【4.3.6】責任と、仲間内でのプレッシャー(Accountability and peer pressure)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/436.html

■翻訳メモ
今回は、チームの中でのプレッシャーについて話します。従来の組織は、強制や威圧といった力によって自らの組織を統制していました。指揮命令系統が決定を強いてきたと言ってもいいでしょう。「セルフマネジメント」は、人権関係や会話をベースにして、組織を調整していくシステムです。それを「自己修正」と呼びました。しかし、「自己修正」は必ずしも会話が必要なわけではありません。わずかなプレッシャーによっても発動します。私たちは、互いに貢献を認め合い、時には批判し合います。価値観に基づき、相いれない場合や仲間内でやってほしくないことには批判的になります。そのような、仲間間でのプレッシャーによって、組織の活動は維持されているのです。

確か、2年ほど前、フランスで発表された記事だったと思います。哲学者か学者によって書かれたその記事には、「セルフマネジメント」のよくない側面ばかりが強調されて書かれていました。管理による制御をせずに、仲間間でのプレッシャーに頼った運営は恐ろしいものだという論調だったと思います。『蠅の王』のように皆が殺し合う世界が生まれるため、従来の伝統的な管理の方がはるかに優れているというものでした。彼らは、セルフマネジメント組織で働いた経験がないのにもかかわらず、想像だけで、このようなシナリオを描いている風でした。そのような組織を訪ねたことも、そこで働いている人をインタビューしたこともないにもかかわらずです。彼らが書いたこのような記事を無視することは容易にできます。しかし、非常に興味深く、かつ重要なのは、仲間間のプレッシャーが本当に機能するのか、きちんと検討してみることです。

いくつか、私の考えをお伝えします。1つ目は、先ほどの記事を書いた人たちに言いたかったことですが、プレッシャーを活用しようとするときの最も好ましくない状態というのは、だれ一人としてプレッシャーを感じていない状態を指します。私たちは、他人が発するシグナルをとらえられる能力を持っています。そこで得られたフィードバックは、たとえそれが批判めいていて、一時的には気に入らなくても、それが成長の糧となる場合があります。最も辛く恐ろしいのは、フィードバックが得られず、いま自分がどう思われているのか、まったく伝わってこない時です。他人からどう見られているか気になるというのは、私生活でもあると思います。他人の目から見て、自分が彼らにどう映っているか分からなければ、不安でしようがないと思います。

以前、ある組織と「セルフマネジメント」への移行に取り組んだ時、最初、彼らは、文字通りやる気がないという状態にありました。コミュニケーションがなく、恐怖がはびこっている状態に見えました。そこのメンバーは、だれからもフィードバックを受けている様子はなく、皆が自分の内側に閉じこもっているいるような感じでした。そういう状態では、あの人はきっとこんなことを考えているなどと、でっち上げが横行するものです。そういった状況を避けるには、私たちは、生来、社会的な動物であるという認識を持つことです。そして、私たちは、常に他人の評価を気にしているという事実を認めなければなりません。フィードバックが健全な方法で行われているのなら、多くの人はそういった環境で働きたいと思うはずです。しかし、その一方で、評価することによって恐怖心を抱かせようとする組織もあります。ですので、正しい方向に寄せていくというのは本当に大切なことなのです。

私が訪問している組織で、苦しんでいるところの多くは、まずここのポイントがうまくいっていません。そうは言っても、最初からうまくいくところは少ないようです。メンバーが新しいフィールドで実際に学び、行動する前にマネージャー制度がなくなった組織もありました。そういう組織では、仲間間のプレッシャーが、時にはあまり好ましくない形で出ることがあります。

重要なのは、単純に言葉に出すという行為です。「セルフマネジメント」は社会的活動の上に成り立つということを理解し、事実について話し合うことで成立します。人間の持つ社会性からいうと、言葉にするという行為は、健全な行為です。仲間間のプレッシャーにかんしても同様です。ポジティブなサイドに立ってフィードバックを行うということをチーム単位でコミットしていきます。これは非常に大切なことです。

また、多くの企業が取り入れている別の方法があります。それは、何らかの形で、NVC(非暴力コミュニケーション)の手法を使って、フィードバックのトレーニングを行う方法です。これには深い意味があります。ただし、このコミュニケーション手法を浸透させることは、とても時間がかかります。途中で諦めず、時間をかけて学ぶことが必要になってきます。

もっとシンプルな方法もあります。それは、メンバーがお互いについてもっと知ろうとすることです。多くの従来型の組織では、メンバーの個人的なことはほとんど語られなかったはずです。その人の生い立ちや、どんな価値観を持っているのかなど、共有されることはなかったと思います。当然のことですが、ある人の人生のストーリーを聞けば、その人に対する興味も湧いてくるものです。それがある故、ポジティブなフィードバックだけでなく、ネガティブなフィードバックもできるようになってくるのです。「つながり」が前提になってきます。親身になってくれる人を嫌いになることは難しいものです。これが「ホールネス」の意味するところですが、「ホールネス」は「セルフマネジメント」の中でしっかり機能を果たします。

最後、困っているチームには、コーチを活用する方法があります。ビュートゾルフ社には専属のコーチがいます。チームのコミュニケーションがうまくいっていない、モチベーションが上がってこないなどの時には、コーチが介入します。

いま話していて思い浮かんだことがあります。多くのチームが取り入れている、とても早く、かつ定期的にフィードバックできる仕組みがあります。それは、「チームの雰囲気はどうですか?」という質問です。eメールやアプリを使って、毎週金曜日とかに実施します。絵文字を使ったり、短い文章であったりでもいいのです。例えば、絵文字が笑顔であれば何もする必要はありません。しかし、チームのスコアが下がってきたり、不機嫌な絵文字が並んできたりしたら、コーチを呼ぶタイミングです。

この、「仲間間のプレッシャー」という言葉は、よい表現でないかもしれません。しかし、私たちは常にほかの人からのシグナルを受け取り、それに適応する社会性の中で生活しています。そうやって適応していることが健全だとも言えます。ですので、その健全さを維持していくことが大事です。

■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。