見出し画像

カート・ヴォネガット・ジュニア『タイタンの妖女』(毎日読書メモ(469))

実家の本棚を整理していたら、カート・ヴォネガット(1976年まではカート・ヴォネガット・ジュニアという名前で活動していたので名義混在)の小説が沢山出てきた。
伊藤典夫や浅倉久志が翻訳したハヤカワ文庫SF、表紙はどれも和田誠が描いていた。最初友達に『タイタンの妖女』(浅倉久志訳)を勧められ、読んだら面白くて次々と読んだ。自身の第二次世界大戦従軍時のドレスデンの空襲の体験を織り込んだ『スローターハウス5』に戦慄したり、新刊が出たら、とうとう単行本で(大学生はそうそう単行本に手は出せなかった)『ガラパゴスの箱舟』(早川書房)を買ってしまったり。
今でも刊行されている作品もあるが、絶版になっている本も結構あるようで、今の人はカート・ヴォネガットなんて読まないのかな、と寂しくなったり。
で、久々に読んでみようと、今回も、一番最初に読んだ『タイタンの妖女』を読んでみた。まるっきり忘れていて新鮮な気持ちで読む。奇抜で、物語としての整合性はきっちりしているけれど、なんでこうなる、という不思議な展開の数々。
自家用宇宙船で、火星から2日の距離のところにある時間等曲率漏斗(クロノ・シンクラスティック・ファンディプラム)の真っただ中に飛び込んでしまった大富豪ウィンストン・ナイルス・ラムファードは、59日に1回、ロードアイランド州ニューポートの彼の大邸宅に実体化した姿で現れる。そこで、ラムファードの妻ビアトリスと、呼び出された成金のマラカイ・コンスタントがラムファードに告げられた荒唐無稽な未来予想図。回避しようとするビアトリスも、鼻で笑っていたマラカイも、運命の神(いやラムファードだけど)に導かれるように、火星へ、そして水星、一旦地球に戻って最後は土星の衛星タイタンへと思いもかけぬ大宇宙旅行をすることになる。ラムファードは何がしたかったのか。そして、タイタンにいざなわれた真の目的は? 重要なファクターが突然ぽんと提示され、驚きながら、物語の収束を見守ることに。
目まぐるしい展開と、不思議なリズム感が懐かしい。大学生協のブックカバーに包まれたままのカート・ヴォネガットを読んでいると、パソコンもスマホもなく、通学の電車の中で必死に本を読んでいた時代の自分を思い出す。
今出ている文庫本は同じ和田誠でモチーフは同じだけど、ちょっと絵柄が違ったので、トップ画像は持っている本の写真にしてみた。

#読書 #読書感想文 #カート・ヴォネガット #カート・ヴォネガット・ジュニア #タイタンの妖女 #浅倉久志 #スローターハウス5 #伊藤典夫 #和田誠 #ハヤカワ文庫SF

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?