【4.3.3】マネージャー制を存続させる場合(If you'll continue having manager roles)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/433.html

■翻訳メモ
今回のビデオは、「セルフマネジメント」に向かう旅を、マネージャーと共に歩もうとしている組織に向けたものです。工場や店舗といった現場サイトに顧客と接点を持つセルフマネジメント・チームが存在していても、典型的なピラミッド構造の名残りとして、それらのチームの上にマネージャーが存在する組織のことを指します。このような構造は、移行に向けた初期の段階か、あるいは、経営陣が依然として大きな力を持ち、「セルフマネジメント」への移行に時間がかかっている場合に現れやすいものです。

この状況下でも、マネージャーの役割に変更を加えていく方法があります。それらを7つに分けて紹介したいと思います。

以前のビデオで話したことですが、1つのチームに1人のマネージャーというのが本当に機能的なのかをまず考えなければなりません。計算上、1人のマネージャーが複数のチームを担当するほうが合理的であっても、1つのチームに専任のマネージャーがいることが慣習となっています。しかし、複数のシフトがある工場などは1人のマネージャーが複数のチームを担当しています。その場合、仮に3つのシフトがあり、そして、そのうちの1つにマネージャーがいるとしたら、残りの2つのシフトはマネージャー不在になります。つまり、4つ、5つと、マネージャーが多くのチームとかかわろうとすればするほど、1つのチームにかかわる時間は少なくなっていきます。実はこれが、チームが「セルフマネジメント」を始めるための理由付けとなることが多いのです。

次の実践的な方法は、この新しい世界においての、マネージャーの新たな「役割」を明確にするというものです。良いマネージャーとは何か、チームが抱いているビジョンを明確にしていくことはとても有効です。しかし、そうは言っても、あまり杓子定規になりすぎるのもよくありません。なぜなら、誰にとっても、才能を発揮する方法は異なるからです。それでも、マネージャーとはどのようなものであるかという視点は必要です。つまり、彼らはコーチなのか、メンターなのか、それとも、結果に対して責任を果たす人なのか、といった視点です。「セルフマネジメント」がきちんと機能するよう外部から技術的なサポートを受ける場合であっても、組織の中でマネージャーがどのように定義されているか、あらかじめ共有できていることは重要です。特に、今までの管理方法をよく知るメンバーにとってはなおさらです。そして、今後は、それらを明確に定義するのはセルフマネジメント・チームの仕事になります。それは、組織にとってという俯瞰的な視点で、マネジメントとは何かを定義していくことになります。それはトップマネジメントが書いてもいいですが、トップマネジメントと一緒にチームで作り上げる方がより良いでしょう。マネジメントとは、という新しいビジョンを描き、それを可能な限り具体化します。行動やマインドセットなどを具体的に書き出すということです。

次の有効な方法は、マネージャーがそのまま残る場合であっても、マネージャーの「役割」を、細かく定義するというものです。マネージャーの「役割」の分散について話したビデオを思い出してください(【4.3.1】)。1つのチームのマネージャーであっても、3つのチームのマネージャーであっても、マネージャーには、それを形成している「役割」があります。その動画では、その「役割」を、8個、10個、12個といった「タスク」にして切り出したと思います。そして、マネージャーとして引き続き持っていたいと思うものを特定し、それ以外はチームに分配していったと思います。

次は、意思決定の権限についてです。以前の【4.3.1】の動画では、権限をどう振り分けるか、マネージャーとチームとで会話を持つやり方を紹介しました。実は、マネージャーの持つ最終決定権こそが、彼らが最も手放したくないものなのです。他の決定権は手放しても、最終決定権だけはどうしても持っておく必要があると言います。しかし、それはなぜなのか、そのことをチームと話すということです。

次はもう少し楽しく話せることですが、アドバイスプロセスとそのアップグレードの方法です。まず、マネージャーもアドバイスプロセスを使用できることは先に明確にしておく必要があります。特定の領域で拒否権を持つことが認められる場合もありますが、基本的にはアドバイスプロセスにおける権限は他のすべてのメンバーと同じです。

次に紹介する方法は、少し面白く感じるかもしれませんが、これからは、マネージャーは、下からも、あるいは360度の評価によって評価されるというものです。これはとても強力な方法ですが、シムコ社などに先例があります。そこでは、マネージャーをメンターとみなし、そのメンターに求めることを、対話を通して定義します。そして、その定義に基づいて、チームがマネージャーを評価します。これは、説明の方向が変わったことがよく分かる例です。

同様の文脈でいうと、次に紹介する方法は、「セルフマネジメント」へ移行したことをよく感じとれる方法ではないかと思います。マネージャーが辞任した、あるいは、組織の成長に伴って新しいマネージャーが必要になった場合、チームメンバーで話し合って、次の新たなマネージャーの役割定義をするというものです。採用プロセスにおいても、一次面接、二次面接といった段階は踏みません。その職務定義や求める人物のプロフィールが本当にチームの求めているものと一致するのであれば、旧来とは違う力の流れが実感できるはずです。メンバーは理想の人を採用するために、それにふさわしい場所を自分たちで探し当てて採用活動をするでしょう。そして、自分たちで選んだ人にはぜひとも成功して欲しいと願って組織に迎え入れることでしょう。

最後は、複数のチームが並行して仕事を行っているようなケースです。それは、自分のチームを離れて、別のチームに移るということを、いつでも、マネージャーの承認なしにできるという制度を導入することです。それはマネージャーの独裁を防ぐために、ファビ社が行っているちょっとした工夫でもあります。例えば、「セルフマネジメント」のやり方が尊重されていないと、一部のメンバーは組織から去ろうとします。それは、自己修正が始まる強力な信号となります。

そして、最後は、マネージャーがチームのマネジメントをしなくなる際の方法です。以前の動画で説明したことですが、その際、一部、前回言い洩らしたことがあるかもしれません。要は、旧マネージャーには、コーチングが必要な場合があるということです。次には、何度も言っていますが、学習サークルとその学習を共有できる場所が必要です。新しいマネジメントの環境に移行するとき、旧マネージャーにとって、同じような状況にいる仲間と意見交換できる場所が必要なのです。そのような境遇は、けっして自分だけではないと意見交換できる環境です。移行によってもたらされる新たな役割は幸運である場合も多いということが分かってもらえるかもしれません。いつも言っていることですが、この移行が成功するために自分たちはいったいどんな貢献ができるのか、旧マネージャーたちに考えをまとめてもらうことです。それには大きな意味があります。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

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