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毎日読書メモ(32)『下流老人-一億総老後崩壊の衝撃』(藤田孝典)

藤田孝典『下流老人ー一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)を読んだ。藤田孝典はNPO法人ほっとプラス代表理事(今は理事)として、多くの新聞等にインタビューや寄稿があり、前から存在は知っていたが、初めて一冊の本として読む。2015年の本だが、コロナ禍の元、状況は悪化していることが推察される。息苦しい読書。

人並の人生なんてものは存在しないのかもしれないが、例えば学校を出て真面目に定年まで働いて、年金を受給していても、それでも生活困窮者になる可能性がある、という現実に打ちのめされる。

人生の様々な局面に落とし穴があって、それに絶対に落ちないという保証はないのだと、暗澹とした気持ちになりながら読み進める。

石橋を叩いて渡るように生活し、老後のことだけを考えて、無駄遣いせずひたすら貯金する、そんな人生で幸福度が上がるとも思えないし、だからといって目の前の享楽に溺れて貯金もせずに暮らすことも出来ない。

自ら福祉の助けに手を伸ばせる人、苦しい時に苦しいと誰かに相談できる人、逆に言えばそういう人は誰かが苦しんでいるのを見たら手をさし延ばすことが出来る人ということで、生計が苦しくなっても、前を向いて生きる力を持つ人は、そうした、人間力のようなものを持っている人、ということになると、この本は説く(説く、といっても別に説教ではない)。誰にも相談出来ず引きこもっていると、そのまま身動きが取れなくなって孤独死をする確率が高くなり、それは本人にとっても周囲にとっても不幸なことである。

自分の出来る範囲で備えても、それでも下流老人になる可能性がなくはない、と思うと辛くなるが、QOLを上げようと思うことは、どんな環境下にあっても可能である。ささやかなことに喜びを見出したり、人との対話を大切にしたり、自分に出来ることを考えて進むことは、自分にとっても、自分の周囲の人にとっても意味のあることだろう、と思うことは、ちょっときれいごとめいていて、この本の中で提示されている老後を回避するには力不足のような気もするが、決して無駄ではない、意義のあることだと思う。

その上で、この国の政治が、弱者を切り捨てるような舵取りをしないようにみんなで見守っていくことも極めて重要である。

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