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べつやくれい『カツ丼を名画にして、冥土で売ってそうな土産を作る生活』(毎日読書メモ(472))

べつやくれいさんの、Daily Portal Zでの連載が面白くて、昼休みとかに記事を読んではゲラゲラ笑っているのだが、連載の中から厳選された記事を収録した『カツ丼を名画にして、冥土で売ってそうな土産を作る生活』(本の雑誌社)を書店で発見。ぱらぱらと前書きを読んでいたら、

いま書店で、どうしようかなー買おうかなーと悩んでいるあなた、いますぐ買いましょう。あとでネットで買おうと思っているあなた、それきっと家に帰ったら忘れちゃうやつなので、今買っときましょう。

p.8

と言われちゃったので、書店で…は買わず、書店の中にいるうちに、スマホでネット書店に注文した(ポイントがたまっていたので)。いや、確かにタイトルの長い本は、タイトル覚えられず、注文しそびれちゃうことあるよね。作者に肩を押されては仕方ない。

Daily Portal Z、結構読んでいた気がしたのだが、この本を読んでみたら、知らない記事の方が多かった。初出一覧を見たら、大体、2015年から2020年にかけて掲載された記事だった。記事のイラストの中に本人の写真も多用されていて、髪の長さや色が結構違っているので、時の流れを感じさせてくれる。

目次をばーっと書き連ねてみると、

食之巻:「カツ丼の喜びをミュシャ風に」「和菓子フォトブースでインスタ映え」「おでんだって『映え』たいはずだ」「餅入りきんちゃく型バッグ」「バレンタイン砂絵」「皿うどんを血うどんにしてあげよう」

描之巻:「何でも実話系雑誌みたいにする方法」「何でもない風景をFMステーションに」「なんでも選挙ポスターに」「看板、全部じぶん」「日本史のできごとをTシャツに」

作之巻:「強盗が持ってるあの袋」「冥土の土産を作りたい」「マジンガー耳あてZ」「トランプのキングみたいになれる鏡」「新幹線をカモノハシにする」「2時間半でマフラーを編む方法」

動之巻:「ドアの横に名前を貼れば楽屋なのでは」「客室乗務員ぽく電話を持ちたい」「もっとUFOにさらわれている風に見えたい」「人造人間になりたい」「銀色の服で宇宙人気分を味わう」

俺之巻:「ロリータになりたかった」「自分の名字がついた神社を見に行く」「引っ越しと両親の話」「引っ越しと両親の話 後日談」

家族が寝静まった夜中に本を読んでいて、何回も大声でげらげら笑ってしまう。ストレス解消に最適の一冊だ。べつやくさんの素敵なところは言文一致、更に踏み込んで言画文一致、更にそれを立体物に具現化できる力を持っているところ。
独自の発想があり、それをどうやったら具現化できるかを考え、それをみんなに面白がってもらえる形で表現できるのって素敵だなー、と思う。
あとがきによると、「くらしを楽しむ様な本にしましょう」というコンセプトで作ったらしいが、作り上げられたものでくらしが楽しくなるかどうかはなかなか微妙なところだが(そして当初目指していたらしいおしゃれさからは遥か遠い場所に)、作っているべつやくさんは本当に楽しかったんだろうな、ということはよくわかる。
幸せな本だ。

巻末に、実家の引っ越しと父別役実の本の話が出ていて、そこだけちょっと風合いが違うのだが、ちょっとしみじみと、べつやくさんのルーツについて思いを馳せたり。

引き続き、べつやくさんとDaily Portal Zの応援を続けたい。

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