨て切れていない人もまぎれています。そんな人は、これから自分がどうなるのか、他のマネージャーの身に何が起こるのか、常に不安でいっぱいなはずです。私が見てきたいくつか組織には、ある法則性が存在しました。そのことをお話しします。 ファビ社の場合、元リーダーは、不安を抱えているなら、積極的にほかの人と話すようにと勧められます。組織にどんな貢献ができるかは、原則は自分で探すものですが、他人に聞きながら探すということも有効な手段になります。その中で、引き続きチームに留まる人は、「役割」の一部をチームメンバーに委譲し、その代わりに、チームの中にある「タスク」を選択します。中には、現場の仕事が懐かしいと、とても満足する人も一定数います。中には、チームの外で、指導的役割を担う人も出てきます。これまでは、新しいアイデアや新しいプロジェクトなど、時間に追われるばかりで、まったくゆとりがなかったという人もいます。また、働き出した頃から初めて休日を満喫することができるようになったという人も出てきます。 ファビ社では、元マネージャーは、自分自身を探求する期間として、何カ月間か、考える時間が与えられます。今までよりも、もっと自分に合った仕事、組織に貢献できる仕事を探し出す時間です。元マネージャーたちが集まる対話会もあります。これならできるかもしれないというアイデアがある時、それについて誰かと話して、自分が正しい道を歩んでいるという感覚を得るのは素晴らしいことです。それゆえ、元マネージャーのためのメンタリング・グループを設置することはとても有効に働きます。 また、どうしても、マネージャーのポジションにこだわりたいという人のためには、退職のパッケージの準備も視野にいれなければなりません。ごくまれに、会社によっては、次へのステップが容易に進むようなプログラムを持っているところがあります。その場合、彼らは、自らの意志で選択することになります。中には、社員のキャリプランを考えるのは人事の仕事だと思っている人がいるようですが、それは古い考えです。「セルフマネジメント」への移行は、そこから一歩踏み出し、主体性を取り戻すことでもあります。組織に付加価値をもたらす、ワクワクするようなことを探し続けるのは、自分自身の仕事です。それに困った人のために、キャリアの相談ができるグループがあれば望ましいと思います。受け入れられないことがあるのなら、組織を去るというのも選択肢の一つです。組織の外を視野に入れた人向けに、選択肢が広げるようなキャリア支援が準備されているのが理想です。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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【4.3.1】マネージャーの役割を分配する(Distributed roles replace the manager)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。 ————————————————————— ■元のURL https://thejourney.reinventingorganizations.com/431.html ■翻訳メモ 組織が「セルフマネジメント」に向かおうとする時、必ず発生するのが役割移行の問題です。それは、チームリーダーやチームマネージャーが持っていた「役割」が、チームのメンバーに分散、移動する時に起こります。ちなみに私はそれを「役割」と呼びましたが、ビュートゾルフ社のコンサルタント、アストリッド・フェルメールとベン・ウェンティングは、「役割」ではなく「タスク」と呼んでいます。私はその意見に大いに賛同します。なので、ここではすべてマネージャーの「役割」のことは「タスク」と呼ぶようにします。つまり、皆が「役割」と思っていたものは、チーム全体に分散可能な「タスク」、つまり、「業務」や「作業」に過ぎないということです。私たちは「役割」という言葉に、エゴやアイデンティティを投影させる傾向があります。その傾向が強い人は、「タスク」を実行するだけの人にそれに見合った給料は払えないと、「役割」を正当化したがるはずです。それは、お金の側からしかものを見ることができない非常に偏った見解です。「タスク」とは単に「やること」です。チームにとって必要な、「やること」なのです。 「セルフマネジメント」に移行途中の組織に、「役割」はどうなっているか聞くことがあります。多くの場合、「役割」をメンバー間で分割するステップは、実際には行われていないか、行われていてもまったく注意は払われないまま行われているという答えが返ってきます。時には、マネージャーはすでにいなくなっていて、誰がその「役割」を引き継いでいるか、誰がリーダーシップを取っているのかさえ分からないといったケースもあります。 今、やろうとしているのは古い習わしである「役割」を再定義することです。今まで私たちは、チームリーダーやマネージャーといった役職名が書かれた一つの箱を見ていただけです。その中身は何も見ていませんでした。ここで再定義することはとても価値あることです。最初は、「役割」と呼ばれたものを5か10の、多くても15や 20の、細かい「タスク」に分解していきます。 そして、意味のある「タスク」に分解されたリストが完成したとします。となれば、その中には、「ビジョンの設定」や、「ビジョンのチームへの浸透」といった「タスク」も存在するはずです。そして、きっとあなたが指摘したかったことだと思いますが、「チームに高い目標を与え、その結果を監視する」というタスクもそのリストにはあるのかもしれません。「部下のパフォーマンスに対するフィードバック」や、「紛争解決のための専門知識の提供」も含まれているはずです。それらの多くはジェネラリスト特有のもので、専門的なタスクは少ないかもしれません。ここでやるのは、一般性の強いものに専門性を持たせ再定義し、配分可能にしていくことです。注意して欲しいのは、これは元々、リーダーと呼ばれた人たちのリストだということです。つまり、役職名に引っ張られると抽象度が高いまま残ってしまいます。そうすれば、結果的に実効性がなくなる可能性が高くなるのです。ですので、分ける過程で、「タスク」はできるだけ具体的にしてください。これらは実行タスクです。書き出すときは、「~すること」と動詞形にするのがよいでしょう。 リストを見れば歴然ですが、そこにあるのは、すべてのことが1人の人間によって管理されていたという事実です。すべてを1人で完璧にこなすには困難がつきまといます。また、本人にとっても、そういうプレッシャーを背負って働くことは本意でなかったかもしれません。その場合、やりたい仕事しかやらないということは往々にして起こります。例えば、対立や摩擦を好む人は稀です。だからといって、常に回避していると、争いはどんどん大きくなり、またその数も増えていくものです。中には、機械的に問題解決を図ることは好きでも、人を評価することは苦手という人もいます。最初からこれらをすべて完璧にこなせる人などまずいないのです。その点、「セルフマネジメント」の素晴らしいところは、「タスク」が分散されることで、やりたい人や得意な人がそれをできるという点です。これは、私が「セルフマネジメント」を勧める理由の1つです。得意な人や、やりたりと思う人がその仕事をすることでチームのパフォーマンスは向上します。これこそが、「セルフマネジメント」を理解する上でのもっとも重要な部分になります。「好き」がパフォーマンスに反映する理由は、人の持つ情熱や強い感情が、行動の起点となるからです。 次は、これらのさまざまな「タスク」をどうやって定義するか、またそれをチーム内でどのように配分するかについて話します。実際には、多くの組織では、それらはとてもシンプルに行われています。彼らはチームミーティングを開いて、マネージャーがこれまでやっていた「役割」をチームが引き継ぐ「タスク」にしてリスト化していきます。そのリストが分割のためのすべての基礎情報になります。リストを作る際、いろんなことが頭に浮かんでくると思いますが、リストを作り出したら、一旦はそれに専念します。マネージャーの以前の「タスク」だけでなく、チーム内の今ある他のすべての「タスク」も一緒に書き出した方がやりやすいでしょう。そうすれば、メンバー全員が、肩書に縛られているのではなく、一連の「タスク」を基にして組織化されていることがよく分かると思います。ホワイトボードやフリップチャート、付箋などもフル活用します。そして、最後の分担のところは、メンバーの自発性に委ねられます。「私はこれをやりたい」と言うだけで「タスク」が決まっていくのが自然ですが、通常は、メンバーそれぞれの「強み」をフィードバックし合いながら行います。中には、誰もがやりたくない「タスク」もあると思います。そのような場合は、「是非ともあなたにやってもらいたい」と何人かから熱望されるパターンも出てくるでしょう。これが一般家庭だと、「ゴミ出し」がそれにあたるでしょう。おそらく「ゴミ出し」が大好きという人はいないと思います。それでも誰かがやらなければならない「タスク」は存在します。しかし、この「セルフマネジメント」の原則では、「タスク」は交代可能なものです。自分のやりたいこともあれば、チームのため行う「タスク」もあります。しかし、先ほどのような、本当に誰もやりたがらないものに関しては、複数の人で分担するやり方もあります。登記上通らない場合もありますが、その際は工夫が必要になってきます。 重要な役割を扱う場合は、既成のものを参考にしてもよいでしょう。その中でも、ソシオクラシーの選挙プロセスなどはお勧めの1つです。「Sociocratic election process」と検索してみてください。私がとてもよいと感じるのは、その候補者リストの配置の仕方です。とても非政治的で、チームの機能を意識した配置になっています。ある「タスク」に必要な資質を見極めるのに最も理にかなった方法です。それを見ると、そのチームで誰が適任なのかすぐ分かるように工夫がされています。候補が思い浮かばない時は、空欄のまま先送りすることもできます。そうしておけば、最終候補が選出される時には、必ずサポートが要ることが皆に共有されます。 この「タスク」の割り当てプロセスには2つのルールがあります。1つ目は、「タスク」が1人に集中するのを避けるというルールです。例を挙げると、ビュートゾルフ社では、結果的に「タスク」が1人の人に集中してしまう以前のマネジメントスタイルに戻ってしまう傾向を発見しました。上級職や以前のチームリーダーがチームにいる場合、その傾向は顕著でした。彼らにとっては、「タスク」が確実に分散できるよう、その傾向に対抗できる明確な定義が必要でした。 しかし、仕事の内容次第では、「タスク」の分散が常に可能であるとは限りません。例えば、フランス北部にある掘削機を扱うファヴィ社には、「タスク」に分解されない例外パターンが存在します。稼働中のマシンから離れるのは難しいものですが、それでも、その場にいなくてもできる「タスク」はあります。また、いつ発生するか分からないものに備える「タスク」もあります。ファヴィ社の場合、社内でチームリーダーと呼ばれる人たちにそういう仕事を集中させました。先に述べた分散化に反して、「タスク」を人に集中させる場合もあるということです。ただし、その場合は、「セルフマネジメント」にある他のすべての側面を正しく実行する必要があります。つまり、アドバイス・プロセスや個人間に生じるプロセスをきちんと制度化しなければそのやりかたは機能しません。その人物が権力を握っていると他の人たちが思っていたら、問題が生じるのです。そのためには、「タスク」の集中を禁止するというルールを定めるのも一つの方法です。 考慮すべき2番目のルールは、一定の時間が経過したら「タスク」を入れ替える、つまり、ローテーションするということです。この方法を取り入れている組織では、メンバーには概ね歓迎されているようです。ただ、特定の「タスク」の中で多くの能力を獲得できるかについては十分に検討が必要です。その「タスク」が、専門性を身に付けるといった意味で必ずしもキャリアにプラスになるとは限らないからです。ローテーションは義務化すべきだという人は、1年後、半年後、2年後、「タスク」を経験した後にサポートすればいいと言いますが、実際にはそんな簡単なことではありません。例えば、チームの継続的な改善を見守るのが得意という人がいたとしましょう。そして、誰もが、その人にとっては、それがふさわしい「タスク」だと認めています。そうすると、その人自身だけでなく、チームにとっても、その人に、得意とするその場所にずっと居てもらいたいという思いが発生します。それをそのまま継続することは組織にとっては楽な選択です。ただ、本人にとっては、学ぶ機会の損失となってしまう場合があります。本人のキャリアにリスクが発生するということです。また、人間とは、自分の専門領域と思った場所に、ちょっとした権威の基盤を築いてしまう生き物でもあります。ローテーションはそれを防ぐ機能があります。 最後に、もう一つ考えてもらいたいことがあります。マネージャーやチームリーダーを呼ばれていた「役職」の枠の中から、「タスク」を取り出して、チーム全体に再配布するイメージはついたと思います。ここで注意しないといけないことは、決して怠惰な方向に行ってはいけないということです。仮にも、調整のための権威を手に入れたなどとは決して思わないことです。ここでは、単に、「タスク」を定義し、再配布を実行するだけです。 ■お願い 動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。 この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。 https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html ■翻訳メモの全体の目次 https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1